「みんな不人情だ。ほんとのファンなら落ちめのときにこそおうえんしなくちゃ」 著:藤子・F・不二雄『ドラえもん』第16巻(小学館)

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視点を変えれば、正反対の印象に

 マンガを読んでいて共感したり学びがあったりする経験、ありませんか? 特に心に突き刺さるようなセリフは記憶にこびりつき、心にずしりと残ります。この記事では読者をうならせた名セリフをご紹介します。

『ドラえもん』(著:藤子・F・不二雄)の第16巻に登場する、のび太のセリフ「みんな不人情だ。ほんとのファンなら落ちめのときにこそおうえんしなくちゃ」は、「推し」がいる人の心に刺さるセリフです。ファンであるならば、「推し」の人気が下がり気味のときこそ、いままで癒やしや幸せをもらっていた恩返しをすべきときです。一方的に元気や癒やしをもらっていたファンたちが「推し」に、真実かもわからない不祥事や自分が気に入らないという理由で手のひらを返すのはファンとは言えません。どんな状況でも愚直に愛を叫び続けることができる存在こそが「ファンの鑑(かがみ)」ではないでしょうか?

『東京喰種:re』(著:石田スイ)の第3巻では、涼しい顔でトップを維持し続ける真戸暁(アキラ)へ嫉妬をおぼえる滝澤政道の様子が描かれていました。「100点満点と99点の差は1点じゃない」というセリフは、実験によって半喰種化してしまった滝澤の、嫉妬と悔しさが入り混じる心の声でした。満点の場合、そのテストだけでは図り切れなかったと言えますが、99点はそれが限界だと数値に現れてしまっている証拠でした。1番になりたくて一生懸命努力したのに報われず、背中を追うことしかできない悔しさや自分の不甲斐なさで押しつぶされそうになる気持ちが痛いほど伝わってきます。

 しかし、劣等感を抱いたときに一緒に思い出したほしいセリフが『猫のお寺の知恩さん』(著:オジロマコト)の第7巻に登場するワンフレーズです。「どんな良い人間でも、きちんとがんばっていれば だれかの物語では悪役になる」という、おばあちゃんのセリフはSNSで話題になり、広く知られるようになりました。逆に言えば、どんな悪人でも、視点を変えれば良いやつに見えるかもしれない、と言い換えることができます。実際に『東京喰種:re』のアキラも、影で滝澤以上の努力をしたからトップと取り続けることができていました。自分にとって憎らしい存在でも、たったひとつの出来事で印象が真逆になってしまうことだって、まれではないのかもしれません。

『亜人』(著:桜井画門)の第3巻に登場する、永井圭の「命の価値なんざTPOで変わるもんだ」というセリフは、他人事とは思えない重みを感じます。たしかに、戦時中は人を殺せば殺すほど称えられる「英雄」は戦争が終わった途端、その名誉や勲章が「人殺し」のレッテルに変化してしまいます。

 例えば、どこかの国で100人亡くなった、とニュースで流れたとき、大半の人がほとんど関心を持ちません。しかし、仲の良い友人や家族などが亡くなったと聞けば、たとえひとりでもとても悲しくなります。だれしも「100人の命」以上に「大切なひとりの命」の方が、価値が高いものです。このことからのちに続く、圭の「すべての人間が無意識に他人の命の重さを秤にかけている」というセリフに強い説得力を感じます。