歌詞が読めなくても、擬音だったらみんな歌える!

 かつて、特撮ヒーローものの人気の裏側には、子供たちが思わず口ずさむオープニング・エンディングソングの存在がありました。その中でも、やけに擬音が印象に残る歌がありませんでしたか? 「あの擬音は何だろう?意味あるのかな?」そう思ったかもしれません。そこで今回は“擬音”が耳にこびりつく特撮ソング4選を掘り下げて紹介します。

【動画】実際に擬音ソングが聞ける、名作特撮の第1話

『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975~77)  エンディング曲「秘密戦隊ゴレンジャー」の擬音「バンバラ バンバンバン」



『秘密戦隊ゴレンジャー』主題歌レコード(コロムビアレコード)

「スーパー戦隊シリーズ」の第1作目『秘密戦隊ゴレンジャー』のED曲で、独特な擬音使いの代表格といえる曲です。冒頭部分はいきなり「バンバラバンバンバン バンバラバンバンバン バンバラバンバン バンバラバンバン バンバラバンバンバン」と、クセの強い擬音が連続しています。

 作曲はアニメ・特撮ソングの巨匠・渡辺宙明先生。この曲には次のようなエピソードがあります。

 曲ができあがった後、レコード会社から「冒頭部分をもっと面白くできないか?」と相談されたのです。歌詞はもうできているので困った末に、ジャズでおなじみの「ドゥビドゥビ」「パヤパヤ」と意味のない音節を発音して歌うスキャットが浮かんで、あの“バンバラバンバンバン”をという擬音付け足したそうです。これがチビっ子たちの耳にこびりつき、みんな「バンバラバンバンバン」と歌うように。OPよりも有名なED曲になったと言われています。

 ここでちょっと驚く発見が。数十年ぶりにレコードの歌詞カードを見てみると、なんとOP曲「進めゴレンジャー」の冒頭にも…「バンバラ バンバンバンバンバラ バンバンバン……」と書いてありました。ただ、曲を聴いても、この「バンバラ バンバンバン」は歌われていません。この歌詞カードのみの擬音は謎です。

『円盤戦争バンキッド』(1976~77)オープニング曲『駆けろバンキッド』の「バンバン!バンバン!バババエンバンババンバン!」



当時のUFOブームから制作されたヒーロー『円盤戦争バンキッド』(東宝レコード)

 続いては、少しマニアックなヒーロー特撮『円盤戦争バンキッド』のオープニング曲です。「バンバン!バンバン! バババエンバンババンバン!」と始まるこの曲の歌詞はヒーローの名前にひっかけた語呂遊びで、「ジャンジャンジャンジャン ジャンボーグ!」と歌う『ジャンボーグA』も同じ感じでした。商品名を歌うCMソングにもよくあるテクニックですね。この「駆けろバンキッド」は疾走感がある速いテンポで歌いやすく、子供たちに人気でした。

『宇宙刑事シャリバン』(1983~84)挿入曲「SON OF SUN ~太陽の息子~」の「ダイババダダ ダイババダダ」



『宇宙刑事シャリバン 音楽集』』(コロムビアレコード)

 「SON OF SUN ~太陽の息子~」は『宇宙刑事シャリバン』本編では2度しか流れていない挿入曲ですが、人気曲です。冒頭から何度も歌われる擬音「ダイババダダ」、これは何でしょう? 調べましたが明確な答えが見つかりませんでした。

 ただ、似ている歌詞が出てくる歌があったと気づいたのです。『愛の戦士レインボーマン』のオープニングテーマ「行けレインボーマン」の歌詞に“ダイバダッタの魂やどし”とあります。ダイバダッタとは釈迦仏の弟子の“提婆達多”のことですが、タイトルにある「太陽の息子」と紐付けているのでしょうか。

 深読みかもしれませんが、ダイババダダと歌う擬音混じりの言葉はかなり耳に残ります。とても言いにくい歌詞なので歌っている串田アキラさんも「コレを歌うときは緊張する」と話していたとか。

『超人バロム・1』(1972) オープニング曲「ぼくらのバロム・1」の「ブロロロブロロロブロロロロ~~~!」



『超人バロム・1』(ソノラマエース)。原作は『ゴルゴ13』で有名なさいとう・たかを先生

 これも擬音が耳にこびりつく特撮ソングのヒット作で、日本コロムビア「ゴールデンディスク賞ゴールデンヒット賞」受賞曲です。「ブロロロロー!」や「ルロルロロ~」「キューンキュン」など擬音乱発で「変な歌」と笑いそうですが、これは本編シーンを擬音で表現している、実に巧妙な歌詞です。

 バロム・1が乗るマシン、マッハロットの爆音「ブロロロロー!」、敵の魔人ドルゲが登場するときの声「ルロルロロ~」、健太郎と猛が腕をクロスさせ変身するときの音「キューンキュン」など、作中の耳に残る擬音がそのまま反映されているのです。

『マジンガーZ』などで知られるアニソンの帝王こと水木一郎さんが最初に“雄叫び”をあげた歌がコレ。当時はレコーディングで「こんなの恥ずかしくて歌えない」と渋ったそうですが、放送が始まって、近所の子供たちが歌っているのを聴いて嬉しかったと語っています。現在ではコンサートで、昔よりもパワー全開で「ブロロロロ~ッ!」と叫んでいます。

 擬音を歌詞にするメリット、それは「子供が憶えやすくて歌いやすい」ということに尽きるでしょう。曲を聴きたいがために番組を見てくれれば、人気・視聴率アップにもつながりますから。今回は特撮ソングから取り上げましたが、アニメでも擬音を用いた有名歌は多数ありますので、いずれ取り上げたいと思います。