マンガ『GALS!』第10巻(集英社)。「りぼん」誌上での連載内容はいったん完結している

【画像】高校生になってもテンション全開! 連載再開した『GALS!!』

どこから読んでも面白い!超ハイテンションラブコメ

 伝説のコギャルコメディ『GALS!』(著:藤井みほな)は、「りぼん」で1999年2月号から2002年6月号にかけて連載され、『超GALS! 寿蘭』というタイトルでアニメ化、さらにはゲーム化もされ、社会現象を呼んだ大ヒット作です。

 主人公・寿蘭(ことぶきらん)は先祖代々警察官という家庭に生まれた渋谷最強のギャル。そんな蘭がさまざまなトラブルを解決していくハイテンションコメディである本作ですが、一方で当時世間に蔓延していた「ギャル」に対する偏見に一石を投じる社会的な側面もありました。

 「109」に通い詰める綿密な「フィールドワーク」に基づいて描写されたギャルファッションは、連載当初から評価が高く、こと平成から令和に年号が変わった現在においては「資料」としての価値を評価する声も少なくありません。実際、欄外には藤井先生による厚底サンダルやウィッグコレクションの解説など、凄まじく細かい情報が掲載されることもしばしば。

 もちろん、令和の現在から『GALS!』の魅力を若者に解説するためには、そうした目線は分かりやすいかもしれませんが、そこだけを強調すると重要な点を見落としてしまいかねません。

 それは……『GALS!』はマンガとしてめちゃくちゃ面白い!ということです。

 ド派手なギャルファッションや携帯電話の進化、当時の流行語、彼女たちを取り巻く社会情勢も、『GALS!』のあのハイテンションな応酬、そしてメリハリあるストーリーが土台にあってこそ映えるもの。前置きが長くなりましたが、この記事では真正面から『GALS!』のマンガとしての面白さを改めて読み解いていきます。

1話完結の明解さ!超ハイテンションの快刀乱麻

 『GALS!』は基本的に1話完結型なのでどこから読んでも楽しめるようになっています。この方式を採用した理由について、藤井先生は「ひとつの事件がおこって、それを2話3話にのばすのって逆にかったるいし、読者もイラつくかなーとか思って」と第1巻で語っています。

 さらに別のインタビューでは「流行が月ごとに変わるため、反映させるためにも1話でまとめた」という旨を語っています。時事性とエンタメ性を両立した『GALS!』は、同時代を生きる少女たちを夢中にさせていきました。

 1話のなかで事件が発生して解決する構成を実現するには寿蘭のキャラクターが不可欠です。気づけばハチ公の上に登っている、勝手にファミレスで人のものを食べる……そんな自由奔放な蘭の圧倒的なハイテンションが物語の機動力です。「現場」へと現れては快刀乱麻ぶりを発揮してしまうのです。相手がストーカーであろうと、学校の教師であろうと、ひるむことなく立ち向かう彼女は間違いなくヒーローでした。

タツキチという最高のギャル男

 明快さだけを強調すると、今度はギャル版「水戸黄門」のように思われてしまうかもしれませんが、しっかり「ラブコメ」としても読者を楽しませてくれるのが『GALS!』です。親友の山咲美由は蘭の兄である大和と真剣合法恋愛中、また同じく親友で優等生の星野綾と超絶イケメン乙幡麗とのやきもきさせる恋愛関係もしっかり描かれます。そして、なんといっても「町田のブラック」こと蘭の彼氏タツキチです。

 蘭に負けぬハイテンションにして、困った人がいれば真摯に相談に乗り、また蘭がピンチのときには町田から渋谷まで自転車で駆けつけてくれる頼りがいのあるギャル男。普段は闊達とした蘭ですが、タツキチ登場以降は不器用ながらも自分の気持ちと向き合う姿も描かれます。

 物語もクライマックスとなるコミックス9巻から10巻にかけては、それまで溜め込んでいたかのようなラブコメ要素が爆発。渋谷を代表するバカップルの蘭とタツキチのすれ違いにこんなにも胸キュンすることになるとは、果たして読者の誰が予想できたでしょうか。携帯が水没して連絡が取れないなど、当時の「あるある」がしっかりストーリーに寄与する構成も見事でした。

『GALS!』のマンガとしての魅力では、他にも池袋のギャル本多マミとのギャルの矜持(きょうじ)をかけたライバル関係、「2位」こと麻生裕也の絶妙な立ち位置など、見どころは1話のなかにこれでもかというほど凝縮されているのです。この隙のないエンタメ性は時代を超越し、いずれは「スーパー歌舞伎」にもなり得る……そう思えてなりません。

 そして、2019年より続編となる『GALS!!』が「マンガMee」にて連載中。高校を卒業した蘭たちが変わらぬハイテンションで暴れています。「ギャル」は、不滅です。