1号生筆頭・剣桃太郎と男塾の不死身の仲間たちが描かれた『魁!!男塾』1巻(集英社)

【画像】『魁!!男塾』単行本で不死身の男たちを振り返る(7枚)

何度死んでもよみがえる! 熱い男たちの闘いにくぎ付け!

 1980年代の黄金期と呼ばれる「週刊少年ジャンプ」で連載されていた『魁!!男塾』(作:宮下あきら)は、「男らしく硬派」という点では同年代の最高峰とも言える作品です。色々な意味で読者の度肝を抜く、荒唐無稽で奇想天外な展開が人気を集めました。

 特に読者を驚かせたのは、死んだはずのキャラクターが「実は生きていました!」と、元気に再登場、または再々登場するという「生き返り」展開です。作中で「死亡」とハッキリ書かれていたはずなのに、しばらくすると「実は生きていました!」と帰還し、すぐにまた死闘を繰り広げるのですから、荒唐無稽ぶりが徹底しています。しかし、この荒唐無稽ぶりこそが『魁!!男塾』の魅力であり、どんなことが起こっても、それはそれとして受け入れて読み進めたいほど、パワーに満ちていて面白い作品だったのです。

 今回はそんな『魁!!男塾』で死んだはずなのに生きていた「不死身キャラクター」を振り返ります。

3度死んで3度よみがえった富樫源次

 富樫源次(とがし・げんじ)はドスを使ったケンカ殺法を得意とし、いつも兄の形見である破れた学帽をかぶっています。

 関東豪学連との「驚邏大四凶殺(きょうらだいよんきょうさつ)」では、鳥人拳の使い手・飛燕(ひえん)と対戦して窮地に立たされますが、男塾の仲間たちからの大エールに支えられ、最後は飛燕ともども断崖絶壁から落ちて相打ちに持ち込みました。寿命蝋の炎も消えたため、死亡とされましたが、その後、完璧な治療を施されて男塾に戻っています。

 富樫は唯一の肉親であった兄を殺された復讐のために男塾に入っており、男塾を支配する三号生・大豪院邪鬼(だいごういん・じゃき)相手に闘いを挑んだ時には、腹にダイナマイトを巻いて突撃したほどです(この時には火が付いたダイナマイトの上部だけを斬られ、死亡には至っていません)。

 その後、4年に1度開催される「天挑五輪大武會(てんちょうごりんだいぶかい)」では、虎丸龍次(とらまる・りゅうじ)とタッグを組んで阿們(あもん)・呍們(うんもん)と対戦し、この時も断崖絶壁から弟の呍們もろとも落ちて死んだと思われました。そして、相棒の虎丸は、谷風によって運ばれた破れ学帽をかぶって、残った阿們と戦い、からくも勝利。

 虎丸が「お 俺達 ふたりの勝利だ……!!」と学帽を握りしめながら富樫を讃えていたところに、本人が崖を這い上ってきます。そして、地面に叩きつけられる寸前、誰かが幕を張って彼の身体を受け止めてくれたおかげで命拾いしたと言うのです。「死んだと思ったけど、天才医師・王大人(わん・たーれん)によって救われた」というパターンと同じく、この「死んだと思ったけど、知らないうちに誰かに助けられていた」というのも、『魁!!男塾』ではよく見かけるパターンでした。

 さらに「七牙冥界闘(ばとるおぶせぶんたすくす)」では、再び虎丸とタッグを組んで宝金丹(ほう・きんたん)・宝銀丹(ほう・ぎんたん)と対戦するも、今度は鉄仮面をはめられていたぶられた挙句、腹を刺されて息絶えてしまいます。その際には、一緒に戦った虎丸に対して、「やはりおまえはサイコウのダチだったぜ アバヨ」という血文字の言葉まで残すという丁寧さ。虎丸の咆哮が涙を誘いました。しかし、その後、王大人に「中国三千年の歴史を持つ医術の秘」をもって助けられ、闘いの場に復帰しています。特別な拳法なども身につけているわけではなく、気合と根性で生き抜いてきた富樫こそ、最も「不死身の漢」なのかもしれません。



恐るべき執念でよみがえった藤堂兵衛が表紙に描かれている『魁!!男塾』第23巻(集英社)

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一刀両断でもよみがえる!悪いヤツも、簡単には死なないのが『男塾』

千度の高熱マンガン酸性硫黄泉からよみがえったJ

 Jは、史上最強のボクサーと言われたキング・バトラーの息子であり、彼自身もボクシングの腕は超一流で、得意技は「マッハパンチ」です。当初、留学生のひとりとして男塾に来ましたが、剣桃太郎との対決で敗れたことで、男を極めるために男塾の塾生となりました。そんなJは物語上、最初の犠牲者です。

