TVシリーズでは戦死する結末となったマ・クベ。画像は『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』16巻(KADOKAWA)

【画像】玄人好みのMSが多い? 異なる運命をたどったキャラたちの愛機を見る(5枚)

媒体が運命の分かれ道だったキャラクターたち

「ガンダム」シリーズでは、重要なキャラクターでありながらも、物語中では何らかの決着がつくことなく、いつの間にか退場したキャラたちが何人かいます。その後はアニメ以外の書籍などで登場することもありましたが、その運命は作品によって違っていました。

まずは『機動戦士ガンダム』に登場したマ・クベです。TV版ではギャンに乗ってアムロ・レイと戦い、戦死する結末を見せていました。しかし、劇場版ではそのシーンはカットされ、生死に関しては触れられていません。実は宇宙世紀の歴史では、一年戦争は劇場版が正史となっているので、マ・クベは生きのびて、後の歴史にも登場する可能性もあるわけです。

 そうは言っても、マ・クベが一年戦争以降の歴史に介入する物語はほとんどなく、マンガ『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』や『機動戦士ガンダム バンディエラ』では、一年戦争中に戦死した形になっていました。やはり正史でないとはいえ、TV版で死亡したキャラは使いづらいのでしょう。

 作品によって運命が大きく変わったキャラといえば、『機動戦士Zガンダム』に登場したベルトーチカ・イルマを思い出します。

『Z』でアムロが戦場に戻るきっかけを作った女性で、その後、恋人同士となりました。あまり周りを気にしない性格が幸いして、作品ではトラブルメーカー的な立場になっています。しかし、その性格も徐々に和らぎ、再登場した時はシャア・アズナブルのダカール演説をサポートするという行動力のある活躍を見せました。

 その後、アニメでは『機動戦士ガンダムUC』で、フリーランスの情報屋として登場しています。この間にアムロとは別れており、その理由については富野由悠季監督の小説『機動戦士ガンダム ハイ・ストリーマー』に書かれていました。

 ところが、同じく『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を舞台とした小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』では、TVに引き続いてアムロの恋人として登場、彼の子供を身籠もっているヒロイン的な立ち位置にいます。

 この異なる展開には理由がありました。もともと劇場版では『ベルトーチカ・チルドレン』の構成通りに進む予定だったのが、「ガンダム映画化委員会」から「アムロが子供を持つことでヒーロー性にかけてしまう」と指摘されたため、その座を新たに設定されたチェーン・アギに譲ることになったのです。劇場公開当時、この2つの小説版がほぼ同時に発表されていました。

 筆者としては、父親になるアムロの活躍も見て見たかったので、このプロットが廃案になったのは惜しいことだったと感じています。もしも、『逆襲のシャア』がリメイクされるようなことがあれば、ベルトーチカ版が見たいという人も少なくないのではないでしょうか?



ヤザン・ゲーブルが表紙に描かれるスピンオフコミック『機動戦士ガンダムMSV-Rジョニー・ライデンの帰還 18』(KADOKAWA)

(広告の後にも続きます)

いつの間にか消えた敵役、意外な「その後」

 アニメでの敵役はだいたい作中で倒されてしまうものですが、なかにはいつの間にかフェードアウトしてしまうキャラも少なくありません。そういう点では、アニメでは憎らしいほど強敵だったのに、いつの間にか途中退場してしまったキャラに、『Z』に続けて続編の『機動戦士ガンダムΖΖ』でも敵役として登場したヤザン・ゲーブルがいます。

 TVアニメでは『ZZ』で、ゲモン・バジャックの作った作業用MSゲゼ(2号機)で敗れたところで退場していました。しかし、アニメと同時期に出版された小説版『ZZ』では、マシュマー・セロを加えたトリプルゲゼに乗ってアフリカでガンダムチームと交戦、その戦いにも敗れた後、砂漠の民としてしばらくの間は過ごすことを決めています。

 また、マンガ『英雄伝説』では、宇宙世紀0094年くらいまでシャングリラコロニーでゲモンのジャンク屋に居候している姿が描かれていました。この時はネオ・ジオン残党から奪ったギラ・ドーガに搭乗しています。

 昨今では、『ガンダムエース』に連載中のマンガ『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』の劇中でヴァースキ・バジャックという偽名で、地球連邦軍のMS中隊「ナイトイエーガー」の隊長として活躍していました。

 作中ではヤザンとは名乗っていないものの、性格や過去の出来事から考えると間違いないでしょう。搭乗MSは違うものの、あいかわらず「海ヘビ」を愛用しているなど、見せ場の多い役どころです。

『ZZ』途中から消息不明だったキャラというと、イリア・パゾムもそのひとりでした。マシュマーの副官兼監視役でしたが、その死後からアニメでは登場していません。

 マンガ『ダブルフェイク アンダー・ザ・ガンダム』では、シャア率いる新生ネオ・ジオンに参加、レウルーラの艦長としてニュータイプ部隊を指揮している姿が描かれていました。

 最近では、『ガンダムエース』に連載中のマンガ『機動戦士ムーンガンダム』でネオ・ジオンの過激派メンバーとして、指揮官型ザクIVのパイロットとして登場しています。

 この作品ではイリアと同様に、『ZZ』の作中では生死不明のままだったダニー、デル、デューンの「ジャムルの3D」隊のメンバーも登場しました。搭乗しているのは、もともと乗っていたジャムル・フィンと同じく可変型MA(モビルアーマー)のギガッザム。3つの頭部にそれぞれコックピットが存在する3人乗りです。

 こうした敵役が作品内で戦死しないで途中退場することは珍しいので、今後も何らかの作品で再登場する可能性もあるかもしれません。『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場したカリウスなど、今後も意外な媒体で登場するかもしれませんね。