『仮面ライダーBLACK SUN』キービジュアル (C)石森プロ・東映 (C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

【画像】『BLACK SUN』の変身ベルトは「自立変形」 ギミックを見る(7枚)

『BLACK SUN』の「エグさ」は…原作『BLACK』由来なのか?

 話題沸騰中の特撮ドラマシリーズ『仮面ライダーBLACK SUN』(原作:石ノ森章太郎 監督:白石和彌)。1987年から1988年にかけて放送された『仮面ライダーBLACK』のリブート作品であり、西島秀俊さん、中村倫也さんを始めとした超豪華キャスト達による文字通りの怪演、さらには「差別」を物語の核に据え、2022年10月28日よりAmazon Primeビデオにて配信されています。

 配信開始前から「大人向け仮面ライダー」として大きな注目を集めていた同作の第1話は「推薦年齢対象:18+」(暴力、飲酒、喫煙、暴言)とあり、その過激ぶりが伺い知れます。そして(筆者が)全10話を一気に観終わり感じたことは次の通りです。

「マジか、『仮面ライダーBLACK』も、こんなにやばかったんか?」

 そうです。全くお恥ずかしい限りですが、筆者はなかなかの『仮面ライダー』シリーズ弱者。『BLACK』を観ないいまま、いきなり『BLACK SUN』を観たのです。本記事はそんな『BLACK』を知らない人間から観た『BLACK SUN』のレビューです。

※以下、『BLACK SUN』のネタバレが含まれ、また『仮面ライダーBLACK』への誤解も含まれている可能性があります。

 まず大前提。『仮面ライダーBLACK SUN』はひたすら感情を揺さぶられ続け、現実世界で巻き起こって社会問題に対する解像度を高めてくれた作品でありました。「リアリティ」と「ヒーロー」の共存は至難の技であり、加えて原作との兼ね合いから、賛否が巻き起こるのもまた、ある程度は理解できますが、はっきりと「観てよかった」と言えるドラマでした。

 触れやすい点から。ブラックサン、シャドームーンのデザイン。コンセプトビジュアルは樋口真嗣さん、造形は藤原カクセイさんが担当された2名の怪人(ライダー)は画面が脈打つほどの生命感にあふれ、「変身後」もヒーローとしてのスタイリッシュさを確保しつつ、最後まで「改造されてしまった人間」の悲哀をシルエットに落とし込んだ傑作だったと思います。

 ところが、『BLACK』を知らないまま観ているがゆえに、どうしても気になる疑問が次々と湧いてくるのです。



親友だった信彦(中村倫也)と光太郎(西島秀俊)は、やがて対立を深めるようになる (C)石森プロ・東映 (C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

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『仮面ライダーBLACK』を知らずに『BLACK SUN』を観たが…原作のヤバさに震えた?

 本作の舞台は、「時は2022年。国が人間と怪人の共存を掲げてから半世紀を経た、混沌の時代」。怪人に対するヘイト渦巻く社会が描写され、続けてルー大柴さん演じる、政権歴代最長党首がモデル(としか思えぬ)首相が登場します。

 露骨に、いや露悪的に「現実との地続き」であることが強調されるのです。これは単なる「風刺」ではありません。むしろ視聴者が現実で起きた人物、事件と重ね合わせながら観るからこそ、「怪人」という虚構の存在、そしてブラックサン、シャドームーンの存在が画面からはみ出す勢いで私たちを揺さぶるのです。

 全体構成においては、白石監督の剛腕ぶりにも驚かされました。先の大戦において細菌兵器の研究を行っていた秘密部隊、さらには「安保闘争」の指導団体や関連運動など、現代史における特異なポイントを串刺しにして、それらを『仮面ライダーBLACK SUN』の物語に奉仕させてしまったのですから。横ではなく、縦にもまた「地続き」であるというリアリティが肌をぬめりと舐めてきます。

 さあ、ここまで「一丁前」に『仮面ライダーBLACK SUN』を語ってきましたが、『仮面ライダーBLACK』を観ていない人間の感想です。そして、そのせいか、本当に恐縮ながら、全然わかっていないことも多々あります。

 例えば南光太郎の職業。彼は借金の取り立てで生計をなしていましたが、原作『BLACK』の光太郎も借金取り、ということでしょうか。気になりすぎます。

「ゴルゴム」は『BLACK』の敵組織であること自体はなんとなく知っていましたが、吉田羊さん、中村梅雀さん、プリティ太田さんが演じていらした「三神官」は原作由来っぽいですか……合ってますでしょうか。

「サタンサーベル」という急にかっこいい名前の剣が登場しましたが、これも? あと「創世王」の存在が怖すぎました。原作にもいるのでしょうか。恐らく、いそうです。

 そして何より子供向けであるはずの原作『仮面ライダーBLACK』もまた、人間が人間を殺し、怪人が怪人を殺す、そんな命の重さを問い続ける物語なのでしょうか……期待が膨らみます。

 結論として『BLACK』を観ずとも『BLACK SUN』は大いに楽しめる作品でありましたが、上のように気になる点が際限なく湧きだすのも事実。幸い、記事配信時点に置いてAmazon Primeビデオで『仮面ライダーBLACK』も配信されています。

 果たしてビルゲニアさんは原作でも「顔出し」変身なのか? 今から、確かめて参ります。