大人になっても楽しめる! トンデモ解説の最高峰「民明書房大全」も収録されたおもちゃ「魁!! 男塾 立体 民明書房 大全 6種 ジャンプ まんが 江田島平八全6種 1 でんがいそしんだん 2 血闘援」(タカラトミーアーツ)

【画像】数々のトンデモ技を繰り出した男塾名キャラクターたち(7枚)

「民明書房」以外にも山盛り!トンデモ&びっくり解説

 熱い友情とバトルで人気を集めたマンガ『魁!!男塾』(作:宮下あきら)では、「民明書房(みんめいしょぼう)」のトンデモ解説も読者に愛されていました。武術から科学、歴史、物事の起源やことわざなど、さまざまな知識を与えてくれたこの出版社が実は架空の存在で、掲載されていた解説も事実無根&荒唐無稽なものだったことを知った際は、大きなショックを受けた人も多かったことでしょう。筆者自身も「まんまとだまされた!」「やばい!友達に自慢気に話した」「やっぱりそうか……」と、さまざまな感情で心が大いに乱されたものです。

 そんな『魁!!男塾』のトンデモ解説には、「民明書房」以外からの引用として掲載されていたものもあったことを覚えているでしょうか? 今回は、『魁!!男塾』の「民明書房」以外の架空出版社から引用されたトンデモ解説のなかから、印象的な16の説をご紹介します。

※『魁!!男塾』に登場した常用外漢字を使った名称は、一部カタカナ表記にしております。

予想のナナメ上すぎる「リバーシブル」の語源とは!?「太公望書林」

「民明書房」からのトンデモ解説に次いで、多くの引用が掲載されているのが「太公望書林(たいこうぼうしょりん)」の解説です。『民明書房大全』(集英社)によれば、社主は「民明書房」の創業者、大河内民明丸(おおこうち・みんめいまる)の親友・茂木鮎乃進。出版のジャンルは自然科学から、次第に中国拳法に移行したそうです。

 互いが猛毒の蛇に噛まれた状態でひとり分の解毒剤を賭けて戦う「蛇血誓闘(スネークブラッドコントラクト)」や吐き出した黒炸塵(こくさくじん)に火をつけて火炎放射しながら両刀で攻撃する秘術「咆竜哮炎吐(ほうりゅうこうえんと)」、投げる物の大きさを変えて距離を錯覚させる「錯距効果(さっきょこうか)」、密教僧たちが悟りを開くために用いる秘香(ひこう)で、幻覚既視感を起こさせる「耽幽香(たんゆうこう)」、イギリスで発明されたという腹部を膨張させる秘薬「膨漢丹(ぼうかんたん)」など、決闘の方法から武術、科学、秘薬など、「民明書房」の引用と同じく、うっかり信じてしまいそうな読みごたえのある解説が書かれています。

 そんななかでも異彩を放っているのは、「凶カイ面ショウ殺(きょうかいめんしょうさつ)」という、「中国拳法の奇襲策として知られる」とされる技です。表裏逆に甲冑を着て、後ろを向いていると相手に思わせ、背面に来た敵を倒す技とのこと。これはシルクロードを通じてヨーロッパに伝わり、考案者である秦代末期の李筴振(りばしぶる)の名前から、「リバーシブル」という言葉が生まれた……という飛躍しすぎた解説が書かれているのは驚きです。

灼熱の鉄棒を素手で握る理由とは!?「英学館」

 男塾において、3年に一度開催される格闘行事「大威震八連制覇(だいいしんぱーれんせいは)」では、剣桃太郎たち一号生と大豪院邪鬼たち三号生が戦いました。その開催の前には、「英学館」の書籍からの引用が続きます。「英学館」もまた、「民明書房」の創業者・大河内民明丸の親友が社主を務めていた出版社です。

 三号生の鎮守直廊(ちんじゅちょくろう)三人衆である独眼鉄(どくがんてつ)、蝙翔鬼(へんしょうき)、男爵ディーノの3人がそろって左腕に彫ってきた、必勝を期す達磨の入れ墨「鬼達磨刺青(トーチントウ)」。そして、大豪院邪鬼から剣桃太郎に差し出された灼熱で焼けた鉄棒は、1000年前の蒙古人の決闘の儀式の際に用いられたという灼熱の青銅の棒「灼赤棒(しゃくせきぼう)」に準じており、それを両者が握り合って大威震八連制覇の開催が成立しました。また、男塾では想定外のトホホな結果になってしまった「勝利賽子(しょうりジャイツ)」は、戦国武将・武田信玄が考案したと言われる出陣の景気づけの儀式とされています。いずれも「英学館」の書籍からの引用として、解説されているものです。



男塾のすべては、この人から始まっている!『天下無双 江田島平八伝』第1巻(サード・ライン)

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まだまだあるトンデモ解説!最高峰記事で笑う人物は!?

