「北斗の拳シリーズ トキ」(SpiceSeed)

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ケンシロウとユリアを生かすために犠牲に

 名作拳法マンガ『北斗の拳』には、二千年(劇中では千八百年と言われることもあります)の歴史を持つ最強の暗殺拳・北斗神拳が登場します。

 北斗神拳の伝承者・リュウケンは実子に恵まれず、ラオウ、トキ、ジャギ、ケンシロウの4人を養子とします。このなかでラオウ、トキ、ケンシロウの才能は「北斗千八百年でも最強」と、リュウケンと伝承者を争ったコウリュウが認めるほどでした。

 トキは世界を破壊した核戦争のなかで、ケンシロウとその恋人ユリアを生かすために、核シェルターに逃がします。心優しいトキは定員一杯の核シェルターに入ろうとせず、死の灰を浴びて不治の病にかかってしまいます。

 もし、核シェルターに空きがあり、トキが病を得なかったらどうなっていたでしょうか。

 北斗神拳は一子相伝のため、伝承者はひとり。ラオウは北斗神拳で天を掴み、自らの帝国を築き上げたいという野望を持っていました。このため、トキとケンシロウはラオウを伝承者にすべきとは思っていませんでした。トキが伝承者になると見られていましたが、死の病を得たことで、リュウケンはケンシロウを継承者とします。

 そしてリュウケンは、北斗神拳の掟に従い、ラオウの拳を使えなくしようとしました。しかし、リュウケンは老齢で病でもあり、ラオウに倒されてしまいます。

 もしトキが病にかかっていなかったら、すべきことはひとつでしょう。ラオウ自身が「もし、俺が道を誤ったときは、お前の手で俺の拳を封じてくれ」とトキに言っているからです。

 劇中でトキの側も「北斗神拳は一子相伝。あの男の拳を封じねばなるまい。わが生涯の敵はラオウ」とも明確に言っています。

 なお、トキが北斗神拳を極めようとするのは、兄・ラオウを越えるためでもあります。越える動機には「兄が道を誤ったら、拳を封じるため」という理由もあるでしょう。

 劇中でトキはラオウと二度戦っています。ラオウは天を割るような剛の拳の使い手ですが、トキは「激流を制するのは静水」として、柔の拳で戦います。

 北斗神拳伝承者のケンシロウが見ても、トキは「北斗二千年の歴史でもっとも華麗な技を持つ男」であり、ラオウ相手に有利に戦います。しかし、ラオウがトキの拳を封じるために、両者の脚を剣で刺したことで、ラオウが有利になります。この戦いは、ケンシロウの介入で引き分けとなりました。

 二度目の戦いでは、死期を悟ったトキが「全ての点で兄を目指し、越えようとした」ことを示すために、あえて経絡秘孔・刹活孔(せっかつこう)を突き、剛の拳でもラオウと互角に戦いますが、刹活孔の効果は時間と共に減少し、ラオウに止めを刺すことはできませんでした。

 ラオウは「病を得ず、柔の拳なら俺に勝てたかもしれぬものを」とトキの実力を認めていますし、ケンシロウも「病さえ得ていなければ」と明確に言っています。

 劇中でトキが病によってどの程度、影響を受けているのかはわかりません。劇中ではラオウが「リュウケンも貴様も俺を倒せる腕がありながら、老いと病に果てる」と言っていますから、本来の実力は出せていなかったのでしょう。

 なお、トキは経絡秘孔が逆になっているサウザーの秘密を見抜く眼力を持っていましたが、ラオウは見抜けませんでした。拳法家としては、トキの才覚が上回っているはずです。

 もし、トキが病を得ず、北斗神拳の伝承者になっていたなら、最初の対決の時点で、ラオウを圧倒していた可能性が高いと考えます。トキが得意とするのは空中戦であり、ラオウは劇中のような「空中でトキの脚に剣を刺す」ことはできなかったでしょう。

 また、トキは「本当は子どもたちや病に苦しむ人と一生を終えたかった」と考える人格者であり、愛と悲しみを知っています。病を得ず、北斗神拳伝承者となっていれば、実兄ラオウへの深い愛と悲しみから、究極奥義・夢想転生に目覚めた可能性も十分にあると思います。

 そして、兄・ラオウを倒した北斗神拳伝承者・トキはケンシロウの拳を封じ、世紀末の世界で弱者のために北斗神拳を使って、生き抜いたことでしょう。