最新作『スカーレット・バイオレット』の新ポケモン「ニャオハ」 (C)2022 Pokemon. (C)2022 Pokemon. (C)1995-2022 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

【画像】「ポケモンぽくない」と言われているのは?(6枚)

「ポケモンらしさ」は生物感の有無なのか…?

 シリーズ最新作『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の情報が公開されるたび、ネットは大盛り上がりです。新たな冒険フィールド、新たなバトルシステム、そして新登場のポケモンに胸が踊ります。さて新作が発表されるたびもはや恒例となっているのが「(新ポケモンが)ポケモンらしくない」論争です。今回でいえば伝説のポケモンである「ミライドン」「コライドン」がフォルムチェンジでバイクのように乗り回せるということから、早くも「らしくない論争」の俎上(そじょう)に載せられているようです。

 もちろん「ポケモンらしい」「らしくない」は個人の意見。初代発売から25年以上が経過した現在、もはや「ポケモンらしさ」も世代間によって大きく異なっています。果たしてどの世代も認める「ポケモンらしいポケモン」はどのあたりなのでしょうか? 適宜、ネットの声を参照にしつつ焦点を絞っていきたいと思います。(ピカチュウは特別枠として候補より外させてください)。

 さて「ポケモンらしいポケモン」を考える上で基準となるのはやはり初代ポケモンということになるのですが、実はこの時点ですでに統一した「らしさ」を求めるのは困難です。なにせ最初からデザイナーは複数人体制なのです。

 代表的なデザイナーにしだあつこさんが担当したポケモンだけをみても、かわいい「ピカチュウ」、かっこいい「リザードン」、不気味な「ウツボット」と実に幅広い特徴を持っています。この多様性自体がポケモンらしさを担保している点は重要です。

 さて「ポケモンらしくない」論争が目立ち始めたのは2002年発売の『ポケットモンスター ルビー・サファイア』あたりから。デザイン担当者もさらに増え、デザインの方向性も拡張される一方で「生物らしさ」がなくなったとの指摘が目立ち始めます。この指摘は以降のシリーズでも必ずと言っていいほど見受けられ、古参ファンのイメージする「ポケモンらしさ」の根底にある要素のようです。確かに初代のカニ型ポケモン「クラブ」と『 ルビー・サファイア』に登場したザリガニ型ポケモン「ヘイガニ」では脚部や突起の描き方が異なっており、「クラブ」の方が複雑に細かく描かれています。

 とはいえ初代でもいもむし型ポケモン「ビードル」は基本的に丸で構成されていましたし、他にも生物感のなさで言えば「ディグダ」なども挙げられるでしょう。この点で言えば初代からして「ポケモンらしくないポケモン」がいたという不思議な現象が起きてしまいます。やはりひと筋縄ではいきません。



伝説のポケモン「ミライドン」 (C)2022 Pokemon. (C)2022 Pokemon. (C)1995-2022 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

 さらにここ数年の「ポケモンらしくない論争」で見逃せないのが「デザインが複雑になってきている」という指摘です。生物感のなさ、過度なマスコット化を指摘する声とは正反対に思える意見もまた同じように語られているのです。確かに『剣盾』で登場した「テッカグヤ」や「マッシブーン」などは初代、金銀世代からすれば相当複雑に感じるデザインと言えます。また『XY』で導入されたメガシンカ後の姿も同様です。

「ポケモンらしくない」と判断する要素が「単純化(マスコット化)」と「複雑化」に二極化してしまうとなると全世代的が納得のいく「ポケモンらしいポケモン」を求めるには適度に「マスコット」であり適度に「生物」である必要があります。「生物感」に寄与する要素が実在の生物をモデルにしているかという点であり、「マスコット」に寄与する要素が丸みと描きやすさだとすると、全世代的に納得のいく「ポケモンらしいポケモン」は初代だと「フシギダネ」「ヒトカゲ」「ゼニガメ」あたりでしょうか。

 ……まさかの振り出しです。「そこに3びきポケモンがいるじゃろう!」というオーキド博士のセリフがリフレインします。(なお、いずれもにしだあつこさんのデザインです)いずれにせよ「ポケモンらしさ」は今後とも広がり続けるに違いありません。だからこそ、今まで見たこともない驚くべき姿のポケモンに出会うことができるのです。