料理と音楽が奏でる最高のボイスアクションショー『グルメ戦隊 クラックスW』公演レポート

オドルンパッ!企画第4弾『グルメ戦隊 クラックスW』が7月30日(土)、31日(日)に東京・MARRYGRANT AKASAKAで上演された。2.5ジゲン!!では、初回公演に先立ち実施された公開ゲネプロの様子を写真とともにレポートする。

本作は、「お客さまと、心躍るような、あっと驚くような、そんな作品を一緒になって楽しむひと時を創りたい」という思いから主催・五十嵐雅が立ち上げた「オドルンパッ!企画」の第4弾。同企画シリーズは、“ボイスアクションショー”を銘打ち、動きと朗読、歌にバトルアクションという“朗読劇”という枠に収まらない、まさに「楽しむ」エンターテインメントを創出している。

なお事前に行なったインタビュー記事も掲載済みなので、そちらも合わせてお読みいただきたい。

https://25jigen.jp/interview/76741

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全体的な流れとしては、オリジナルの世界観に基づくものとなっている。舞台は「マリーグラン」に所属するシェフィエ(グルメ戦士)たちの物語。結婚式において、花嫁の今1番食べたいフルコースを調理し、その精度を競い合う「マリッジファイト」が題材。それぞれのシェフィエをグルメ戦士と呼び、料理をファイトとして捉え、大観衆の前で行われるショーとして成立させている。

マリーグランには3人のカリスマ戦士であるオードブルの戦士「今村和定(演・横井翔二郎)」、スープの戦士「三森成一郎(演・長江崚行)」、ヴィアンドの戦士「阿久津正彦(演・大見拓土)」とそれに憧れる新人の「南原伝(演・五十嵐雅)」がおり、日々切磋琢磨している。特に正彦は伝説のシェフィエ・アクルックスの煌めき(きらめき)を受け継ぐ者と注目されているが、人気商売のため、さながらアイドルグループのような扱いをされたり、それにまつわるいざこざなども巻き起こる。

そこに突如現れた彼らの過去を知る人物、コールサック司令官(演・大見洋太)。たった1人で、マリーグランと対決し、策を弄し圧倒する。その人物の目的は、マリーグランの買収だという。しかし、コールサックは5年前に失踪した正彦の弟・阿久津鷹彦のようにも見え…。彼の存在と過去の出来事はいかなるものか、自分自身に問いかける戦いはいかに!?

単純なドタバタ劇ではなく、各キャラクターの心情や物語性もあり、見せ場となるマリッジファイトでは存分にキラキラな彼らが描かれている。本作の見どころは、まさに「マリッジファイト」だ。各キャストの声と動きの演出、それを盛り上げるパーカッション、リングアナウンサーも臨場感を与える。本番ではここに客席からのレスポンス(タンバリンでの応援)も加わると考えると、盛り上がりは必至。

また、料理を完成させたときのセリフもカッコよく、「初デートは、伊豆の海で決まり!伊勢海老のサラダ、柑橘とフレッシュチーズの相性で」、「育ってきた環境は違っても、おふくろの味は変わらない! じゃがいものポタージュ」など、決め台詞をキラーンという効果音とともに届けるという演出も面白い。

さらに特筆すべき点は、会場のスペシャル感である。結婚式場を舞台にアクションやライブ感のある朗読劇を楽しめる、それだけでも異質感があるが、この立地を踏まえた上で作られた台本・設定は、演じるキャストだけでなく会場への当て書きとも言える。結婚式を題材に、料理とバトルを声と動きで想像させる意欲作をぜひご覧いただきたい。

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本作はレポートしたように、朗読劇に収まらないボイスアクションショーである。会場が一体感に包まれるマリッジファイト、ファンの方々から募ったボイスを本番で流したり、各公演の終演後にはトークショーもあり、まさに至れり尽くせりな設計となっている。主宰の五十嵐がインタビューでも語っていた通り、「お客さまを楽しませるには自分が楽しいことでなければならない」をまさに体現した作品だと感じた。また、昨今の状況から声を出しての声援ができない環境を踏まえた上で、それでも楽しめるものを追求した作品になっていたように思う。本編のエピローグでは、何やら今後の展開が示唆されていたのでそこにも期待したい。

取材・文:木皿儀隼一/撮影:ケイヒカル