最後の『ドラえもんズ』となった作品が収録された、『映画ドラえもん のび太とロボット王国/ぼくの生まれた日/ザ☆ドラえもんズ ゴール! ゴール! ゴール!!』DVD(ポニーキャニオン)

【画像】世代によっては知らない? ドラえもんの同級生たち(5枚)

「映画ドラえもん」本編に劣らぬクオリティと人気だったが…

「ドラベースなら聞いたことありますけど……」

 20代男性に『ザ・ドラえもんズ』を知っているかどうか訊ねたところ、このような返事が返ってきました。

『ザ・ドラえもんズ』……時をさかのぼること20年以上前。劇場長編アニメ「映画ドラえもん」の放映では、ドラえもんのロボット養成学校の同級生たちとの冒険譚が同時上映作品として盛り込まれていたのです。そんなロボット養成学校の国際色豊かな同級生たちとのチームが「ザ・ドラえもんズ」です。

 ところが、いつしか彼らの存在はフェードアウト……商品化やメディアミックスも好調であるかのように見えたのですが、2002年の長編『ドラえもん のび太とロボット王国』の同時上映『ザ☆ドラえもんズ ゴール!ゴール!ゴール!!』以降、彼らは姿を消してしまいました。いったい、どうしてなのでしょうか。今回は『ザ・ドラえもんズ』の誕生からフェードアウトまでの軌跡を解説します。

藤子・F・不二雄先生の監修のもと、7人組で誕生

「ザ・ドラえもんズ」とは、ドラえもんを中心としたロボット学校の同級生7人からなる猫型ロボットのチームで、それぞれ国をモチーフにしたキャラクターデザインが特徴です。

 初登場は1995年の映画『2112年 ドラえもん誕生』です。同年発売のゲームソフト『ドラえもん 友情伝説ザ・ドラえもんズ』で本格的に世にお披露目されます。特筆すべきは、原作者である藤子・F・不二雄先生の監修のもと誕生したという点でしょう。

 カウボーイをイメージしたドラ・ザ・キッド(アメリカ)、カンフーの達人ながら女の子の前だと緊張してしまう王ドラ(中国)、普段はおとなしいが丸いものを見るとオオカミ男になるドラニコフ(ロシア)、プレイボーイで一番の怪力であるエル・マタドーラ(スペイン)、ワガハイ口調で怒るとなぜか巨大化するドラメッド三世(サウジアラビア)、運動神経抜群ながら抜けているところがあるドラリーニョ(ブラジル)、そして日本のドラえもんです。

 この7人は「親友テレカ」を1枚ずつ所有しており、固い絆で結ばれているという設定です。「好きなどら焼きの食べ方」など細かい設定も用意されているのですが、今回では割愛させていただきます。

「ドラえもんズは藤子・F作品ではない」?

 彼らがそれぞれの特性やチームワークを生かして大活躍する映画は本編と同じくらいに完成度が高く、1996年の『ドラミ&ドラえもんズ ロボット学校七不思議!?』では、ド派手なアクションにキッドとドラミちゃんとのラブコメ要素をからませ、続く1997年『ザ☆ドラえもんズ 怪盗ドラパン謎の挑戦状!』では、第15回ゴールデングロス賞優秀銀賞を受賞しています。

 その後もドラニコフが主役の『ザ☆ドラえもんズ ムシムシぴょんぴょん大作戦!』、読者公募の新ドラ・ジェドーラ(イタリア)を登場させた『ザ☆ドラえもんズ おかしなお菓子なオカシナナ?』と、順調に続編が制作され、メインターゲットの子供たちからの評判も上々だったといいます。それなのに、どうしてドラえもんズは姿を消してしまったのでしょうか?

 どうやらそこには、別紙壮一プロデューサーの意向が大いに関係してくるようです。『おかしなお菓子なオカシナナ?』までドラえもんズ作品の監督・脚本を務めた米たにヨシトモ氏によれば、別紙プロデューサーは当初より「ドラえもんズは藤子・F作品ではない」と、保守的な態度だったといいます。

 それは、藤子・F・不二雄先生の世界観を大事にしようという想いに裏付けられたもので、1996年に先生が他界してしまったからこそ、別紙プロデューサーは『ドラえもん』を守る「防波堤」になっていたそうです。

 確かに、『ドラえもんズ』は子供たちからの人気は高かったですが、原作ファンからは厳しい意見も寄せられていました。シリーズを継続することは興行的にも可能だったとは思いますが、徐々に作品の時間は短縮され、前述の通り2002年にシリーズは終了してしまうのです。

今でも復活を望む声は多い

 子供たちに親しまれたドラえもんズの面々ですが、2005年にアニメがリニューアルされてからはまったく姿を見せてくれません。この不遇ぶりに復活を希望する署名活動がWeb上で行われ、1400以上もの署名が集まったこともありました。今なお根強いファンが大勢いるのも事実のようです。

 近年では「マルチバース」がエンタメ界でも定着しています。別紙プロデューサーが危惧した『ドラえもん』世界への干渉がない全く別の作品としてなら、復活の可能性もあるのではないかと考えられます。冒頭に登場した『ドラベース ドラえもん超野球外伝』(著:むぎわらしんたろう)のように……。