『しわ』

スペインのパコ・ロカ氏による同名マンガを映画化した『しわ』。そのシンプルなタイトル通り、老人たちを主人公に「老い」をテーマにした物語の渋くて心に残るアニメです。自身も70代後半の老境で同作に出会った高畑監督は「アニメーション映画の持つ可能性がまたひとつ広がった」「映画「しわ」に心から敬意を表します」と絶賛コメントを残しています。

元銀行員で、養護施設に入ったエミリオは、さまざまな人生を送ってきた仲間と出会い、そこでも人生を楽しもうとします。しかし、ある時、自分がアルツハイマーだと知ってしまい…。



DVD『しわ』
via DVD『しわ』
アニメだからこそできる、気持ちはまだ若いままのつもりの老人たちや、過去と現在が混同されている現実認識の描写など、「親や自分もいつかこうなるのか?」とハッとさせられる要素が多い作品です。

しかし、けっして老いを否定的に描いているわけではなく、どう受け入れていけばいいのか、また過去の思い出が自分を救ってくれるということも教えてくれます。年を取るたびに定期的に見返したくなる映画と言えるでしょう。

(広告の後にも続きます)

『ディリリとパリの時間旅行』

フランスのアニメーション作家ミッシェル・オスロ監督は、前述の『キリクと魔女』の日本公開時に高畑監督が翻訳・演出を手掛けて以降、彼と親交がありました。そしてジブリは『アズールと明日マール』『夜のとばりの物語』など、継続してオスロ監督作品を日本に広めています。そのなかでおすすめしたいのが、2019年の最新作『ディリリとパリの時間旅行』です。
20世紀初頭、「ベル・エポック」時代のフランスが舞台で、ニューカレドニアからパリにやってきた少女・ディリリが、市内で起きている少女誘拐事件を解決すべく奔走する物語。

シンプルでわかりやすい活劇エンタメ要素もありつつ、「ベル・エポック」時代の小ネタや主人公に協力する当時を彩った天才、キュリー夫人やパスツール、ピカソ、ボードレール、モネらが次々登場するのも面白い点です。



DVD『ディリリとパリの時間旅行』
via DVD『ディリリとパリの時間旅行』
時の写真をトレースした忠実かつ幻想的な背景のなかで、切り絵風の2次元キャラたちが細かく動き、たまにカメラワークを感じさせる大胆な3D的な演出もあるなど、独特なアニメーションが全編を彩ります。

エンタメ、アートとしても楽しめるのですが、悪役が「男性支配団」という直接的に家父長制を重んじる旧体制的な白人男たちで、劇中で搾取されているのは女性や子供や有色人種といういまだ消えない社会問題も真っ向から描いており、考えさせられます。アニメだからできる、華々しくも恐ろしい過去のパリを忠実に、かつ独自視点もいれて再現した意欲作です。

世界各国の映画に通じているジブリ作品。これらの影響が作品に深みを与えてるのでしょう。
映画を知るとよりジブリ作品の本質を知ることができるのかもしれません。

(執筆:今泉)

■やはり偉大…『ラピュタ』は 『銀魂』に影響を与えた!?空知英秋とジブリの深い関係
https://numan.tokyo/anime/8Fh8I
■梶裕貴、『千と千尋』の湯婆婆に名前を取られる!?ジブリ公式との絡みにほっこり…
https://numan.tokyo/anime/P1VBH
■知ってた?『もののけ姫』“コダマ”の噂。実はトトロと関係が…
https://numan.tokyo/anime/uVubk