井戸水を水源とした簡易水道を使っているため、トラブルが起きやすい(西野みや子さん提供)

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不自由なく水が使えるのは「当然のこと」ではない

 現代の日本では、いつでも好きなだけ水を使えるのは「普通のこと」と感じる人も多いことでしょう。水道の蛇口を捻れば、当たり前のようにキレイな水が出てきます。しかし、その考えに波紋を起こすようなエッセイマンガ『限界集落の水事情』を、西野みや子さん(@miyakokko61)がTwitterで公開しました。

 作中で描かれているのは、西野みや子さんが夫と幼い子供と3人で帰省したときのエピソード。実家に向かう途中で、母から「自分たちの飲み水を買ってくるように」と電話で伝えられます。西野みや子さんの実家は田舎の集落。水道を引っ張ってくることができない場所にあり、井戸水を水源とした簡易水道を用いているため、しばしば水が使えないトラブルも起きるのです……。

「田舎カルチャーショック」を描いた本作には、読者から「貴重な話を聞かせてもらった」「安全な水が使えるのは幸せですね」などのコメントが寄せられています。また、同じような環境で暮らしてきた読者も意外に多く、共感の声も多数あがりました。Twitter投稿には、4000件を超える「いいね」がついています。

 作者の西野みや子さんに、お話を聞きました。

ーー西野みや子さんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。

 息子が生まれて3日と育児日記が続かず、育児マンガを描き始めたのがきっかけです。

ーー『限界集落の水事情』をマンガで公開しようと思ったきっかけはありましたか?

 大人になって限界集落に残していた家族のことが気になるようになりました。県内には住んでいるものの、離れて暮らしていると家族にできることは少ないので、せめて「今の日本にも水で困っているところがあるんだ」ということをたくさんの方に知ってほしいと考えるようになりました。

ーーこのエピソードでの「帰省」の期間は何日くらいだったのでしょう? その間に「都会育ち」という旦那さんの反応はいかがでしたか?

 もともとは2泊3日の予定でしたが、1泊2日に変更しました。夫にとっては義実家なので多少遠慮がちではありましたが、不満を訴えていました。自分のことというよりは、幼い息子のことを気にかけてくれていたので感謝はしています(笑)。



「当時は恥ずかしくて水問題については誰にも話せなかった」と語る作者(西野みや子さん提供)

ーー今や「好きなだけ水が使える」環境になった現在の西野みや子さんから見て、あらためて実家の集落の環境については、どのような感想をお持ちですか?

 水は限られた資源でありがたみを感じることはできていますが、日々の入浴や洗濯に影響があるのは本当につらいことなので、改善してほしいなと思っています。しかし、人口的にも予算的にも立地的にも、水道管を引っ張ってくるのは難しいのでやるせなさを感じます。私たちの集落に限らず、簡易水道の地域って割とあるんですよね……。

ーー作品にはたくさんのコメントが寄せられています。特に印象に残った読者の声について、教えて下さい。

「雨の日には濁った山水を使っている」というコメントが多かったことが特に印象に残っています。今は簡易水道を主に使っていますが、祖父母の家は山水を使っています。

 このマンガを描いているときは、正直「需要があるのか?」と思っていました。私のなかでこの生活は当たり前になっていて、「読んで面白いのか?」「共感が得られるのかな?」と。ですが、田舎で育った方にはあるあるだったようで、賛同してもらえてうれしい気持ちになりました。いや、焦るべきなんでしょうが……(笑)。

ーー今後、Twitterで発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?

 育児マンガがきっかけで始めたTwitterですが、自分に焦点を当ててエッセイマンガを描いていきたいです。限界集落に住んでいると、インフラだけではなく進学もとても大変です。当時の私には何もできませんでしたが、日本にもこういう世界があるということを多くの方に知っていただきたいなと思っています。