ゲルショッカーが出現するエピソードを収録した、「仮面ライダー VOL.14 」DVD(東映ビデオ)

【画像】現在の様子は? 『仮面ライダー』の聖地、「ゲルショッカー結団」撮影場所(4枚)

恐怖の掟を持つゲルショッカーとは?

 本日10月7日は、半世紀前の1972年に『仮面ライダー』第80話「ゲルショッカー出現!仮面ライダー最後の日!!」が放送された日です。このエピソードから仮面ライダーが戦う相手は、宿敵ショッカーから新組織ゲルショッカーに変わりました。

 昨今のライダーシリーズでは、作品途中で敵が変わるのが当たり前となっていますが、そのフォーマットはシリーズ第1作『仮面ライダー』で既に行われていたのです。本作の場合、ショッカー首領が自身の組織「ショッカー」を見限る形で、アフリカを拠点とする「ゲルダム団」と合併し、新たに「ゲルショッカー」を結成しました。

 このゲルショッカーという名称は語感で付けられたもので特に意味はなく、ゲルダム団という名前も後付けで考えたそうです。当初は「ブラックショッカー」、「ゴーストショッカー」という名称も検討されていました。想像ですが、同じ石ノ森章太郎先生の描いたマンガ『サイボーグ009』に登場する「黒い幽霊団(ブラックゴースト)」とかぶるので変更したのかもしれません。

 ゲルショッカーで特徴的なものと言えば、やはり2種類の動植物を合成した怪人にあります。ビジュアル的に見てもショッカー怪人の2倍強いというイメージがあり、たびたび仮面ライダーを窮地に追い詰める作劇で強敵感がありました。

 戦闘員もショッカーよりパワーアップしたという設定で、青・赤・黄色の派手なカラーリングになり、初期は変身前の本郷猛や滝和也を苦戦させています。しかし、ゲルパー薬を3時間ごとに服用しないと死ぬという副作用があり、この部分が裏切者を許さないゲルショッカーという組織の恐ろしさを示していました。

 このゲルショッカーを指揮するのがブラック将軍。表情を変えずに冷酷な作戦を実行する優秀な指揮官で、敵の裏をかくことを得意としており、何度となく仮面ライダーを罠にはめています。その実力は敵ながら仮面ライダーも認めており、自らをおとりにして作戦を遂行し、最期を迎えた際に「勇敢だった」と敬意を表していました。

 この他にもアンチショッカー同盟の戦いで登場した6人のショッカーライダーが存在するなど、ゲルショッカーはショッカー以上の戦力を持った組織という印象を与えています。



ゲルショッカーを率いたブラック将軍を再現した、「東映レトロソフビコレクション ブラック将軍」(メディコム・トイ)

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悪による内部抗争 当時の世相を感じる「内ゲバ」とは?

 当時、ゲルショッカーが誕生するまで、企画は二転三転したそうです。もともとは10月以降の第7クールにおける強化案のひとつとして考えられたものでした。この強化案には、ショッカーに変わる新組織の登場の他にも、1号が新組織に敗れて新しい姿にパワーアップする、新たな仮面ライダーである「3号」の登場、その3号も1号と2号がコントロールするロボット案から滝が改造される案など、さまざまだったそうです。

 結果的に続編の製作が見えたことで3号は次回作に持ち越され、新組織の登場だけが強化案として決定されました。この新組織も当初はショッカーと同時に暗躍し、第3勢力として複数話登場する予定だったそうです。このコンセプトは結果的に新怪人ガニコウモルが数話登場するだけにとどまりました。

 この悪の組織同士の内紛、実は参考になった出来事があります。それが当時の社会問題のひとつだった学生運動などで、たびたびニュースにもなった「内ゲバ(うちげば)」です。この内ゲバが組織交代に大きなイメージを与えたそうです。内ゲバとは内部ゲバルトの略称。ゲバルトはドイツ語で「暴力」を意味し、同一組織内での武力闘争を意味する造語です。最近はあまり聞くことはありませんが、当時は子供でも耳にした言葉でした。

 武力闘争によって組織を再編する、まさに悪の組織に相応しい行動です。もともとショッカーもゲルダム団も首領の作った組織でした。つまり看板だけ変えるというやり方は計画倒産のようなものかもしれません。

 しかし単に新組織に変わるというのは、これまでの大幹部を変えるというやり方と同じです。そこで無用になった旧組織のメンバーを粛清するという悪の組織らしい方法で、ゲルショッカーは最初から強いインパクトを与えました。

 このように新組織が前組織に取って代わるという作劇は、その後のライダーシリーズでもたびたび見られます。

 ゲドンの獣人ヘビトンボを裏切らせてガガの腕輪を手に入れたガランダー帝国。ブラックサタンを滅ぼして結成されたデルザー軍団。テラーマクロに弱点を与えてドグマを乗っ取ったジンドグマ。つねに悪の組織は前組織を解体させることで生まれてきました。

 近年のライダーシリーズですと、悪の組織同士の対立はさらに複雑化していますが、ドラマとしてはキレイに整いすぎている感じがします。昭和の悪の組織のようなドロドロとした怨念に満ちあふれた交代劇は、現代ではちょっと難しいかもしれません。