「ラスボス=最強」という図式は、時代の移り変わりと共に変化していった

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『FFV』に登場した、あの「隠しボス」たちが忘れられない!

 世界の平和を脅かすラスボス。それは、RPGで最後に待ち受ける難関です。例えば、国内でRPGというジャンルを大きく広めた初代『ドラゴンクエスト』では、勇者の前に「りゅうおう」が立ちはだかり、物語の締めくくりに相応しい激戦を展開します。

 ですがいつの頃からか、ストーリー上の最後に控えるラスボスは、「最強の敵」ではなくなりました。もちろん強敵なのは間違いないものの、クリアの必須ルートではない寄り道や、一度クリアした後のおまけ要素として、「隠しボス」を用意するゲームが増えたためです。

 この隠しボスは、ラスボスよりも強いケースも多く、予想以上の強さに驚いた経験を持つ方も多いことでしょう。そんな隠しボスのなかでも、特に手ごわく、思わずコントローラーを投げ出してしまうような、凶悪で忘れがたい面々を紹介します。

「オメガ」(ファイナルファンタジーV)

 最初に取り上げるのは、『ファイナルファンタジーV』(以下、FFV)の「オメガ」。ラスボスよりも強い隠しボス、という驚きをこの「オメガ」で初めて味わった人も少なくないはず。

 まず特筆すべきは、防御性能の高さ。防御力・回避力が優れている上に、弱点属性以外のほぼ全ての属性を吸収。また、解除できない魔法反射(リフレク)状態が常時発動しているなど、やりたい放題です。

 しかし「オメガ」の真の恐ろしさは、苛烈かつ多彩な攻撃にあります。特に、食らう頻度が多い「はどうほう」は、最大HPの1/2ダメージを与えてくる悪夢のような攻撃です。「現HP」ではなく「最大HP」の1/2なので、HPが減っていても受けるダメージ量は変わらず。HPが半分を切った状態で「はどうほう」を食らうと、死亡は避けられません。

 また、こちらが攻撃するたびに繰り出すカウンター攻撃も脅威的。カウンターも複数種類ありますが、こちらの味方ひとりを消し去ってしまう(ゲーム的には逃亡扱い)「サークル」の効果が問答無用の凶悪さ。攻撃するたびに、この「サークル」が来ないよう祈るばかり。心身の両面にダメージを与える、心臓に悪い隠しボスです。

「しんりゅう」(ファイナルファンタジーV)

「オメガ」と同じく『FFV』に登場した「しんりゅう」も、強烈な隠しボスとしてプレイヤーの記憶に刻まれました。設定面でも両者は関係性があり、「しんりゅう」は「オメガ」を追いかけてやってきた存在です。

 ですが、ゲーム内の「しんりゅう」はなぜか宝箱に潜んでおり、お宝目当てに開けたプレイヤーに襲いかかってきます。「なんでこんなところに?」「お前の相手はオメガでは?」といったツッコミをこちらが口にしたところで、開幕後の溜めから放たれる「タイダルウエイブ」で全て押し流されてしまいます。

「タイダルウエイブ」以外にも、高ダメージをたたき出す「ふぶき」や、選ばれたら即死を食らう「死のルーレット」(ただし「しんりゅう」は死なない)など、こちらも厳しい攻撃のオンパレードでプレイヤーを苦しめます。

 しかし、こと戦闘の難易度という面では、実は「オメガ」ほどの凶悪さはありません。「しんりゅう」が放つ攻撃のいくつかは対処法があり、また「オメガ」のような凶悪なカウンター攻撃もないため、「オメガ」よりは幾分楽に戦えます。

 ただし「オメガ」戦はセーブポイントが近かったので、仕切り直しが容易という利点がありました。この「しんりゅう」の場合はセーブポイントから距離があり、しかも宝箱からのサプライズアタック。初対面では準備もできないまま全滅し、セーブ地点まで巻き戻ってやり直し……という悲劇に見舞われ、コントローラーを投げ出したくなったものです。



本編では(癖は強いが)主人公を支えるひとりだった「エリザベス」。隠しボスとして登場した時は、容赦のない攻撃で追い詰めてくる

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『ドラクエ』や『ペルソナ』にも潜む、恐るべき「隠しボス」

「ダークドレアム」(ドラゴンクエストVI 幻の大地)

 記憶に残る隠しボスの存在は、『FF』だけの特権ではありません。双璧をなす人気RPG『ドラゴンクエスト』シリーズにも忘れがたい隠しボスが多数おり、今回はその代表として『ドラゴンクエストVI 幻の大地』(以下、ドラクエVI)の「ダークドレアム」をピックアップします。

