英雄と呼ばれる人間たちの生き様は、時に愚かしく、そして愛おしい。画像は『ヴァルキリープロファイル』

【画像】リメイクして! 初代PSの名作ソフトたち(6枚)

隠れた名作と語り継がれるタイトルも…

 国内の大手ゲームソフトメーカーの中でも、知名度・人気共にトップクラスに位置するスクウェア・エニックス。普段ゲームを遊ばない方でも、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』といった同社の代表シリーズを、一度は耳にしたことがあるはず。

 今ではどちらのシリーズもスクウェア・エニックスがリリースしていますが、2003年の合併以前は、エニックスが『ドラゴンクエスト』を、そしてスクウェアが『ファイナルファンタジー』を販売しており、当時のRPGファンを二分する人気ぶりを見せていました。

 この2大シリーズが飛び抜けた人気を持っていたのは事実ですが、両社ともそれだけが代表作ではなく、当時大きな注目を集めた作品がいくつもありました。なかには、この令和に新展開を迎えたり、隠れた名作として語り継がれているものも含まれています。

 そこで今回は、合併以前に両社が活躍した初代PlayStation(以下、PS)時代に、それぞれどんなタイトルを展開させていたのか、特徴的な5作品をお届けします。『ドラクエ』や『FF』だけではない、エニックスとスクウェアの躍進をご覧ください。

英雄を導く戦乙女となれ!『ヴァルキリープロファイル』

 エニックスが放ったPS時代の名作といえば、『ヴァルキリープロファイル』を外すわけにはいきません。PSは立体的な3Dゲームが大きく盛り上がりましたが、本作は横スクロール型の2D・RPG。また、登場人物を繊細かつ美しいグラフィックで描くなど、3Dで賑わっていたPS作品の中では比較的珍しい切り口が、逆に存在感を強めました。

 もちろん見た目だけでなく、ゲーム性も魅力的です。特に、パーティメンバーを○×△□の各ボタンに配置し、攻撃を連続して繋げる戦い方は、操作の負担を減らしながら戦略性を確立する、ターン制RPGの新機軸とも言える斬新さがありました。

 また、北欧神話をモチーフとした物語は、生と死の狭間に置かれた人間たちのドラマや、神々と英雄の間に立つ主人公の葛藤などが雄弁に描かれ、高い評価を受けました。さらに、プレイヤーの行動次第で変化するルートとエンディングも、満足度を大きく後押しします。

 この『ヴァルキリープロファイル』の成功がきっかけとなり、後にシリーズ展開へと発展。間隔が長く空くこともありましたが、シリーズ最新作の『ヴァルキリーエリュシオン』が2022年に発売されます。令和に入っても新作が出る本シリーズ、その原点はPS時代のエニックスにありました。

おバカ?それとも哲学的? 見る者の想像を広げる『せがれいじり』

 『ヴァルキリープロファイル』をエニックスの王道的な代表作とするならば、突き抜けたセンスで当時のユーザーを驚かせたのが、こちらの『せがれいじり』です。スクウェア・エニックスの公式サイトにある紹介文にも、「各所から、『おバカ』『くだらない』『まっとうなゲームではない』と大絶賛を賜っております」とあり、その独特の反響は公式側も認めるほどです。

 いい意味で「おバカに徹する」といったコンセプトを掲げた本作は、センス・オブ・ワンダーを詰め込んだような作品でした。主人公の少年は頭が「矢印」で、彼の母親は首だけのキリン。しかもその首は、ゲーム進行に従ってどんどん長くなっていきます。こうした状況に関する明確な説明は特になく、圧倒的な世界観の奔流にプレイヤーは飲みこまれていくばかりです。

 ですが、単に無軌道なゲームかと言われれば、それも正確ではありません。感覚で理解する点が多い一方で、本作は主人公の成長を描いているとも読み取れ、さしずめキリンの首が長くなるのは「息子の成長を心待ちにしている」と解釈することもできます。

 「おバカ」に満ちた本作は、理屈で考える者を迷宮に誘い、シュールさで脱力させつつ、意外な奥深さを垣間見せてくれました。「せがれ」を「いじる」というタイトルも、下世話な意味ではなく、プレイヤーの操作を通じて少年を成長させていく、といった意味なのだと個人的に解釈しています。



