C100会場での大勢の人出。とはいえコロナ禍前に比べるとかなり過ごしやすい(以下すべて筆者撮影)

【画像】「コミケ100」を彩った華やかなコスプレイヤーたち(10枚)

チケット制は大きな利点あるが新規参入の障壁に

 2022年8月13日から14日にかけて、東京ビッグサイトで世界最大の同人誌即売会であるコミックマーケット100(通称:C100)が開催されました。新型コロナウイルスの影響により夏のコミックマーケットは2年連続で中止を余儀なくされており、3年ぶりの開催となった当イベントには、この日を待ち望んでいた多くの参加者が詰めかけ大きな盛り上がりを見せました。

 なお、コミケは現在、入場時には有料のチケットが必要となっており、事前抽選で当選した方やサークル関連の方だけが会場入りできるようになっています。

 C99では5万5千人に制限されていた1日あたりの参加者数もC100では8万5千人に増加しており、より多くの方がコミケを楽しめる状況となりました。

 実際に体感した限りでは、C99のときは人が少なすぎるようにも思えました。ですが、C100は人が大勢いるにも関わらず会場をストレスなく移動できる快適さも兼ね備えており、8万5千人という数はコミケにとって適切な人数であると強く感じました。

 しかし2019年に開催され過去最高の人出となったC97は4日間開催でのべ75万人が参加しており、単純に考えれば今回の参加者は半数以下となります。これはサークル出展している方にとって痛手であることも確かでしょう。サークル「放蕩オペラハウス」代表のワダツミ氏は「今回の売り上げは例年平均の7割くらい。冬(C99)よりはだいぶ戻ってくれました」と、参加人数がストレートに売り上げに反映されている状況を語ってくれました。

 チケット制による人数制限は徹夜組や国際展示場駅からのスタートダッシュなど以前から発生していた問題行動を消滅に追い込んだなど大きな利点もありますが、売り上げの減少のみならず、コミケに興味を持った若い方にとっての障壁になってしまうデメリットがあることも否めません。日本社会の若者の数が減少するに従い、コミケ参加者の年齢層も上昇しつつあります。若い方が気楽にコミケへ来場できる手段の構築は急務と言えるでしょう。



クリエイターたちの想いが詰まった個人サークルのスペース

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転売及びダミーサークル対策は必須

 さて、C100初日となる13日ですが、運悪く台風が接近する状況下での開催となりました。しかし悪天候が待ち受けているにも関わらず、多くの参加者たちが続々と詰めかけて整然と列を構築しており、どれだけ多くの人がこの日を待ち望んでいたのかをうかがい知ることができました。

 3年ぶりの夏コミということで人の誘導がうまくできるのかという懸念もありましたが、スタッフの方にうかがったところ今回は100回目の記念開催ということもあり、過去に引退した方が続々とスタッフに復帰してくれたとの証言を得られました。会場運営における多くの経験が引き継がれたことは、今後のコミケを占う上で非常に重要なポイントとなるでしょう。

 開場時間の10時半を迎えた瞬間には参加者たちからはいつものように拍手が巻き起こり、3年ぶりとなる夏コミは無事に開催を迎えました。午前中には一時どしゃ降りとなり屋外で待機していた方が濡れてしまうハプニングもあり、その後の湿気も酷いものでしたが、気温は比較的低めだったためいくらか過ごしやすかったのは不幸中の幸いでした。

 南館の企業ブースでは「Fate」シリーズや『月姫R』などで知られる「TYPE-MOON」ブースが特に人気が高く、多くの参加者が列をなしていました。また、『アズールレーン』や『ブルーアーカイブ』で知られる「Yostar」は新作『エーテルゲイザー』のプロモーション展開のためにコスプレイヤーが常駐しており、多くの参加者が写真撮影を行うなどかつてのコミケと同様の活気が各所で見られました。

 翌14日は幸い天候に恵まれましたが、残念なことにアーリーチケット購入者が入場する前に超人気サークル「竹箒」に長蛇の列ができる事態が発生してしまいました。会場を回ってみても参加者が訪れた形跡のないブースが多数存在しており、列を作った方のなかにダミーサークル(同人誌の頒布などを行わず、入場チケットだけを入手する目的でのサークル申込み)で入場した人物が多数紛れ込んでいたことはほぼ間違いないでしょう。

 体調不良やコロナの懸念など、やむを得ない事情で欠席された場合であれば仕方ありませんし、購入者個人で楽しむ分にはまだマシなのですが、現実問題として開場直後からフリマサイトなどに高額出品された同人誌を多数確認しています。転売は命を削って創作を行なうクリエイターの上前をはねる行為であり、断じて許されるものではありません。

 特にダミーサークルでの入場は、ブースを出展したいものの抽選漏れしてしまった方の想いや、そしてコミックマーケットの理念を踏みにじる行為でもあるのです。クリエイターの情熱を削ぎ、正当な権利を得て入場した参加者を失望させることは長期的に見てコミックマーケットの衰退につながります。ダミーサークル問題は以前から存在していましたが、転売が社会問題化した現在においては抜本的な対策が必要になっているのではないでしょうか。

※本文を一部修正しました(8月16日18時55分、8月17日14時02分)