ハマー・フィルムの名作が元ネタ?「vsヴァニラアイス戦」決着シーンが描かれる『ジョジョの奇妙な冒険 第3部』14巻(集英社)
【画像】『ジョジョ』に影響を与えた? ファン必見の名作映画たち(6枚)
宇宙に放り出されたカーズ様の元ネタは?
2011年に独自の評論本「荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論」を発表するなど、映画好きであることをたびたび公言している荒木飛呂彦先生は、代表作『ジョジョの奇妙な冒険』にも数多くの映画ネタを登場させています。有名な例だと、第5部「黄金の風」には随所に『ゴッドファーザー』を思わせる要素(とくに最終エピソード「眠れる奴隷」の冒頭など)が盛り込まれていました。今回はそんな『ジョジョ』のなかでも、特に印象的な映画元ネタと思われる場面を紹介します。
『エイリアン2』……第2部「シュトロハイムの胴体が真っ二つ、カーズが宇宙に放出……」
『ジョジョ』第2部の人気キャラ、ナチス軍人のシュトロハイムは、サンタナとの戦いで一度死んだと思われるものの、自身を最新鋭の機械の体に改造し復活します。そして、「エイジャの赤石」を奪いに来た柱の男・カーズと対戦しますが、カーズの「光・流法(モード)」の高速回転する刃で胴体を真っ二つにされてしまいました。
この場面は、1986年公開の大ヒット映画『エイリアン2』のクライマックスでアンドロイドのビショップ(シュトロハイムも半分人造人間)がエイリアンクイーンの攻撃で体を両断されてしまったシーンのオマージュと思われます。ちなみに第1部のツェペリさんが体を切断されてしまう場面も『エイリアン2』に影響を受けていると考えられます。
そして、カーズが噴火によって宇宙空間まで飛ばされてしまう有名なシーンも、『エイリアン2』のクイーンの倒し方に似ているといえそうです。
『吸血鬼ドラキュラ』……第3部「ポルナレフvsヴァニラアイス戦の決着」
第3部の終盤、エジプトのDIOの館までたどり着いた主人公一行は、DIOの側近で自身も吸血鬼化したスタンド使い・ヴァニラアイスと対戦します。
何もない空間から現れ、敵を異空間に飲み込むスタンド「クリーム」にてこずり、アヴドゥル、イギーが殺されてしまいますが、ポルナレフは決死の作戦でついにヴァニラアイスに重傷を負わせます。ヴァニラアイスが吸血鬼になっていることを見抜いたポルナレフは、屋敷のドアを破壊し、窓から指す太陽光で彼を灰にして葬り去りました。
この場面は、かつて存在したイギリスのホラー映画の名門会社ハマー・フィルムの代表作『吸血鬼ドラキュラ』(1958年)のクライマックスシーンへのオマージュと思われます。
ドラキュラと対峙したヘルシング教授が屋敷のカーテンを取り払い、窓から指す光へと追い詰めて灰にして殺す場面とそっくりです。ちなみに最初にドラキュラ城を訪れる司書の青年の名はジョナサンであり、ブラム・ストーカーの原作小説『ドラキュラ』自体が、最初は吸血鬼ホラーとして始まった『ジョジョ』に大きな影響を与えているのではないでしょうか。
ドロミテの恐るべきスタンドが仗助を追い詰める第8部『ジョジョリオン』15巻(集英社)
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人ごみのなかから直進するゾンビが……
『メメント』……第6部「3つの物事しか覚えられなくなり、体にラクガキをする徐倫」
第6部の中盤、黒幕・プッチ神父を止めるために刑務所を脱獄することを決意した徐倫(ジョリーン)ですが、主任看守・ミューミューのスタンド「ジェイル・ハウス・ロック」に襲われ、新しい物事を3つまでしか記憶できない絶望的な状況に追い込まれます。攻撃を受けている認識はある徐倫は、忘れないように覚えた情報を自分の体にラクガキするのですが……。
この「vsミューミュー戦」の元ネタは、クリストファー・ノーラン監督の出世作『メメント』でしょう。妻を殺され、自分も新しい記憶が10分しか保持できなくなった男が、犯人の手がかりをタトゥーで自分の体に残して探し続けるという物語です。かなり似せていますが、「新しく覚えられる物事は3つ」という独自ルールを加えた上に、それを打ち破るアイデアまでしっかり見せた荒木先生はさすがとしか言えません。
『イット・フォローズ』……第8部「人から人へ感染し一直線で進んでくるゾンビ」
8部にあたる『ジョジョリオン』で登場した岩人間・ドロミテのスタンド「ブルー・ハワイ」は、本体の体液に触れた人間を意志のないゾンビにして、人から人へとどんどん感染して主人公・仗助を追い詰めるという恐ろしいものでした。ゾンビ化した人間は、どんなケガをしようがおかまいなしに対象へ直進していきます。
この「ブルー・ハワイ」の能力は、2016年に日本公開されたホラー映画『イット・フォローズ』の影響が見て取れます。ある男と性行為をした女子大生が、捕まえた相手を確実に殺す謎の存在「それ」に追いかけまわされるという内容です。
「それ」が襲う対象は性交によって移り変わります。そして「それ」は普通の人間の姿をして近づいてくるので、人ごみのなかにいるほうが危険という場面があるのですが、仗助も作中で似たようなピンチに陥っていました。そもそも『イット・フォローズ』自体が公開時に一部で、「それ」が『ジョジョ』の自動追尾型スタンドっぽい」などと言われていたので、スタンドバトルでオマージュしやすかったのでしょう。
映画が大好きな荒木先生は、ただオマージュするだけでなく斜め上のアイデアを入れて独自の面白さを作り出しています。『ジョジョ』ファンで今回挙げた映画を見ていない方は、ぜひ一度鑑賞してみてください。