一般塾生たちが男気を見せた「万人橋」が解説されている「時源出版」

 中津川大観が「時源出版」から出版した中国拳法に関する書籍では、枝を払い頂部を切断した杉の木の切り口を足場として戦う異種格闘技「磁冠百柱林闘(じかんひゃくちゅうりんとう)」、男塾死天王のひとり・卍丸が極めた魍魎拳(もうりょうけん)最大の試練とされる「百人毒凶(ひゃくにんどくきょう)」、濃度100%の竜硝酸に耐えるスピードで厚さ30cmの御影石の石槽の底石を割る魍魎拳の最大奥義「烈舞硬殺指(れつぶこうさつし)」が解説されています。

 そして、男塾の主要戦闘メンバー以外の塾生たちが力を発揮したのが、「万人橋(ばんじんきょう)」でした。田沢、松尾らチャチャ入れやリアクション専門の塾生たちの大きな見せ場です。この「万人橋」については、名前のとおり肩車した人間が連なった橋で、中国の兵法書「武鑑」にヒントを得て、戦国武将の部下が主君を助けようとして実行したという逸話が、時源出版刊『戦場にかける橋』にて解説されていました。

残したのは、たった1冊の刊行物「ミュンヒハウゼン出版」

 江田島平八塾長の宿敵・藤堂兵衛に迫る最終決戦を前に、男塾・死天王が底力を見せるのが「壟義盾行(りょうぎじゅんこう)」です。「壟義盾行」については、ドイツの出版社で児童書の編集を務めたカール・ハインツ・ミュンヒハウゼンが民明書房に移転した後に独立し創立したという、「ミュンヒハウゼン出版」の『心に残る戦国名勝負100選』からの引用記事が掲載されています。川中島の戦いで上杉方の武将・直江兼続が考案した、4人の勇士が自らの身体を盾にして前進して突破口を開くという戦術です。ミュンヒハウゼン出版(ミュンヒハウゼンは「ほら吹き男爵」のことで当然架空)の刊行はこの1冊だけで、『魁!!男塾』での掲載は「壟義盾行」の解説のみとなっています。

「曙蓬莱新聞社」

「曙蓬莱新聞社(あけぼのほうらいしんぶんしゃ)」は、日本曙蓬莱武術協会の機関誌を出す出版社です。出版物からの引用と理事長・盛田慎之助氏の談話が、解説として掲載されています。盛田慎之介もまた、大河内民明丸の親友で、民明書房の社歌「ああ、我が民明書房」の作曲も盛田によるものです。彼については、髪の毛とヒゲと眉が書き足されているような写真も掲載されています。この写真の人物が誰なのかは、知っている人は笑ってくださいね……というところでしょうか。

 解説が掲載されているのは、中国・宋代に編み出された兄弟ならではの技で、頑丈なロープで人を振り回す荒業「天翔椿(てんしょうちん)」や究極の早撃ちを表す「シックス・オン・ワン」、幼少期より食事に爆火硝石(ばくかしょうせき)などを混入して体内に蓄積し、いざというときに自らが爆弾となる「爆ショウ繋飯(ばくしょうけいはん)」、達人・棒ベン点具(ぼうべんてんぐ)の名前が後にボディ・ペインティングの由来となったという「體透キ(たいとうき)」など、作中でも最高峰のトンデモ解説が並んでいます。ちなみに、「爆ショウ繋飯」については、「『かやくご飯』は修行者たちがごはんに火薬を混ぜたことに由来している」と、断言までしているのがすごいところです。

『魁!!男塾』の民明書房とその他出版社のトンデモ解説は、嘘かどうかはもはや問題ではありません。子供時代に読んで好奇心を刺激され楽しみ、今読み返すときっと別の意味でもっと笑える、まさに時を超えたエンターテインメントと言えるでしょう。