「驚邏大四凶殺」において、第一の凶・灼脈硫黄関(しゃくみゃくいおうかん)で雷電と戦ったJは、中国拳法最古の大往生流殺体術の使い手である雷電と相打ちになります。「千度の高熱をもつマンガン酸性硫黄泉」に落ち、寿命蝋の炎も消えたため、Jは死亡したものと思われました。その熱い戦いと死を見た剣桃太郎は、彼の死を悼んで左腕にJの名をドスで刻み、復讐を誓ったのです。

 しかし、「驚邏大四凶殺」の勝者が男塾と決まった後、男塾に届けられた棺桶には、完璧に治療を施されたJの姿があり、桃太郎と涙の再会を果たしました。そしてその1か月後にはすっかり傷も癒えて、3号生との死闘「大威震八連制覇(だいいしんぱーれんせいは)」に挑むことになるのです。

溶岩に落下……からよみがえった飛燕

 鳥人拳の使い手・飛燕は、『魁!!男塾』には珍しい美形キャラで、女性ファンが多いと言われています。彼も前述の富樫同様、3度死んだと思わせて3度よみがえっている「不死身キャラクター」です。

「驚邏大四凶殺」で富樫との死闘の末、断崖絶壁から落ちたのが1度目。やはり、彼も手厚い治療を施されて命拾いしています。その後、「大威震八連制覇」で暗黒拳である戮家(りくけ)殺人拳の使い手であるセンクウと対戦し敗れました。しかし、そこでも活躍したのが王大人。「死亡確認」してからのすみやかで完璧な治療によって、再びよみがえります。

「天挑五輪大武會」ではネスコンスと対戦し、死を覚悟した「鳥人拳最終極技 鶴嘴紅漿霧」によって、ネスコンスの足元の杭を砕いて溶岩に落としますが、自らも落ちて死亡したと見られました。「三面拳・飛燕……死す!」と、大きな文字で書かれています。しかし、溶岩に落ちる寸前に、男塾塾長・江田島平八の密命を受けた翔霍(しょうかく)が彼を救い出していたのです。この翔霍もまた、闘いのなかで「死んだことにされた」影慶(えいけい)でした。

自分で自分を消し去ったはずなのによみがえった大豪院邪鬼

 三号生筆頭・大豪院邪鬼は、男塾を10年以上も支配している男塾総代です。「大威震八連制覇」で剣桃太郎と対戦し、桃太郎の攻撃で雷に打たれて死亡していますが、やはりその後、生きていたことが判明し、ともに「天挑五輪大武會」に向かいます。そして、スパルタカスと対戦した際には心臓を貫かれ、鞭での攻撃に大量の血を流しながらも真空殲風衝(しんくうせんぷうしょう)によって相打ちに持ち込むと、桃太郎たちに男塾の未来を託し、自らの真空殲風衝によって自決しました。

『魁!!男塾』に続く『曉!!男塾』では大豪院邪鬼は「大威震八連制覇」で死亡したことになっていますが、『極!!男塾』ではよみがえって存命という設定になっています。

一刀両断からよみがえった藤堂兵衛

「天挑五輪大武會」の主催者、藤堂兵衛(とうどう・ひょうえ)は政財界の黒幕であり、非情で非道な人物です。戦時中には、敵に寝返って男塾塾生を含む2813人もの日本軍兵士の命を奪った彼を男塾塾長・江田島はけっして許すことができませんでした。そこで、剣桃太郎たち男塾チームを天挑五輪大武會で優勝させ、用心深い藤堂が唯一姿を現す表彰式で彼を討つという作戦を立てたのです。

 そして、死闘の末、ついに優勝を果たした男塾チームと戦闘機で現れた江田島が藤堂に迫りますが、彼はロケット状の飛行機で逃走します。しかし、そんな藤堂を剣桃郎が機体もろとも脳天から一刀両断。藤堂は、真っ二つになって海に落ちていきました。

 ところが、藤堂は「現代科学の粋を極めた医療設備と世界最高の医師団」によって命をつなぎ、「七牙冥界闘」で恨みを返そうとします。さらにその後の『曉!!男塾』や『極!!男塾』でも宿敵として登場しました。

 驚異の天才医師・王大人と、「わしが男塾塾長・江田島平八である」のひと言ですべてを押し切る塾長・江田島平八がいれば、不可能も可能となるのが『魁!!男塾』なのです。