擬宝珠姉妹と両さんが表紙に描かれる『こちら葛飾区亀有公園前派出所』第162巻(著:秋本治/集英社)

【画像】連載終了後も追加される新作、『こち亀』45周年記念本

感動回が多い! 擬宝珠家登場回にハズレなし!?

 秋本治さんの名作『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の新刊コミックス第201巻が2021年10月に発売され、再び注目を集めています。

 通称『こち亀』の愛称で知られる同作は、亀有公園前派出所に勤務する破天荒な警察官「両さん」こと両津勘吉(りょうつ・かんきち)がその同僚や周辺の人物と繰り広げるギャグマンガ。一方で、涙なしでは見られない「感動回」が多いことでも知られている人気作です。

『こち亀』の感動回を紹介するにあたって、切っても切り離せないのが擬宝珠(ぎぼし)家ではないでしょうか。擬宝珠家は、老舗高級寿司店「超神田寿司」を経営しており、100歳を超えていまだ現役の夏春都(げぱると)を筆頭に、伝統の味を守りつづけています。実は、両津家とは親戚の間柄。夏春都は、両さんの祖父の妹なのです。両さんはそんな事実はつゆ知らず、葛飾署の巡査で超神田寿司の長女・纏(まとい)と結婚寸前まで関係が進んだことがありました。

 そんな擬宝珠家のキャラクターが登場する回はファン人気が高く、感動回が多くあります。なかでも、纏の妹で幼稚園児の檸檬(れもん)が登場するエピソードはとりわけ人気です。この記事では、両さんと檸檬にまつわる感動回をTVアニメ版から3作ピックアップ。普段はダメ人間なのに、檸檬のこととなると人格や性格が変わる両さんの魅力と合わせて紹介します。

アニメ第209話「スーパー幼稚園児 檸檬」

 まずは、檸檬が初登場したエピソード「スーパー幼稚園児 檸檬」。纏は葛飾署で同僚と手作り弁当を食べる会を開こうとしますが、弁当を忘れてきてしまいます。そこに忘れた弁当を持って登場したのが妹・檸檬でした。

 纏や両さんが檸檬を迎えに行くと、開口一番「お前が話に聞いていた、両津家の男のなかでも最低な両津勘吉か?」「顔も喋り方も下品だなぁ」と言い、両さんとは印象が最悪の出会いを果たします。

 檸檬は纏によると「100年に1人」と言われるほど優れた味覚の持ち主。そこで、両さんが以前に横柄な主人とケンカしたラーメン店に連れていくと、檸檬はラーメンの味の欠点をズバズバ指摘します。「お見それいたしました!」と横柄だった主人は頭を下げ、すっかり気が良くなった両さんは檸檬のことが大好きになったのです。

 両さんは檸檬を「超神田寿司」に送り届けますが、檸檬が大事にしていた靴が「汚れていたし小さくなって履けないから」という理由で捨てられていました。檸檬はそれまで表情ひとつ変えず大人のように振る舞っていましたが、涙を流してショックを受ける幼稚園児らしい一面を見せます。両さんは檸檬を抱きかかえ、懸命に靴を探し始めるのです。

 道で会ったゴミ清掃員に「今頃は焼却炉で灰になってる」と聞いてもなお「大丈夫だ檸檬! 泣くなよ! 絶対なんとかなる!」とゴミ収集所に大急ぎする両さん。両さんは収集所に到着するとゴミの山のなかに飛び込み、命がけで靴を見つけ出します。再び自宅に送り届けた両さんに「ありがとう勘吉! ばいばーい!」と笑顔で言う檸檬に「檸檬がこんなに明るく笑うの初めて見たよ」と纏がひと言。檸檬にとって印象の良くない出会いを果たした両さんの印象が大きく変わったエピソードでした。

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「両さんみたいなお父さんが欲しい!」感動シーンだらけの「神回」

アニメ第229話「檸檬の父親参観日」

 普段は大原部長に怒られてばかりの両さんですが、「両さんみたいなお父さんが欲しい!」と頼もしく思ってしまう感動回です。「超神田寿司」にアルバイトに来た両さんを見てうれしそうに笑う檸檬のシーンから物語は始まります。檸檬が両さんのことが大好きな様子が、冒頭からうかがえます。

 ある日、両さんが店に帰ると「父さんの嘘つき!」と言って店を飛び出す檸檬とすれ違います。というのも、幼稚園の父親参観日に出席する予定だった父親がぎっくり腰で出られなくなってしまったのです。そこで両さんが「よし!ワシが代わりに出てやる」と走り去った檸檬を迎えに行きます。

 公園でひとりブランコを漕いでいた檸檬は「え! 勘吉が代わりに来てくれるのか!?」と満面の笑顔。両さんが「ワシが代わりじゃ嫌か?」と聞くと檸檬はうれしそうに首を横に振ります。「だったら家に帰って幼稚園の支度をしろ」と言うと檸檬はブランコの上に立って両さんの胸に飛びつくのです。「はは! 檸檬選手10.0!」と笑うふたり……その姿はまるで本物の親子のよう。バックに流れるBGM「春夏秋冬」がさらに感動を誘います。

 しかし、両さんがいざ授業に出席すると、教室の後方から恥ずかしくなる発言を繰り返し、檸檬は机に顔を伏してしまいます。すると授業の途中、教室の後方ドアからド派手な格好をした、檸檬の同級生・アキラくんのお父さんが入ってきます。両さんとアキラくんのお父さんは知り合いで話が弾みます。

 すると、「アキラのパパかよ、だっせー!」と派手な格好を見た園児たちは大盛り上がり。イジられて嫌そうな顔をするアキラくんを檸檬が気にすると、両さんがアキラくんをいじる園児を「人を洋服や格好で茶化すんじゃねえ!」と叱るのです。「浅草で芸人をやっているんだ。いわばあれは制服だ」「アキラ、お前の親父は立派な仕事やってんだ。お前もプライドをもて!」と言います。本来の授業とは違った良い勉強になり、両さんの立ち振る舞いに檸檬も笑顔で誇らしそうです。

 物語終盤、檸檬を「超神田寿司」に送り届けると、檸檬は纏に「纏が勘吉いらんのなら、檸檬がお嫁さんになってもいいぞ」と言います。ますます檸檬は両さんが好きになったと分かるエピソードでした。