『Zガンダム』に登場したガンダムMk-IIは、エゥーゴに強奪されてカラーを変更されるという経緯をもつ。画像は「RG 1/144 RX-178 ガンダムMk-II (エゥーゴ仕様) 」(BANDAI SPIRITS)

【画像】全部知ってたらツウ? Mk-II以前の「RX-78-2後継機」たち(5枚)

そもそもガンダムの後継機はいくつあるの?

 1985年に放送開始されたアニメ『機動戦士Zガンダム』。超人気作品『機動戦士ガンダム』の続編として期待を寄せられた作品であり、主役モビルスーツ「Zガンダム」がなかなか登場しなかったこともあり、前半の主役モビルスーツ「RX-178 ガンダムMk-II」の活躍が印象深い作品でもあります。

 しかし、宇宙世紀0079年の『機動戦士ガンダム』と、宇宙世紀0087年の『機動戦士Zガンダム』の時間軸間に、多数の作品が発表されています。

 それぞれの作品に、主役機となる「ガンダム」が登場するため、「RX-78 ガンダム」をモデルチェンジしたモビルスーツは、多数存在したことになります。

 実機が製作されたものに限定しても「ガンダム(オリジン版のバリエーション)」「G-3ガンダムなど、基本のガンダムと大差ない派生型」「陸戦型ガンダム系(ブルーディスティニーやEz-8などの派生型)」「アレックス」「ガンダム4~7号機」「フルアーマーガンダム(サンダーボルト版)」「ゼフィランサス」「フルバーニアン」「サイサリス」「ステイメン」「デンドロビウム」「ガーベラ(を改装したガーベラテトラ)」「ガンダムTR-1系」など、多数のガンダムが存在します(一部はパラレルワールドですが)。

 特に『機動戦士ガンダム0083』に登場した「デンドロビウム」は、ビームバリアを装備し、超高出力メガ粒子砲と、大型ビームサーベル、多数のミサイルで武装しており、正直「ガンダムMk-II」よりも強そうです……。

 実際『Zガンダム』の劇中でも、「ガンダムMk-II」はクワトロ大尉が「加速力に優れている」と言うくらいで、際立った高性能機としては描かれていません。なぜこのような機体が伝説的名機「RX-78 ガンダム」の「Mk-II」とされたのでしょうか。



ティターンズ所属のMSとして『Zガンダム』冒頭から登場する「ガンダムMk-II」は、ダークブルーの特徴的なカラーリングだった。画像は「RG 1/144 RX-178 ガンダムMk-II (ティターンズ仕様) 」(BANDAI SPIRITS)

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機体コンセプトが画期的だった?

「RX-178 ガンダムMk-II」の開発は、宇宙世紀0085年にスタートします。「ジム・クゥエル」や「ガンダムTR-1」を基礎として、連邦軍系の技術だけで設計されたガンダムであり、ジオン軍掃討組織「ティターンズ」の象徴として、宇宙世紀0087年に完成しました。

 画期的なのは、機体のフレーム上に装甲を配置する「ムーバブルフレーム」の採用でした。劇場版では、ガンダムMk-IIがガルバルディβに回し蹴りを放つなど、軽快な運動性能が描かれています。ただ、装甲はチタン合金セラミック複合材で、同時期のエゥーゴのモビルスーツ「リック・ディアス」のガンダリウム合金より劣っていました。

 試作機3機がエゥーゴに奪取された後、パイロットであるカミーユやエマの優秀さもあり、続々と登場する可変モビルスーツなどを相手にしても、概ね互角に渡りあっていましたので、性能が低いわけではありませんが、圧倒的高性能を示した機体とは言えません。

 このような、ある意味凡庸な機体が、フルモデルチェンジを意味する「Mk-II」と名付けられた理由は、まず「0083年に登場したガンダムの開発計画が隠蔽された」ことでしょう。デラーズ紛争で北米にスペースコロニーが落ちた不祥事の隠蔽で、紛争自体が「なかったこと」扱いされたため、各種ガンダムが「なかったこと」にされたためです。

 とはいえ、1年戦争時の各種ガンダムは「なかったこと」になっていません。画期的なコンセプトがあるから「Mk-IIと名乗るほど期待された」のではないでしょうか。

 それは「連邦系の技術だけで設計された機体が、ガンダムの真の後継機」というティターンズの政治的姿勢と「Mk-IIの独自コンセプト」である、ムーバブルフレームが「単体での運動性向上」だけでなく「後付での機体性能大幅向上に、設計時より計画・対応した」コンセプトに期待が寄せられたからだと推察します。「装備や装甲の変更が極めて容易だった」ということです。

 実際、ティターンズが製作した試作機であるガンダムMk-IIに対し、敵対勢力エゥーゴを支える「アナハイム・エレクトロニクス」は多数のオプションで性能向上を図ります。

 大気圏突入時でも、高い運動性能を持つ「フライングアーマー」、ロングライフルによる火力向上と背部装甲強化を実現した「Gディフェンサー」、大出力メガ粒子砲を装備し、運動性能も向上させる「メガライダー」、そしてマンガ『機動戦士ガンダムMSV-R ジョニー・ライデンの帰還』で、実機の製作が確定した「フルアーマーガンダムMk-II」です。

 常識的に考えて、敵対勢力設計のしかも、超高性能というわけではない試作機を性能向上させるために、さまざまなオプションを新規開発して、装備させるのは非効率です。

 ここから考えられることは「カミーユが、父であるMk-IIの開発者フランクリンの開発データを把握しており、アナハイムに提供した」ことです。つまり「フライングアーマー」「Gディフェンサー」「メガライダー」「フルアーマーガンダムMk-II」は設計が終わっており、既にある設計データを元にアナハイムが製造したと考えられます。

 この時期、アナハイムは「Zガンダム」などの超高性能モビルスーツを開発していましたから、敵対組織ティターンズの象徴であるMk-IIが、オプションを含めるとどの程度の性能なのか、確かめたかったということです。

 また、Mk-IIのムーバブルフレームは優秀で、「バーザム」「ジムIII」などでも設計が応用されたようですから「新しく機体を開発するより、基礎設計の優れたMk-IIにオプションを装備した方が、早くその性能を確かめられる」とも考えられたのでしょう。

 Mk-IIは『Zガンダム』の1年後である『機動戦士ガンダムZZ』に登場する、ネオ・ジオンの新型モビルスーツに対しても、経験の少ないエルの操縦で、互角に戦っていました。つまり、ムーバブルフレームで機体と装甲を分離した設計が功を奏し、装甲自体もガンダリウム合金に改装するなど、性能向上への努力が続けられたということでしょう。

 そして、エゥーゴがMk-IIをサポートメカなども投入して維持したのは、『ZZ』時点で「エゥーゴ勝利の象徴」というプロパガンダ的な意味を持つ機体にもなっており、退役させたくなかったということも想像できます。

 なお宇宙世紀0090年の『ジョニー・ライデンの帰還』では「燃焼室の形状変更、最新の推進剤で、出力は15%向上」とされています。ジェネレーター出力とするなら、1930kW→2220kW、スラスター推力とするなら8万1200kg→9万3380kg(なお、フルアーマーガンダムMk-IIはスラスター推力12万4500kgなので、その15%向上なら14万3175kgとなり、Zガンダムの11万2600kgを上回ります)ですから、これはZガンダムに匹敵する性能ということです。Mk-IIにはそれだけの性能向上の余地が残っており「後付で改良しがいがある基礎設計」だったと言うことではないでしょうか。