リメイク希望も多い『ゼノギアス』

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スクウェア時代にも名作あり! 王道から隠れた良作まで

ハードな物語とキャラクター陣の魅力が交錯した『ゼノギアス』

 続いては、スクウェア時代の話題作を3本紹介します。まずは、こちらも名作RPGの呼び声が高い『ゼノギアス』。本格的なSF要素に加え、社会問題も扱った物語は、丁寧な伏線や引き立てる演出の数々などに支えられ、多くのユーザーを虜(とりこ)としました。また、綿密に作り込まれた設定が、世界観の土台作りに大きく貢献したことも高評価の一因です。

 さらにゲーム性も魅力的で、3つのボタンを組み合わせてさまざまな攻撃を繰り出すバトルは手応え抜群。プレイヤー自らが技を使い分ける感覚が、キャラクターとの一体感に繋がり、コントローラを握る手に自然と力が入りました。

 世界観・物語・バトルと多彩な魅力を発揮した『ゼノギアス』ですが、残念ながら直接的な続編は作られていません。しかし、本作を生み出した高橋哲哉氏は、後に『ゼノサーガ』シリーズや『ゼノブレイド』シリーズといった、「ゼノ」を冠する作品を開発。いずれも直接的な繋がりこそありませんが、共通する単語が使われることもあり、想像の余地に想いを馳せるファンが跡を絶ちません。

 高橋氏による直近の展開として、最新作『ゼノブレイド3』が2022年7月29日に発売されます。こちらの登場も待ち遠しいばかりですが、同じくらい『ゼノギアス』のリメイクを待ち望んでいるファンも多い模様。その要望が叶うことを、一ユーザーとして願うばかりです。

ボコボコにする? 大事な人を生き返らせる? 全く異なる物語が楽しい『デュープリズム』

 『ゼノギアス』と同じく、こちらも続編などは出なかったものの、丁寧な作りと共感性の高い作風が評価された『デュープリズム』も、当時のスクウェアを思い出させる1作です。

 スクウェアは、『ファイナルファンタジーVII』、『ゼノギアス』と3D表現に重きを置いた作品をリリースし続けましたが、本作はさらに踏み込んで「フル3Dのアクションゲームを作る」といったコンセプトから始まりました。同社の作品は描写へのこだわりも強く、その意味でも実にスクウェアらしさを感じさせます。

 3Dモデルの表情変化が難しかった時代に、個性を感じさせるモーションや高い演出力で感情を雄弁に表現。また、操作しているキャラクターをNPCが視線で追い、動きを追従するといった技ありな表現などにも挑戦するなど、意欲の満ちた作品でした。

 加えて、主人公が選択できるゲームは当時もありましたが、本作は主人公によって物語が一変します。コミカルかつパワフルな「ミント編」と、シリアスで深みのある展開を見せる「ルゥ編」が、それぞれ異なる満足感を与えてくれました。

独自性の高いアクションを、重厚な物語が盛り上げた『ベイグラントストーリー』

 年々磨きがかかる3D表現は、『ベイグラントストーリー』でも高い水準を見せます。等身の高い3Dモデルに遜色のない「顔」を組み合わせ、端正と言えるほどのキャラクター造形に成功。PSが持つ性能の限界に迫ったような描写は、当時も評判となりました。

 また本作は、RPG要素とアクション性を併せ持ちますが、一般的なアクションRPGとは異なっており、タイミングが攻撃の鍵を握る独特なバトルデザインを採用。戦闘の駆け引きをシステム化した「リスク」の存在も相まって、戦闘における緊張感と勝利の達成感は本作ならではの味わいです。

 そしてもうひとつ、開発の中心的人物である松野泰己氏が手掛けたシナリオも刺激的で、プレイ意欲の向上に貢献しました。考察し甲斐のある物語に加え、「もっとも優れた麻薬だからな、愛という名の信仰は」といったキレのある台詞回しの心地よさは、今も忘れられない方が多いのでは。

 なお、本作もシリーズ化はせず、単一の作品として綺麗に完結しています。そのまとまりの良さも見事ですが、現世代機でも遊びたいという欲が湧くのも素直なファン心理と言えるでしょう。

 今回紹介した5作品は、その後の展開や発展に違いこそあれ、当時の2社を大いに盛り上げた点は共通しています。そうした時代の積み重ねが、今のスクウェア・エニックスに繋がっている──その系譜に思いを馳せて見るのも、また一興です。