人気沸騰中のアニメ『SPY×FAMILY』。じつは原作になかった数々のアニメオリジナルシーンが追加されていることに気づいていましたか?
原作コミックスが累計2100万部を突破するなど、TV放送が始まってから話題を呼び続けているアニメ『SPY×FAMILY』。映像作品として表現された本作は第1話での黄昏のアクションシーンや、第2話で描かれた黄昏とヨルの協働、そして声優・種崎敦美さん演じる表情豊かなアーニャの様子が魅力であることは間違いないはず。
ただアニメ『SPY×FAMILY』には原作では描かれなかった場面も多く、数々のアニメオリジナルシーンの存在も本作の見どころとして挙げられるでしょう。本稿では『SPY×FAMILY』のアニメで描かれた原作にはないシーンを振り返りましょう。
※記事の性質上、ストーリーの内容に触れています。

『SPY×FAMILY』MISSION:9「ラブラブを見せつけよ」ビジュアルより
via 『SPY×FAMILY』MISSION:9「ラブラブを見せつけよ」ビジュアルより
それぞれの背景が強調された「クラス対抗ドッジボール戦」
原作の世界観を大きく広げたエピソードとして、「MISSION:10『ドッジボール大作戦』」が挙げられます。体育の授業として行われたのは「クラス対抗ドッジボール戦」。この試合で活躍した生徒には“星(ステラ)”が授与されるという噂を耳にしたアーニャやダミアンたちは、各々の特訓を経てドッジボールに挑むこととなります。
原作コミックス3巻「MISSION:15」でも描かれたこのエピソードは、対立することの多いアーニャとダミアンの友情が垣間見えるお話。もちろんアニメでもアーニャとダミアンが互いを思い奮闘する様子が描かれるのですが、ドッジボールに挑むまでの過程も詳細に描かれたのです。
試合に臨む前、アーニャは“はは”であるヨルに「ひっさつわざ おしえろ」と特訓を申し込みます。原作では回想シーンとしてヨルとアーニャのやり取りが数コマ描かれましたが、アニメでは命を賭けながら腹筋をするアーニャの姿やボールを投擲し街の木々をなぎ倒すヨルの姿が描かれました。
またダミアンやクラスメイトのエミールやユーインたちが、学校の遊具を用いて『ドラゴンボール』を彷彿とさせる特訓をする様子も追加されました。3人の連携技も披露され、その姿はスポーツ漫画でよく見られる必殺技の迫力にも劣らないものでありました。
週刊少年ジャンプの哲学として知られる「友情・努力・勝利」を感じさせるシーンが描かれるなか、アーニャやダミアンたちは勝利をつかむことができませんでした。
その要因は相手チームに幼稚園時代から数々の球技大会を総ナメしてきた生徒・ビルがいたからです。
周りの生徒と一線を画す体格をしたビルは次々と生徒にボールをぶつけます。原作漫画でも異質な存在として描かれたビルですが、アニメではアーニャたちと同様にドッジボールの特訓に励む姿、そして原作漫画には登場していないビルの父親と勝利を約束する様子も描かれたのです。
アニメによって描かれたアーニャをはじめダミアンやビルがドッジボールの試合に挑むまでの物語。彼らのドッジボールにかける思いはアニメオリジナルの描写によって解像度がより高いものになったと感じます。
『SPY×FAMILY』MISSION:10「ドッジボール大作戦」次回予告
ちなみにビルを演じたのは『弱虫ペダル』の金城真護や『BLEACH』の茶渡泰虎を演じた声優・安元洋貴さん。ビルの発する凛々しい声も周りの生徒とは印象の大きく異なるものであり、放送後に大きな反響を呼びました。安元さんの迫真の演技も原作の世界観を拡張させたものとして挙げられるでしょう。
黄昏のカッコよさが光った“たすけられごっこ”
前述したエピソードと共に、アニメオリジナルとなるシーンが多く描かれたお話として「MISSION:5『合否の行方』」も挙げられます。イーデン校の入学試験に合格したアーニャのご褒美として、フォージャー家やフランキーたちでお城を貸切り“たすけられごっこ”をする様子が描かれます。
スパイ役を務める黄昏がアーニャのためにお酒で酔ったヨルと対峙するといった原作と同じシーン共に、アニメでは黄昏演じるロイドマンがアーニャに関するクイズを考察したり、様々な刺客を華麗に欺きながら、フランキー演じる悪の親玉・モジャモジャ伯爵からアーニャ姫を助け出す様子も描かれたのです。
モジャモジャ伯爵は語尾に「~モジャ」とつけて話しますが、これは声優・吉野裕行さんのアドリブであったことが明かされています。(※)
※『SPY×FAMILY オペレーション〈ポッドキャスト〉』(2022年5月8日公開):#05 フランキー・フランクリン役の吉野裕行さんがゲスト!「吉野さんがアニメ第5話で入れたアドリブは○○○○!」にて。
そのほかにも「MISSION:3『受験対策をせよ』」で黄昏たちが住む家に引っ越してきたヨルにアーニャがぬいぐるみのキメラさんを紹介する様子、「MISSION:6『ナカヨシ作戦』」では黄昏が外出する際に見送りをするアーニャたちに振り返り手を挙げるシーンも追加されています。
本作のアニメオリジナルとなるシーンの数々は、ときにキャラクターが活躍する瞬間の輝きをつよめ、ときに1人ひとりの思いや価値観といった内面部分の解像度を高めていると感じます。
『SPY×FAMILY』MISSION:5「合否の行方」次回予告
アニメ『SPY×FAMILY』が大きな注目を集めたのは原作漫画の魅力もさることながら、それぞれのキャラクターのことを理解したうえで、原作ファンも喜ぶような演出が追加されたことが影響しているはず。今後も原作コミックスと共に、スタッフからの愛をつよく感じるアニメの展開から目が離せません。
(執筆:あんどうまこと)