『うる星やつら』最新ビジュアル (C)高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

【画像】何十年経ってもずっとカワイイ、ラムちゃんの姿を見る(5枚)

「近所のお姉ちゃん」だった昭和のラムちゃん

 絶賛放送中の『うる星やつら(2022版)』を楽しんでいる方は多いでしょう。筆者も毎週楽しく視聴していますが、オープニングでラムちゃんが踊っているカットが特にお気に入りです。おそらくは旧作のエンディングをオマージュしたと思われますが、やはりラムちゃんは踊る姿がよく似合います。

 ただ、見ていてひとつ、寂しさを感じるポイントもありました。それはラムちゃんが年下の女の子になっていた、という当たり前の事実です。

『うる星やつら』が最初にアニメ化されたのは1981年。実に41年も前になります。当時、10代半ばより上の年齢だった方々がラムちゃんにドハマりし、今でも心の中にそれぞれのラムちゃんを住まわせており、再アニメ化の際にはSNSで大変な盛り上がりを見せていました。現役のクリエイターのなかにもラムちゃんをこよなく愛する方々は多く、ラムちゃんの描き方についてこと細かく説明しているある漫画家を見たときは、「ああ、こんなに長く愛せるキャラクターに出会えたのがうらやましい」と思ったものです。

 しかし、当時小学生低学年だった筆者にとって、『うる星やつら』は絶対の愛情を捧げた存在だったかというと少し違いました。まだ愛が分からない年齢だったのです。

 筆者の心の中の『うる星やつら』はフジテレビで『Dr.スランプ アラレちゃん』が終わった後に始まる、ものすごく楽しいアニメ。そしてラムちゃんは毎週会えるお姉ちゃんのような感覚だったのです。

 なぜそう感じていたのかと言えば、『うる星やつら』の風景が当時の街並みをそのまま再現していたことが大きいでしょう。普段見ている街並みと似たような世界で空を飛び、あたると仲良くケンカしているラムちゃんは、憧れの女性というよりも毎週水曜日に1回会える、近所のお姉ちゃんという存在だったのです。

 もちろん最大の強敵は、プロ野球中継だったことは言うまでもありません。2022年版の3話放送時間が野球中継を原因にずれたときには「そこまで再現せんでも!」と思わず叫んでしまいました。当時を知る方であれば、気持ちは分かってもらえるのではないでしょうか。



放送決定でファンを沸かせた『うる星やつら』ビジュアル (C)高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

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「若い娘さん」になったラムちゃん

 旧作の放送期間は1981年から1986年。約5年の間に全195回(全218話)に スペシャル1回が放送されましたが、一度も欠かさず見ていました。特に印象に残っているのはあたるの母が主人公の第101話「みじめ!愛とさすらいの母!?」で、普段とは全く違う異様な雰囲気だった作品だったことをよく覚えています。後に押井守氏が本格的に演出をした回だと知った時は驚かされました。天才の仕事は子供の心にも強く残るものなのです。

『うる星やつら』が終わったとき、それは悲しかったことをよく覚えています。5年もの間、毎週のように会えていたラムちゃんにもう会えないのですから。『うる星やつら』が終わる直前に『Dr.スランプ アラレちゃん』も終わっていたこともあり、寂しさもひとしおでした。

 あれから40年以上が経ち、新作が作られることを知った時の、またラムちゃんに会えるという驚きと喜びはかなりものでした。

 そうして放送を待ちわびていた筆者が1話を見て目に映ったのは、とても若いラムちゃんでした。そう、歳月はラムちゃんを近所のお姉ちゃんから、近所の娘さんへと変えていたのです。ラムちゃんは歳を取りませんが生身の人間は歳を取ります。お姉ちゃんが娘さんに見えるようになるほどの時間が経っていたことをいざ実感すると、かなりの衝撃がありました。地元の街中を歩いているときに、同級生にすごく似ている若い方に出くわして一瞬過去へと引き戻されるような感覚に襲われ「あ、たぶんあいつの子供だな」と気付いたときに似た感覚でしょうか。

 先日は『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』が無事に大団円を迎えるなど、近年はリメイク作品が非常に増えています。もちろん筆者も楽しませてもらっていますが、新たなラムちゃんを見たときのような、奇妙な衝撃を受けたことはありません。それだけ、かつての筆者にとってラムちゃんは大事な存在だったのでしょう。

たぶん、小学生の時の筆者は、ラムちゃんのことが好きだったんですね。この歳になって、初めて気付いたよ……。