2023年には完結編を控えているアニメ『進撃の巨人』。2013年から放送されてきた本作、OPの雰囲気もどんどん変わっていることに気づいていましたか? 音楽ライターがその変遷をご紹介します。
ド迫力の戦闘シーン作画や声優さんたちの迫真の演技など、原作の物語に加え様々な面からも多くのファンに支持を得ている本作ですが、『進撃の巨人』のアニメをより魅力的にしている要素のひとつにストーリーを彩ってきた音楽の存在も大いにあることでしょう。
重厚な『紅蓮の弓矢』で開幕。人類の勇ましさが表れていた
主人公・エレンを始めとした調査兵団の面々が、壁の中の小さな世界で大事な人たちを守るための戦いの物語でもあった本作。そのアニメ主題歌と言えば、やはり初代のLinked Horizon『紅蓮の弓矢』を思い浮かべる人も多いことでしょう。
大迫力のサウンドとドイツ語なども交えた歌詞で、作品の世界観をこれ以上ない程に見事に描ききったこちらの楽曲。Linked Horizonはこの楽曲で初のNHK紅白歌合戦にも出場し、アニメと併せ幅広い世代にその存在を知られることともなりました。
その大きな特徴としては、やはり物語の舞台でもある中世ヨーロッパを思わせる調査兵団の雰囲気を投影した、勇猛かつ壮大な重厚感を感じさせるオーケストラ楽曲です。
小さな壁の中で暮らす人々は非力で、到底自分たちの何十倍も大きな巨人には叶いません。それでもいつかこの巨人を殲滅し、人類の勝利と平和を掴むために。それを目指すエレンや調査兵団たちの気概が、主題歌にも大いに反映されていました。
その二つの要素が、これまでの『進撃の巨人』のアニメ主題歌に関する重要なポイントであったとも言えるでしょう。
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勇ましさから“困惑”や“混沌”へと変化した『僕の戦争』
しかし本作の主題は、ちょうどアニメ4期からのストーリーで大きな転換点を迎えます。
巨悪であった巨人は、実は自分たちと紙一重の存在であった事。巨人の力を内包したパラディ島に住むエルディア人全体が、世界中から迫害される人種であったという事。
エレンたちの悲願であった壁の外の世界。人生で初めて目の当たりにした大海原の向こうで彼らを待ち受けていたのは、これまでの比にならないほどの苦難の連続でした。
自分は何のために、一体誰と戦うべきなのか。一人ひとりの正義が問われ始めるアニメ4期からの物語の変化が、今作を彩る主題歌にももちろん反映されています。
アニメ4期1作目のオープニング主題歌となった神聖かまってちゃん『僕の戦争』には、楽曲タイトルから非常にストレートなメッセージが込められていますね。今後物語においての戦いは「僕たちの」ではなく「僕の」戦争であるという、非常にパーソナルな要素が内包されているようにも感じられます。
また歌詞や公式MVも、アニメの先の展開を如実に反映した楽曲として、ファンの間でも大きな注目を浴びています。
その変化からは、転がり始めてしまった運命に対するエレン達の「困惑」「混沌」が、ひしひしと感じられることでしょう。
巨人という未知の存在との戦いが、人と人の正義のぶつかり合いという、よりリアルで現実世界にも肉迫した戦いへ。
そんな物語のテーマの変遷が、本作の主題歌にも明白に現れているのは非常に興味深い点とも言えますね。