著:二ノ宮知子『のだめカンタービレ』第25巻(講談社)

【画像】大人の関係シーンに衝撃を受けたアニメ(4枚)

「男女の関係」の描き方も作品のテイストによって実にさまざま

 マンガやアニメ作品で描かれる恋愛模様の醍醐味は、なんといっても付かず離れずの駆け引きにあります。両思いであることは分かっていても、一向に関係が進展しない、だからこそ余計にその先が気になってしまうのが読者の心理です。

 こうした、ある意味においてはイノセントなラブコメ作品のなかにはある日突然、第一線を越えて「大人の関係」が描かれ、読者に衝撃を与えた名作たちが存在します。この記事ではアニメ・マンガで突如描かれた大人の関係シーンを特集。その時の衝撃をプレイバックしていきます。

『めぞん一刻』で五代くんと響子さんが…まさかの?

 ふたりの関係の進展のなさに読者がやきもきしっぱなし、そんなラブコメのど傑作といえば高橋留美子先生の『めぞん一刻』です。主人公の五代裕作とアパート「一刻館」の管理人である音無響子さん、そしてアクが強すぎる一刻館の住人たちによる恋愛狂騒劇です。

 ヒロイン響子さんは亡き夫への想いを引きずっていながら、五代が他の誰かとデートしようものならヤキモチを焼いてしまう性分。五代はそんな彼女にふりまわされっぱなし。お互いに自分の気持ちを素直に伝えられないまま時だけが流れていきます。

 ある日のこと、五代と同じく一刻館の住人である朱美さんがラブホテルから出てきたという話を鵜呑みにした響子さんは烈火のごとく五代に詰め寄り、ふたりの間には過去最大の亀裂が入ります。この誤解をとくべく五代が「あなたしか抱きたくない」という直球すぎる告白をし、事態は急展開。ずっと自分の気持ちを清算したかった響子さんは五代とホテルに向かうことを決意します。

 まさか『めぞん一刻』でこのようなシーンが描かれるとは。あまりにピュアな恋愛模様が描かれていただけに青年誌連載であることを忘れていました。なお五代はこのとき響子の亡き夫のことがふいに頭をよぎり、残念ながらうまくはいきませんでした。『めぞん一刻』がすれ違いラブコメから大人のラブストーリーへと転換した瞬間であることは間違いありません。

ペットとご主人…ではなかった『のだめカンタービレ』

「大人の関係」があまりにもさらりと描かれたのは二ノ宮知子先生の『のだめカンタービレ』です。ぎゃぼーなヒロインの「のだめ」こと野田恵とオレ様系の千秋真一のふたりが主人公の音大、そしてオーケストラ楽団を舞台にしたラブコメディ。TVドラマも大ヒットしました。

 とにかく私生活がだらしないのだめのピアニストとしての才能に惚れ込んだ千秋は、彼女の部屋の掃除からシャンプーに至るまで身の回りの世話を焼きます。そんなふたりの関係は子供と保護者、もっといえばペットとご主人といったところ。少なくとものだめは千秋になついてはいますが、千秋は彼女をどう思っているのかは明示されません。それでも後ろから千秋がハグしたり、当然のごとくキスしたりと徐々にふたりが恋愛関係であることが明かされていきます。

 とりわけ「Lesson 123」ではのだめが千秋の部屋にあがりこみ「泊まっていってもいいですよね?」など柄にもなく艶やかに迫り、翌朝には上裸の千秋と、シーツにくるまっているのだめが描かれます。どうやら結構前から「そういう関係」であることが黙説法で示されたので、びっくりした読者も多かったのではないでしょうか。

ラブコメではないが…ジブリでも! 『風立ちぬ』

 ジブリ映画、とりわけ宮崎駿作品において男女の関係が描かれることは非常に稀です。『もののけ姫』などでは一応、アシタカとサンの男女関係を記号的に示す演出がなされているようなのですが、かなり直接的に描かれたのは2013年公開『風立ちぬ』でしょう。

 主人公・堀越二郎と妻・菜穂子の儚くも尊い夫婦としての日々は観客に深い感動を与えましたが、一方で「宮崎駿作品」ではまずお目にかからない「夫婦生活」の描写が挿入されます。結核を患っている菜穂子から「きて」と布団に誘う場面はどきりとさせられました。自分に残された時間が少ないことが分かっていからこその発言だったと思うと、余計にこみあげてくるものがあります。

『めぞん一刻』のように、ある日突然せきを切ることもあれば、『のだめカンタービレ』のようにその描写の背後にある関係を想像させるものもあり、はたまた『風立ちぬ』では描写それ自体に深い意味がありました。みなさんのなかでも印象的な一線超えの名シーン、ありますか。