炭治郎の育手であり、元・水柱の鱗滝左近次 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

【画像】「元柱」たちの言葉が炭治郎たちを成長させる名シーン(5枚)

指導者としての厳しく優しい名言

『鬼滅の刃』に登場する最強の剣士たち、「柱」。現役の9人のメンバーだけでなく、歴代の「元柱」たちも非常に魅力的です。戦いのなかで散っていったり、年老いても後継を育成する「育手」として活躍したり……今回はそんなかっこいい元柱たちが残した名言を紹介します。

鱗滝左近次「水はどんな形にもなれる」

 炭治郎の「育手」である、元・水柱(水の呼吸の柱)の鱗滝左近次は、常につけている天狗のお面と、指導者としての厳しく、時に優しい人柄で人気です。端的ながらグッとくる「判断が遅い」「よく、生きて戻った」などのセリフが有名ですが、今回紹介するのは炭治郎の成長に大きく役立った名言です。

「水はどんな形にもなれる 升に入れば四角く 瓶に入れば丸く 時には岩すら砕いてどこまでも流れて行く」

 鼓を打つことで屋敷の部屋を回転させ操る響凱の血鬼術に苦戦する炭治郎は、この鱗滝の言葉を思い出します。「水の柔軟性を活かす」考え方を活かした結果、彼は怪我が痛まない体の動かし方を身につけ、その場面に適した「水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫・乱」で勝利することができました。

「水の呼吸」の汎用性を的確に表現した歴戦の剣士らしいセリフで、炭治郎がその後「ヒノカミ神楽」を極めていく際にも大きく役立っていると考えられます。

桑島慈悟郎「ひとつのことしかできないなら それを極め抜け」

「那田蜘蛛山編」で善逸が下弦の伍・累の兄蜘蛛と戦っている最中に思い返すのが、「育手」の元・鳴柱(雷の呼吸の柱)桑島慈悟郎の言葉の数々でした。蜘蛛になる毒を食らって心が折れかけていた善逸はいつものように眠ったような状態になりますが、そこで桑島から鍛えられた日々を回想します。

「雷の呼吸 一ノ型 霹靂一閃」しか使えない善逸を奮い立たせたのが、

「いいんだ善逸 お前はそれでいい 一つできれば万々歳だ 一つのことしかできないなら それを極め抜け 極限の極限まで磨け」

というセリフです。善逸はダメな自分を見捨てずに厳しくし続けてくれた桑島のためにも、ひとつの技を極限まで叩き上げた「誰よりも強靭な刃」となることを決意、満身創痍ながら兄蜘蛛を撃破しました。

 善逸と桑島の絆はとても深く、元柱として残した言葉の数々はその後も善逸をどんどん成長させていきます。そして、桑島が最後に善逸に残したセリフは、涙なしでは読めません。



カナエの優しい言葉がカナヲに「きっかけ」の発端を与える番外編が収録された『鬼滅の刃』7巻(集英社)

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元柱としての人格を見せた手紙

胡蝶カナエ「きっかけさえあれば人の心は花開く」

 元花柱(花の呼吸の柱)にして、歴代の柱のなかでも一番優しい性格をしているのではと思えるのが、蟲柱・胡蝶しのぶの姉で、故人となった胡蝶カナエです。タレ目の優しい顔で、鬼殺隊に入った理由も家族を殺された復讐より「人を、そして鬼も救いたい」という思いからでした。

 そんなカナエは単行本7巻に収録されている番外編、しのぶの継子・栗花落カナヲの回想で初めて本格的に生前の姿が描かれます。

 胡蝶姉妹に拾われるも、幼少期からの虐待の数々で感情を失っていたカナヲ。自分で物事の判断もできない彼女を危なっかしいと心配するしのぶに対し、カナエはそれなら銅貨を投げた裏表で決めたらいいと提案します。そんなに重く考えなくていいとニコニコ顔の彼女は、カナヲに「きっかけさえあれば人の心は花開くから大丈夫」と優しくささやくのでした。

 この言葉通り、カナヲは「蝶屋敷編」での修行後、炭治郎から優しい「きっかけ」をもらい、心のままに生きていくことを決めて成長していきます。

煉獄槇寿郎「杏寿郎は私などと違い素晴らしい息子だった」

「無限列車編」で上弦の参・猗窩座と戦って死んだ炎柱(炎の呼吸の柱)・煉獄杏寿郎の先代で実の父・煉獄槇寿郎。かつては誇り高き剣士だった彼は、愛する妻を失い、自分の能力の限界も知ったことで自暴自棄になって引退し、酒浸りの毎日を送っていました。杏寿郎の死後、煉獄家にやってきた炭治郎にも悪態をつき殴りかかるなど、第一印象は最悪なキャラでしたが、その後杏寿郎が遺した父を思う言葉を聞いて、心を改めるようになります。

 その後、「遊郭編」の炭治郎の回想で、槇寿郎が炭治郎に謝罪の手紙を送っていたことが明らかになりました。そこには「杏寿郎は私などと違い素晴らしい息子だった。私が教えることを放棄した後でも炎の呼吸の『指南書』を読み込んで鍛錬し柱となった(中略)杏寿郎も千寿郎も立派な子だ」と、ふたりの息子を思う言葉が記されていました。

 この手紙には自分の過去の過ちを冷静に認め、息子たちや炭治郎も素直に称賛する内容が書かれています。ほかのキャラとは違う形ですが、槇寿郎も柱にふさわしい強い心を持っていたことがわかる場面でした。

 そもそも杏寿郎に鬼殺隊をやめるように言ったのも、これ以上家族を死なせたくないからであり、息子と同じく優しい性格の持ち主でもあります。その後、最終決戦で産屋敷家を守る時の槇寿郎は、完全に元柱としての誇りを取り戻しており、読者の胸を打ちます。

 今回はアニメ化されている範囲で、元柱たちのセリフを紹介しましたが、その後の彼らも数々の名言を残しています。百戦錬磨の誇り高き精神が垣間見える名ゼリフに、今後も注目です。

※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記