『機動戦士ガンダム 水星の魔女』 (C)創通・サンライズ・MBS

【画像】「仮面キャラ」復讐の動機か? 前日譚で描かれた凄絶な虐殺(9枚)

今後の展開を左右する「地球と宇宙の対立」は『ガンダム』の定番展開?

 これまで『ガンダム』を知らなかった若い層を取り込むべく製作された、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。そのため主人公を初の女性にするなど、新しい試みを色々と導入していますが、あくまでも作品は『ガンダム』です。これまでのシリーズにもあった伝統的な要素も、当然組み込まれていました。

『ガンダム』といえば、「戦争」が舞台となることが「普通」でした。それはMS(モビルスーツ)という兵器が存在することが大きな理由です。ところが『水星の魔女』では学校である「アスティカシア高等専門学園」が舞台の中心で、物語は学生が中心になって進んでいまいた。今のところ、MSはそこで使用される道具のような扱いでしょうか?

 しかし、第4話で戦争以上に『ガンダム』で重要な要素が出てきます。それが「地球に住む人と宇宙に住む人の対立」でした。『水星の魔女』では地球居住者を「アーシアン」、宇宙移民者を「スペーシアン」と呼んで、これが学校でのヒエラルキーを生み、ニュースで報道されるような対立が発端となった行き過ぎた鎮圧が行われています。

『ガンダム』では、ほとんどの作品がこの「地球と宇宙の対立構図」が戦争を呼び、物語の軸となっていました。そう考えると、今は学校のなかでの差別意識でとどまっていますが、やがて学校の外の状況が悪化して戦争になるのでは? ……という予想をする人も少なくありません。これまでにも対立が戦争の発端となる展開もありました。

 思えばミオリネ・レンブランがたびたび口にする「地球に行く」という言葉も真意はまだ分かりませんが、いずれは舞台が学校から地球に移る伏線とも考えられます。そうなると、その行動にはアーシアンとスペーシアンの対立構図が大きな影を落とすかもしれません。

 今のところ、波乱はあるものの比較的に学校で平穏な生活を送っているスレッタ・マーキュリーですが、後に考えられるだろう地球での出来事がこれまで以上のドラマを生むことになるでしょう。そう考えると、ニカ・ナナウラやチュアチュリー・パンランチと出会い、地球寮入りする展開は地球でのトラブルを回避できる伏線になるかもしれません。

 オープニング映像を見る限りでは地球寮の人とは良好な関係を築けるようですし、チュチュ先輩は今後もいろいろと頼りになりそうです。



「仮面の女性」プロスペラは、前日譚「PROLOGUE」に登場したエルノラ・サマヤと思われるが? 『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の前日譚「PROLOGUE」場面カット (C)創通・サンライズ・MBS

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今回もあるのか? 『ガンダム』定番の仮面キャラの復讐劇

 もうひとつの『ガンダム』でおなじみの要素は「仮面」です。元祖仮面キャラであるシャア・アズナブルといえば、本編を見ていなくても知っている人も多いことでしょう。さまざまなコラボ企画にも登場しているシリーズの顔とも言える存在です。

 このシャアと同じく仮面を付けたキャラが『水星の魔女』でも登場していました。それがシン・セー開発公社CEOのプロスペラです。彼女はスレッタの母親。仮面は身体補助のためのヘッドギアだそうです。

 これまでの『ガンダム』での仮面キャラの多くは自分の正体を隠すため仮面で顔を覆い、その心に復讐を誓っているキャラでした。現在、TVアニメでは本心らしい本心はまだ明かしていないプロスペラですが、公式サイトで公開されているシリーズ構成の大河内一楼さんによる小説「ゆりかごの星」によると、スレッタにも真意を告げることなく復讐のためアスティカシアに入学させたことが語られています。

 余談ですが、この「ゆりかごの星」はオープニング曲「祝福」を制作するための原作小説として書かれたそうで、ガンダム・エアリアルの目線でスレッタの成長を見守るという一風変わった作品になっていました。

 話を戻しますと、これまでの仮面キャラとプロスペラが大きく違う部分もいくつかあります。

 ひとつは女性という点。一応、『ガンダム』シリーズの仮面キャラで女性というと、『ガンダムビルドファイターズトライ』のレディ・カワグチがいますが、同じ『ガンダム』を冠していても『ビルド』シリーズはガンプラ作品です。MSが登場するシリーズでは異例となるでしょう。

 もうひとつは立ち位置が主人公側という点です。これまでの仮面キャラの多くは敵、ライバルというポジションがほとんどでした。そう考えると、後々にスレッタと敵対するのではないか? ……という考察をする人もいます。

 いずれにしても『ガンダム』定番の仮面キャラとはいえ、プロスペラはこれまでと違った面を持つ独自色のあるキャラに仕上がっているということでしょう。もちろん、『ガンダム』の定番的なものはこれだけでなく、マスコットロボットとしてさまざまな作品に活躍している「ハロ」が登場していることも忘れてはいけません。

 しかし長年、シリーズを見てきた人たちにとっては定番でも、これまで『ガンダム』を知らなかった若い世代には新鮮に見えることもあることでしょう。逆に『水星の魔女』をきっかけに他のシリーズを見るようになった時、ひとつの共通点として認識しているといいかもしれません。