主人公・筋肉スグルが表紙に描かれた『学研の図鑑 キン肉マン「超人」』(学研ホールディングス)

【画像】残虐描写に衝撃! 『キン肉マン』初期に活躍するキャラたち(4枚)

「キン肉マン」を初めて読んだら……カルチャーショックに呆然

『キン肉マン』(著:ゆでたまご)。日常会話レベルで浸透しているこちらの作品、たとえ未読であっても「キン肉マンたちがリングで格闘を繰り広げるマンガ」ということくらいは知っているはず。さらに情報過多の現在、「超人は読者から募集している」「ゆでたまご先生はふたり組み」「ラーメンマンという超人は相手をラーメンにして食べる」など雑学めいたものまで未読の耳にも届いてきます。恥ずかしながら筆者もまた「未読」のひとりなのです。読んだら絶対に面白い……わかっていながら巷に溢れる情報でどこか読んだ気でいたのです。そして、もう一点。『キン肉マン』ファンの方の感想のなかでどうしても「本当?」と疑ってしまうものがあるのです。

 それは「(キン肉マンが)かっこいい」という感想。

 額に「肉」と書いており、団子鼻、たらこ唇……果たして彼を「かっこいい」と思えることなどあるのでしょうか? この記事では第1話から順に読み進めていき、「かっこいい」と思えた瞬間に巡り合えるかのか……というレビューをお届けします。

想像以上に「アホギャグ」 ここから巻き返しなど可能なのか?

 第1話「宇宙怪獣襲来の巻」の途中、のけぞりそうです。そもそも聞いていた話と違います。キン肉マン、ギャグです。それも超ド級のアホギャグでした。ウルトラマンをはじめとするスーパーヒーローに嫉妬心を燃やしているダメヒーローという設定で開幕。ようやく合点がいきます。あのウルトラセブンのアイスラッガーのようなトサカはパロディだったのですね。

 しかも「超人」は出てきません。相手は「怪獣」です。等身大のイメージでしたが、巨大化して怪獣と戦うのです。わざが決まるとテンションが上がりレストランの屋根に放尿、そして脱糞。突き抜けたアホギャグテンションはかなり癒しです。癒しですが、今のところ「かっこいい」要素はなさそうです。果たして巻き返しはあるのでしょうか?

テリーマンに「かっこいい」の萌芽が見えてくる?

 潮目が若干変わったのは第7話「アメリカからきた男の巻」。テリーマン初登場の回です。「新幹線を止める」場面を「アニメ名シーン特番」で見たことがありますが……こんなビジネスライクな男だったとは。あくまでも「仕事」として怪獣退治を請け負うテリーマンとの対比でキン肉マンの人情が浮き彫りになります……「かっこいい」に少し近づきました。結果としてそのキン肉マンの心に動かされたテリーマンがかっこいい回でした。

 さらに第17話「プロレス大決戦の巻」では等身大プロレスシーンが描かれます。テリーマンとキン肉マンが日本武道館で敵怪獣とタッグマッチを行うのですが、ちょっと前まで巨大化してレストランに脱糞していたマンガとは思えぬほど、リアルな肉弾戦が描かれます。テリーマンひとりの活躍に拗ねていたキン肉マンが助太刀に戻るシーン……テリーマンあってこそかもしれませんが、男らしさが際立ってきました。



アメリカからきた男、テリーマン。画像は「S.H.フィギュアーツ キン肉マン テリーマン」

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超人オリンピックで……その瞬間がついに訪れる!

 第28話「日本代表になりた~~いの巻」から「超人オリンピック」という大会が始まりました。いよいよロビン・マスクの登場です。シンプルにビジュアルがかっこいい超人の出現に驚きです。これが読者発案のキャラだったことにも驚きです(ラーメンマン、ブロッケンマンもまた然りでした)。

 周囲からだんだんと「かっこいい」外堀が埋まっていく流れ……ドキドキします。途中、ラーメンマンがブロッケンマンをへし折るという唐突な「グロ」に驚かされながらも(冒頭のラーメンにして食べるという知識はアニメ版の表現だったのですね)読み進めていくと… 第38話「氷上のキャメルクラッチの巻」でその瞬間は訪れました。

 ラーメンマンとの死闘。序盤はまたも脱糞したり、尻丸出しになったり、相変わらずなのですが、不利な体勢からアイスラッガーで氷を滑り、ボディアタックで見事、ラーメンマンに勝利。この泥臭さ、不屈ぶり、間違いなく「かっこいい」ではありませんか……!

 まさか脱糞した回で「かっこいい」と思えるとは。『キン肉マン』という作品の凄まじさを垣間見た気がします。ファンの方々の感動を追体験できたことがまず感動です。さて感慨に耽りたいのですが、この38話はテリーマンが最後に足を撃たれてしまい、先が気になり過ぎます。追体験を続けさせてください。