子供は見ちゃダメ!チャレンジングな実写化作品

 マンガならではのグロ、ゴア、エロ描写や、センシティブなテーマを取り扱っている作品は、実写化が特に難しいです。22年4月に人気マンガ『ゴールデンカムイ』(著:野田サトル)の実写映画化が発表された際も、原作に忠実に実写化するとしたら、R指定になってしまいそうな場面も多々あるため「あのシーンはどうするの?」「このキャラは誰がやるの?」「アイヌ文化はどう描くの?」とさまざまな反応が集まっていました。今回は、そんな「いろんな意味でエグい」原作を意欲的に実写化した、R指定のおすすめ映画を4作品ご紹介します。

【画像】R指定意欲作を原作表紙とともに見る!その他のおすすめR指定実写映画も紹介(12枚)

『ミスミソウ』R15+



映画『ミスミソウ』ポスタービジュアル (C)押切蓮介/双葉社 (C)2017 「ミスミソウ」製作委員会

『ハイスコアガール』の押切蓮介先生による同名マンガを、『ライチ☆光クラブ』の内藤瑛亮監督が実写化した『ミスミソウ』。東京から田舎の中学校に転校してきた野咲春花は、学校で陰惨ないじめを受けていましたが、卒業まであと少しだからと何とか耐えていました。しかし、いじめはエスカレートしていき、春花の家族にまで被害を及ぼします。

 その事件をきっかけに春花が復讐を決意し……というストーリーなのですが、単なる復讐劇と思ったら大間違い。そこからさらに春花が反撃されるようになってからが本番です。そんな衝撃的な展開はほぼ原作に忠実に作られており、印象的な台詞も再現されていました。どう考えても行き過ぎないじめや、凄惨なスプラッター描写は、若手キャスト陣によるピュアな演技によって、痛々しさや切実さが増しています。真っ赤な血と真っ白な雪原のコントラストは残酷ながらも芸術的で、鑑賞後しばらく忘れられないのではないでしょうか。

『リバーズ・エッジ』R15+



映画『リバーズ・エッジ』ポスタービジュアル (C)岡崎京子/宝島社 (C)2018 「リバーズ・エッジ」製作委員会

『ヘルタースケルター』の岡崎京子先生による同名マンガの実写化を、『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲監督が手掛けた『リバーズ・エッジ』。女子高生の若草ハルナは、元彼氏の観音崎にいじめられている山田一郎という同級生を助けたことをきっかけに、山田からとある秘密を打ち明けられます。それは山田が見つけた河原にある死体で、やがて同じくその存在を知る吉川こずえも現れ……。

 いじめ、ドラッグ、煙草、摂食障害、同性愛、援助交際、妊娠など、それぞれに心の闇やどうしようもない事情を抱えた高校生たちが登場し、かなりセンセーショナルな話題を扱っています。過激な暴力描写や性愛描写に意識が向いてしまいがちですが、死体の秘密を共有するハルナ、山田、こずえの三人の関係には不思議な信頼関係があり、落ち着いた空気が流れているのが映像から感じられました。簡単に共感できる内容ではなく、心が重くなってしまう作品ではありますが、若者たちの葛藤や苦しみが描かれ、考えさせられる作品です。

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マンガの神様の大人向け作品を息子が実写化!

『アイアムアヒーロー』R15+



映画『アイアムアヒーロー』ポスタービジュアル (C)花沢健吾/小学館 (C)2016 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会

『GANTZ』の佐藤信介監督が、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の花沢健吾先生による本格ゾンビマンガを実写化した『アイアムアヒーロー』。冴えない漫画家アシスタントの鈴木英雄が、謎のウイルスに感染し「ZQN(ゾキュン)」と呼ばれるゾンビと化した人々(ZQN)に襲われながら、逃亡する道中で出会った女子高生・比呂美や、元看護師・藪とともにZQNと戦い、生き延びていく姿を描きます。

 うだつの上がらない主人公・英雄の冴えない日々が、徐々に不穏さを増していく世の中と並行して描かれる序盤の様子が印象的で、英雄の彼女がZQN化してから一気にゾンビ映画へとシフトしていく様に衝撃を受けました。ある種、洋画に出てくるようなゾンビほどモンスターっぽくないZQNは、少ししゃべることも相まってもともと人間だったことが感じられる分、ジャパニーズホラー感が出ていて恐怖心を煽ります。原作通りグロ、ゴア描写のオンパレードですが、戦闘能力の高いZQNを相手にする緊迫感を演出するのに必要な表現と言えるでしょう。ひとりの男が名前通り「英雄」になっていく物語は、ハラハラしながら見届けたくなります。

『ばるぼら』R15+



映画『ばるぼら』ポスタービジュアル (C)2019 「ばるぼら」製作委員会

「マンガの神様」手塚治虫先生による同名マンガを、実子である手塚眞監督が実写化した『ばるぼら』。異常性欲に悩まされている人気小説家・美倉洋介は、新宿駅の片隅で酔っ払っていたホームレスのような少女・ばるぼらに出会い、思わず自宅に連れて帰ります。美倉は彼女の奇妙な魅力に惹かれて追い出すことができず、さらには彼女がそばにいると創作意欲が湧いてくるのでした。ばるぼらは芸術家を守るミューズなのか、それとも破滅に追い込む魔性の女なのか……。

 美倉とばるぼらが辿る運命は壮絶です。美倉の異常な欲求からなるシーンの数々はかなり衝撃的ですが、退廃的で耽美な雰囲気がダークファンタジー感を助長していて、話題となったエロティックなシーンもいやらしさよりも美しさが際立つように描かれていました。後半部分には特に映像化が難しかったであろう展開が待ち受けていますが、主演の稲垣吾郎さん、二階堂ふみさんの狂気を秘めた好演に見入ってしまいます。