ラストが表紙の『鋼の錬金術師 完全版』第6巻(スクウェア・エニックス)

【画像】序盤でやられた不遇キャラといえば?(5枚)

とどめを刺したのは私じゃないのに……惜しまれながらも序盤に退場したキャラ

 人気マンガの敵キャラのなかには、四天王や「○○大○○」などの、数人いるうちの強キャラのひとりとして登場しているのに、物語の展開上、早めにやられてしまい、再登場もできなかったキャラが存在します。そんな仲間はずれな敵キャラのなかで、あのキャラはもったいなかったな、と思える不遇なキャラを振り返ります。

『鋼の錬金術師』のホムンクルス・ラスト

『鋼の錬金術師』に登場する七人のホムンクルスたちは、それぞれが特殊能力とバラバラにされても蘇る再生能力を持つ強敵です。そして、ホムンクルスたちのなかで唯一の女性型であるラスト(色欲)は、惜しまれながらも、もっとも早く退場したキャラでした。

 ラストは、手の先端を超高速で伸縮させて鋼鉄をも切り裂く「最強の矛」を武器としています。加えて、冷静沈着な頭脳も持っており、マーズ・ヒューズの暗殺や中央司令部勤務のジャン・ハボックと交際して情報を得ようとするなど、情報戦でも暗躍していました。妖艶な美貌も持ちあわせており、人気キャラのひとりです。

 そんなラストは、ロイ・マスタングとその部下たち、アルフォンス、バリー・ザ・チョッパーにアジトに侵入された際の戦いで最期を迎えます。ホムンクルスの超再生と「最強の矛」を活かして、マスタングに深手を負わせ、バリー・ザ・チョッパーをバラバラにするなど活躍を見せたラストでしたが、マスタングの奇襲によって機動力を封じられ、復活できなくなるまで燃やされ続けて倒されました。

 マスタングたちにアジトに侵入されたのは、マスタングの親友であるヒューズの暗殺がきっかけでしたが、彼にとどめを刺したのは、仲間のホムンクルスのエンヴィーです。そのエンヴィーが最終決戦まで生き残っているのに、割と序盤で退場させられたラストは不遇といえます。作者の荒川弘先生もお気に入りのキャラだったようで、「退場させるのが少し早過ぎた」とコメントしたこともありました。

『HUNTER×HUNTER』の幻影旅団・ウボォーギン

『HUNTER×HUNTER』の「幻影旅団」は、悪役ながら美形キャラも多く、団員たちが人気投票で上位になるほど人気のある敵です。「ヨークシンシティ編」では、その幻影旅団に虐殺されたクルタ族の生き残りであるクラピカが彼らへの復讐を開始しました。そして、その最初のターゲットに選ばれたのが、ウボォーギンです。

 ウボォーギンは、「ヨークシンシティ編」のクラピカがゴンたちと合流する前という序盤に、クラピカによって倒されています。クラピカの念能力のひとつである「束縛する中指の鎖 (チェーンジェイル)」は、幻影旅団限定とはいえ、相手を強制的に念応力の使えない「絶」状態にするという強力なものでした。念を使った攻撃が戦いの根幹にある『HUNTER×HUNTER』の世界において、絶大な効果です。そして、強化系の能力者として圧倒的なパワーを誇るウボォーギンも、復讐に特化した能力を持つクラピカの存在を認知する前に襲われたため、倒されてしまいました。

 ウボォーギンは念能力使いの集団である「陰獣」を相手に無双した直後に殺されています。敵としてとんでもないインパクトを残した後の退場で、短いながら存在感を残しました。今でも「ウボォーギン」で検索すると、候補に「強すぎ」が出てくるほどの敵キャラです。



ドットーレも描かれたTVアニメ『からくりサーカス』キービジュアル  (C)藤田和日郎・小学館 / ツインエンジン

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お前だけは許さない。母の執念で復活できなかった自動人形……

『からくりサーカス』の最古の4人・ドットーレ

『からくりサーカス』に登場する、フランシーヌ人形を笑わせるために「造物主」が作った自動人形(オートマータ)。その自動人形の「最古の四人」の一体であるドットーレは、最古のしろがね・ルシールの執念によって、仲間外れにされてしまったキャラです。

 人形破壊者の集団「しろがね」とフランシーヌ人形率いる「真夜中のサーカス」との決戦で、ルシールが取り出した秘密兵器は「フランシーヌ人形そっくりな人形」でした。フランシーヌ人形のために作られた自動人形たちは、それが偽モノとわかっていても、ルシールが操るからくり人形の命令に逆らうことができず、「ひかえよ」の一言で動けなったのです。特に「最古の四人」は、その忠誠心の強さから縛りもまた強く、ルシールから挑発されても、全く動けませんでした。しかし、ドットーレだけは、怒りから縛りを振りほどき、「フランシーヌなど己になんの関係もない」と口にして、ルシールを殺すことに成功します。

 しかし、これこそがかつてクローグ村でドットーレに我が子を殺された、ルシールの狙いでした。ドットーレは、フランシーヌ人形のために作られた自身の存在理由を否定したことで、 全身から擬似体液を噴き出して行動不能となったのです。そして、最終決戦後、破壊されたその他の「最古の四人」は造物主が復活させていますが、自ら存在理由を否定してしまったドットーレだけは復活できませんでした。

 非道な行いの数々は他三体と特に差がないにもかかわらず、ルシールの恨みを買ったばかりに物語中盤で離脱したドットーレ。コロンビーヌ、パンタローネ、アルレッキーノ、それぞれに物語終盤で感動的な見せ場が用意されたこともあって、ドットーレには仲間外れの印象が強く残っています。ただ、『からくりサーカス』最終43巻にある「おまけ」では、とある素敵なフォローが入りました。

 その他、勇者側にもなれずに退場した『ダイの大冒険』の六大団長のひとり・炎氷将軍フレイザードや、そもそもひとりだけ別の場所で眠っていた『ジョジョの奇妙な冒険』2部の柱の男のひとり・サンタナなど、序盤でやられた上に仲間外れな敵キャラはまだまだいます。物語の都合とはいえ、面白いキャラも多いため、惜しいと思う読者も多いようです。