俳優がモデルだったニコ・ロビン(中央)ロブ・ルッチ(左)が表紙の『ONE PIECE』44 巻(集英社)

【画像】『ワンピース』キャラのモデルになった俳優たちの代表作(6枚)

ロブ・ルッチの黒帽子のモデルは……?

「映画好き」を公言していて、好きな作品の要素をマンガに盛り込んでいる漫画家はたくさんいます。大ヒットマンガ『ワンピース』の作者・尾田栄一郎先生もそのひとりです。1975年生まれの尾田先生ですが、自身が生まれる前の映画にも詳しく、2011年にはマキノ雅弘監督の『次郎長三国志』全9部作のDVDジャケットイラストも担当するなど、その映画マニアぶりは広く知られています。

 そして『ワンピース』のキャラクターにも、映画俳優をモデルとした人物がたくさんいます。海軍大将の4人を例にとると、赤犬が菅原文太さん、黄猿が田中邦衛さん、青雉は松田優作さん、藤虎は勝新太郎さんがモデルで、顔や喋り方もかなり似ています。

 一方で、言われるまでわからないような、明確に本人に寄せているわけではない俳優をモデルにしたキャラもいます。

ニコ・ロビン……ブリギッテ・ヘルム

 あくまで非公式ですが、麦わらの一味のひとりで歴史学者のニコ・ロビンのモデルは、1920~30年代に活躍したドイツの映画女優、ブリギッテ・ヘルムといわれています。彼女はサイレント時代の名作SF映画『メトロポリス』で労働者たちを導くヒロイン・マリアとアンドロイドの2役を演じたことで知られています。

 映画を政治利用しようとするナチス政権に怒り、スイスに移住して引退したのも有名です。特段見た目が似ているわけではないですが、正義と悪の2面性を持っていた初期のロビンのキャラや、世界政府に反旗を翻す姿勢が重なります。

ロブ・ルッチ……ハーヴェイ・カイテル

 前述のロビンを中心に進む「エニエス・ロビー編」でルフィたちの前に立ちはだかった、世界政府の諜報機関CP9のリーダーがロブ・ルッチです。彼のモデルはハリウッド俳優のハーヴェイ・カイテルと見られています。

 80歳を超えた現在も現役バリバリですが、ルッチのモデルといわれているのは名作『タクシードライバー』で悪役のスポーツを演じた時のカイテルです。確かにスポーツはルッチと同じく、特徴的な黒いハットをかぶっていました。ただスポーツはポン引きで未成年少女のヒモをやっているような小悪党だったので、キャラの設定が似ているわけではありません。顔もわかりやすく似せているわけではないので、言われなければわからないかも知れません。



フランスの名優がモデルのガン・フォール(右)が描かれる、『ONE PIECE』29巻(集英社)

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サンジのモデルは「似せる気もなかった」?

ガン・フォール……ジャン・ロシュフォール

 エネルに乗っ取られる前の空島の「神」だった老騎士ガン・フォールのモデルは、名前の一部もかぶっているように、フランスの名優ジャン・ロシュフォールといわれています。特に参考にしているのは、テリー・ギリアム監督が名作『ドン・キホーテ』を映画化……しようとして頓挫してしまった経緯をとらえたドキュメンタリー『ロスト・イン・ラ・マンチャ』に写し出されたロシュフォールと思われます。

 ドン・キホーテ役に選ばれるも撮影中に椎間板ヘルニアになってしまったロシュフォールは、撮影序盤ではガン・フォールのように甲冑を着て堂々と馬を乗りこなしていました。もともと馬のブリーダーもやっていた彼ですが、このヘルニアのせいで大好きな乗馬もできなくなっています。尾田先生はマンガのなかでは思い切り馬に乗って活躍してほしいと思って、モデルにしたのでしょうか。

サンジ……スティーブ・ブシェミ

 単行本68巻のSBS(質問コーナー)で尾田先生がはっきりサンジのモデルにしたと答えた俳優が、スティーブ・ブシェミです。個性派のバイプレーヤーで、『アルマゲドン』の女たらし学者役などで見たことがある人も多いと思います。

 尾田先生は「モデルというほど似せる気もなかったですが、その人の雰囲気が出せればいいなと思っていた次第」と語っていましたが、それにしてもサンジとは似ていません。サンジが基本的に黒スーツ姿であることから、クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』の登場人物、Mr.ピンク役のブシェミが一番近いモデルと思われます。

 コミカルでスケベな役も多い俳優ですが、年齢や髪形が違うので意外に思えるかも知れません。ちなみに前述のSBSに投稿した読者の方は、サンジのモデルは映画『ロミオ+ジュリエット』のレオナルド・ディカプリオだと思っていたようです。