『ドラクエVI』のラスボスは「大魔王デスタムーア」ですが、このラスボスと死闘を繰り広げる程度の戦力では、「ダークドレアム」に勝つのは夢のまた夢。「ダークドレアム」は、大魔王を遥かに超える力を持った恐るべき悪魔でした。

 1ターンに複数の攻撃を行うだけでも恐ろしいのに、手痛い単体攻撃から範囲攻撃まで揃っており、攻撃力を高める「バイキルト」や、補助効果を打ち消す「いてつくはどう」を駆使するなど、攻撃一辺倒ではない点も恐ろしいところ。こちらの「スクルト」の効果を消した後、「バイキルト」がかかった状態で攻撃を食らうなんて、想像したくもありません。

 また、条件を満たした際に展開する特殊なイベントの存在も、「ダークドレアム」の恐ろしさをより深く印象付けました。20ターン以内に倒した場合、主人公の強さを認め、なんと「大魔王デスタムーア」を赤子のように捻り潰します。強さを証明したプレイヤーへのご褒美だとしても、ラスボスをあっけなくねじ伏せる様を目にすると、「ダークドレアム、恐るべし……」と思わずにいられません。

「エリザベス」(ペルソナ3)

 隠しボスは、時空を超えるような存在もいる一方で、本編では主人公の協力者としてサポートを行っている場合もあります。その代表的な例と言えば、『ペルソナ3』の「エリザベス」でしょう。

 主人公が持つ「ペルソナ」という力はさまざまな形に変化しますが、それを記録・管理しているのがこの「エリザベス」。口調は一見丁寧ですが、人間社会との接点が薄いためか常識に欠ける一面があり、言動はかなりエキセントリックです。しかし、その強烈な個性に魅力を感じるプレイヤーが多く、人気キャラとして知られています。

 そんな彼女が隠しボスとして立ちはだかった時、初見ではまず抗う暇もなく一方的に叩き潰されます。というのも、こちらの状態が「属性攻撃の無効化」など一定の条件に抵触していると、苛烈極まる攻撃を繰り出すモードへ移行し、最悪の場合はターンが回ってこず殲滅させられるためです。その代名詞となった彼女の台詞「メギドラオンでございます」は、一生忘れられないほどのインパクトを放っています。

 もちろん条件を満たした上で対決しても「エリザベス」の強さは半端なく、理想的な武具にペルソナ、最上級のアイテムなどを用意した上で、ステータスも可能な限り高めなければ、勝利は掴めません。見た目は可愛く、攻撃は容赦なく、挙句の果てには「メギドラオンでございます」と、実に強烈すぎる隠しボスでした。

「イセリア・クィーン」(スターオーシャン セカンドストーリー)

 人気を博した隠しボスは、後の作品で再登場することも少なくありません。ここまでに紹介した「オメガ」や「しんりゅう」、「ダークドレアム」は、後のシリーズ作に登場して猛威を振るいましたし、「エリザベス」は格闘ゲームへの参戦も果たしました。

 しかし、シリーズ内での再登場が基本となるほかの面々とは異なり、この「イセリア・クィーン」は一味違う展開を見せます。彼女は『スターオーシャン セカンドストーリー』で初登場しましたが、本シリーズのみならず、『ヴァルキリープロファイル』シリーズや『ラジアータストーリーズ』にも隠しボスとして活躍しています。

 シリーズの壁を越えてさまざまなトライエース作品で暴れ、悪夢のような強さを広く知らしめた「イセリア・クィーン」。ラスボスを凌ぐ強さは驚異で、そして暴威ですらありましたが、その見た目は女性の天使姿で、どこか神々しくもあります。桁違いな強さにコントローラーを投げ出しながら、その美しさに魅了されるという、複雑な気持ちを芽生えさせた罪深い存在です。

ほかにも恐るべき隠しボスが多数存在

 今回は、『FF』や『ドラクエ』といった国民的作品や、当時のカジュアルなゲーマーでもその名を知っている『ペルソナ』や『スターオーシャン』などの隠しボスを取り上げました。

 もちろんこのほかにも、恐ろしいほど手ごわい隠しボスは多数存在します。例えば、『ウィザードリィ ~DIMGUIL~』の「ダイアモンドドレイク」は、隠しボス界のなかでも最強格のひとりとして有名ですし、『真・女神転生III-NOCTURNE』では主人公だった「人修羅」が、『DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー』では隠しボスとして登場。かつてはプレイヤー側だった彼の恐るべき猛攻も、まさに伝説級です。

 名前を挙げていけば、プレイヤーが心を折られた数だけいる「隠しボス」。あなたは、どんな隠しボスにコントローラーを投げ出しましたか?  この機会に、改めて振り返ってみるのも一興ですよ。