「イフリート」はゲームで初登場し、活躍が描かれるも、アニメなどへの登場は遅かった。画像は「HGUC 1/144 イフリート『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』」(BANDAI SPIRITS)

【画像】悲運のMS「イフリート」の威容 ヒート・サーベル二刀流がカッコイイ(5枚)

映像化に恵まれなかった、悲劇の「MS-08」シリーズ

『機動戦士ガンダム』に登場するMS(モビルスーツ)は、アニメで登場したものだけではありません。時には雑誌やマンガなど、別媒体から生まれたものもあります。特にゲームで登場したMSは、メジャーになったものからマイナーなものまでさまざまでした。

「ゲームが初出」となったMSで、もっとも有名になったのは「MS-08TX イフリート」ではないでしょうか。初登場したのは1995年発売のスーパーファミコン用ゲーム『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』でした。

 メカニックデザインはアニメと同じく大河原邦男さん。そのデザインイメージは「侍」で、ゲームで対決する忍者モチーフのガンダム「RX-78XX ピクシー」とは対になっています。このゲームオリジナルストーリーガンダム作品が、後の「機動戦士ガンダム外伝」シリーズへとつながりました。

 型式番号からもわかる通り、グフとドムの間に位置するMSですが、その推力はゲルググをも凌駕するほど……という資料もあります。高性能な機体ですが、わずか8機で生産を終了しました。その理由は、生産性や操縦性の問題とも、ジオン公国軍が決戦に向けて宇宙用のMS開発を優先したからともいわれ、諸説あります。

 このイフリートがもっとも注目を浴びた作品が、1996年から展開されたセガサターンの3部作『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』でした。この作品では特殊装備「EXAMシステム」を搭載した実験機「MS-08TX[EXAM] イフリート改」が登場します。

 ゲームの認知度などから、イフリートというとこちらのイフリート改を思い起こす人も多いことでしょう。他のゲームでも本家のイフリートより出番が多く、SDなどでの商品化にも恵まれています。

 その後もバリエーションとして、2009年に発売されたPlayStation 3用ゲーム『機動戦士ガンダム戦記』では、強力なジャミング機能を搭載したステルス特化機「MS-08TX/N イフリート・ナハト」が登場しました。

 2014年に発売されたPlayStation 3用ゲーム『機動戦士ガンダム サイドストーリーズ』は過去の「外伝」シリーズのシナリオを収録していましたが、それとは別に収録された新規シナリオ「機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク」でイフリートの5号機が登場します。この5号機が後に回収され、クナイ状の投擲武器「ヒート・ダート」を装備した「MS-08TX/S イフリート・シュナイド」となりました。

 そしてイフリート・シュナイドは、イフリート系列で初めてアニメに登場するMSとなります。その作品が『機動戦士ガンダムUC』。一年戦争から17年後のラプラス事変での登場となりますが、この歳月はイフリートがゲームで初登場してからアニメでの映像化が実現するまでの年月と、ほぼ同じになります。

 実はイフリートは過去にも何度かアニメに登場する機会がありながらも、寸前で別のMSと入れ替えられたという悲劇的な過去がありました。それが『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』と『∀(ターンエー)ガンダム』です。実は同じMS-08の型式番号を持つ「YMS-08A 高機動型試作機」も、『機動戦士Zガンダム』で設定画が作られながらも登場しなかったことがありました。

 そのため、前述のアニメ映像化まで「悲劇のMS-08」などと一部の層で言われていたこともあります。現在ではガンプラとしても販売されていることから、ゲーム出身のMSでは一番の出世頭になるでしょう。

 最近、PlayStation 5/4用ゲームソフト『機動戦士ガンダム バトルオペレーション Code Fairy』では「MS-08TX[NF] イフリート・イェーガー」というバリエーションも登場しているので、いずれは8機すべての行方が分かる日も来るかもしれません。



ゲーム以外で「MS-18 ドルメル」が登場する希少な作品、マンガ『機動戦士ガンダム カタナ』1巻(KADOKAWA)

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幻に終わったのは「チート級の性能」が問題だった?

 イフリートと反対に、日の目を見ることが少ないMSもいました。それが1994年にリリースされた対戦型格闘ゲーム『機動戦士ガンダム EX REVUE』に登場する「MS-18 ドルメル」です。

 生産数は2機だけで、ジオン軍の宇宙要塞ア・バオア・クーで極秘裏に開発、建造されましたが、ロールアウトしたのが「一年戦争」最終決戦の日となった宇宙世紀0079年12月31日でした。

 格闘ゲーム出身ということで格闘用の固定武装が豊富なことが特徴。肩のトゲ部分が「ヒートパイル」というスパイク、牽制用に両腕に装備されたビーム弾「マルチランチャー」はビームサーベルと兼用のビームガン、さらに両足つま先に内蔵されている短いビームサーベル状の武装「トゥビーム」などが装備されています。

 筆者としては重厚感があって好きなデザインのMSですが、設定的に他の作品に組み込みづらいのか、マンガ『機動戦士ガンダム カタナ』にバリエーション機である「MS-19C ドルメル・ドゥーエ」とともに登場しただけでした。チート的な設定が問題なのでしょうか?

 チートといえば、MA(モビルアーマー)になりますが、2000年に発売されたワンダースワン用ソフト『SDガンダム GGENERATION GATHER BEAT』が初登場になった「MAN-05 グロムリン」も、驚異的な性能を持っていました。

 一年戦争末期、ジオン軍により決戦用重MAとして開発された機体がグロムリンです。一本足という異形のデザインが特徴的で、有線ヘッドビーム、ヴァリアブル・メガ粒子砲、有線アンカーレッグ、対空メガ粒子砲を装備した移動要塞とも言える火力を持ったMAでした。さらに一本足を折りたたみ、巡航形態になると高い機動性、運動性を持つ高機動型MAに変形します。

 しかし、当時の技術水準では要求された性能を満たせず、一年戦争終結時に機密保持のためにデータはすべて破棄されました。ちなみに名前の由来は『機動戦士ガンダム』放映時に作られたトミノメモからの引用です。

 あらゆる意味で幻のMAグロムリンですが、前述のゲームでは他組織の技術を応用して完成していました。この際にナノマシンやDG細胞の機能を加えられ、フロスト兄弟の野望達成のためラスボスとしてプレイヤーの前に現れています。

 後続の作品でもバリエーションが現れていました。2001年発売のワンダースワン用ソフト『GGENERATION GATHER BEAT2』では、アクシズに逃れたギレン・ザビによって開発され、月光蝶システムを搭載した「MAN-05‐2 グロムリンII」が登場。2003年発売のゲームボーイアドバンス用ソフト『GGENERATION ADVANCE』では、ギニアス・サハリンが完成させたソーラ・レイに匹敵する火力を持つ「MAN-05B グロムリン・フォズィル」として登場しています。

 他のガンダム世界の技術を使った点で、ラスボスとしては文句のない強さになりましたが、チート級の能力と相まって宇宙世紀に込み込むにはオーバーテクノロジーになりました。逆にガンダム技術のオンパレードであることから、今ならジェネシスとトランザムも装備しているのでは?……と夢想できます。

 今回は「一年戦争中」という設定の機体をご紹介しました。宇宙世紀はもちろん、他のガンダム世界でもゲーム出身の機体は多く作られています。みなさんはゲーム出身といえば、どんな機体を思い浮かべますか?