アントニオ猪木対タイガーマスクが見られる第16話「敗北の虎」が収録されたアニメ「タイガーマスク DVD‐COLLECTION VOL.1」(東映)

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世紀の決戦!1月15日「アントニオ猪木対タイガーマスク」

 元プロレスラーのアントニオ猪木さん(以下、敬称略)が、2022年10月1日に死去されました。大人から子供まで、たくさんの人に愛されたヒーロー。その活躍は、現実の枠を超えたアニメの世界にも見られます。特にオールドファンが思い出すのは、やはり『タイガーマスク』でしょう。ここに意外な事実があります。アニメとマンガを通じ「タイガーマスクがシングルマッチで(反則負け以外で)負けた相手はアントニオ猪木だけ」というのをご存じでしょうか。

 アニメ第16話「敗北の虎」では、アントニオ猪木vsタイガーマスクのシングルマッチが行われます。ワールド大リーグ戦に参加したタイガーマスクは、連勝街道を走り中盤戦へ。しかし、タイガーはリング外の敵とも戦っていました。

 悪役レスラー養成機関「虎の穴」出身のタイガーマスクは、孤児院「ちびっ子ハウス」の子供たちに恥じないプレーをしようと心を改め、悪役からフェアプレーの正統派レスラーへ変わっていました。そして、「虎の穴」はタイガーマスクを裏切り者として倒すため、次々に刺客を送り込みます。

 試合当日、タイガーマスクこと伊達直人が宿泊するホテルに、かつて「虎の穴」でともに修行した仲間であるリコが出現。リコは「姿を隠せ、虎の穴は試合以外にもおまえを殺すつもりだ」と忠告しますが、伊達は拒み、リコは彼にナイフを突きつけました。その後、ふたりは屋上でもみ合いになり、リコは跳び蹴りをかわされて鉄柵を越え地上へ落下、即死します。

 その後、タイガーマスクは超満員の観客であふれる試合会場へ。相手は、こちらもリーグ戦無敗のアントニオ猪木です。モスグリーンのトランクスにリーゼントヘアーの猪木は、こう声をかけます。

 猪木「いよいよ決戦の時が来たな。お互いにベストを尽くし立派な試合をやろう!」

 タイガーマスク「遠慮なくぶちかましますよ先輩! 覚悟はいいですか!」

 猪木「よし、どっからでもこい!」

 そして、両者ががっちりと握手を交わし、決戦のゴングが鳴り響くと、解説席にいるジャイアント馬場が「それいけ! タイガー! 猪木!」とハッパをかけます。

 エアプレーンスピンやキーロックで、試合を優位に進めるタイガー。しかし猪木の必殺技・コブラツイストが、ガッチリ決まります。ロープブレイクで逃れたものの、さらに猪木がドロップキック! ここでタイガーの脳裏に、ホテルの屋上でリコが放った跳び蹴りの残像が浮かびます。「自分がよけたためにリコを死なせてしまった……」そんなことを考えるタイガーは、猪木のドロップキックをまともにくらってしまい、リング下へ転落してしまいました。そして、そのままカウント20が数えられゴング。試合は猪木のリングアウト勝ちで、決着します。タイガー無念の敗北です。

 タイガーマスクはシングルマッチにおいて、ヒール時期の反則負け以外で一度だけ負けていますが、その相手は日本プロレスの若獅子・アントニオ猪木でした。そしてその後、タイガーマスクはアニメでもマンガでも、一度も負けはありません(注:ドン・レオ・ジョナサンがタイガーマスクに勝利したエピソードがありますが、マンガ単行本では欠番になっているため省きました)。実は、マンガとアニメはほぼ同時進行でしたが、アニメの進行が早くなったため、特に終盤はアニメオリジナルのストーリーでした。それでもタイガーが負けるシーンを作らなかったのは、絶対ヒーローが負けるという悲劇で、子供の夢を壊したくなかったからかもしれません。

 余談ですが、アニメ・マンガから飛び出し、ブームを巻き超した実在の初代タイガーマスク(佐山サトル氏)とアントニオ猪木は、対戦したことはあるのでしょうか? 実は、あるといえば一度だけあるのです。1997年4月、東京ドームで猪木vsタイガーキング(※諸事情によりリングネーム変更)で実現しています。レスラーとしてのピークは過ぎていたふたりでしたが、ファンサービスとして組まれた試合で、結果は猪木がコブラツイストでタイガーに勝利しています。

 アントニオ猪木さんがプロレス界に残した功績は計り知れません。特に、さまざまな武道の垣根を払い、「異種格闘技」として戦うエンタテインメントに仕上げ、そして世界に広めたのはアントニオ猪木さんです。燃える闘魂! アントニオ猪木さん、ありがとうございました!