『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

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鬼より怖いのは、人間の負の感情…!?

 毎週日曜日夜放送中のTVアニメ『鬼滅の刃 無限列車編』(全7回)。そして2021年12月5日からはTVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』が放送開始と、『鬼滅』ファンはワクワクドキドキが止まりませんね。

『鬼滅の刃』で主人公、竈門炭治郎も属する鬼殺隊が戦う相手は、人間を喰らう鬼たちです。そんな鬼の強さは喰らった人間の数で決まるとされています。つまり、『鬼滅の刃 無限列車編』で炎柱・煉獄杏寿郎と戦った上弦の参・猗窩座(あかざ)ほどの強い鬼ともなると、いったいどれだけの人間を喰らったのか……と、ゾッとします。

 しかし原作を既読の方はご存じの通り、猗窩座は鬼になる前、人間であった時に、同じ人間からひどい目にあわされているのです。猗窩座以外にも、人間からひどい仕打ちにあったことが鬼になるきっかけになっている場合もあります。本当に恐ろしいのは人間なのかもしれません……。

 この記事では、本当に怖いのは鬼ではなく、人間なのではないかとゾッとする4つのエピソードをご紹介します。

※この記事には、まだアニメ化されていないシーンについての記載があります。原作マンガを未読の方はご注意ください。

妬みによって、大切な人を奪われた猗窩座

 炎柱・煉獄杏寿郎と戦った上弦の参・猗窩座は、強さにしか価値を認めない鬼です。彼は弱者をとことん嫌い、「至高の領域」と呼ぶ最高の強さを追及しています。

 人間時代の猗窩座は、体の弱い父親や恋人を守るために強くあろうとする青年でした。彼の名前が狛治(はくじ)であることを知り、「お社を守っている狛犬」と同じで、「何か守るものが無いと駄目なんだよ」と言ったのは、彼の武道の師匠です。

 しかし、彼が罪を犯し、何度罰せられてでも守ろうとした父親は息子の将来を案じ、心を痛めて自殺してしまいました。自暴自棄になった狛治は武術道場を営む慶蔵(けいぞう)に拾われ、病弱な娘、恋雪(こゆき)の世話をすることになります。

 そして月日が流れ、恋雪との結婚が決まり、人生をやり直し、父親が願った「真っ当な生き方」が自分にもできるかもと期待した狛治でしたが、その思いは突然、断ち切られるのです……。

 犯人は、道場の隣にある剣術道場の輩たちでした。彼らは、慶蔵が助けた老人から道場と土地を譲り受けたことが気に入らず、かと言って直接やり合っても狛治や慶蔵にはかなわないと考え、卑怯にも井戸に毒を入れたのです。狛治が父親の墓に結婚の報告をしに行った短い時間に、慶蔵と恋雪の命は奪われました。

 やっとつかみかけた幸せは、人の妬みのせいで、狛治の手からこぼれ落ちたのです……。

命すら軽んじられた上弦の陸兄妹

「遊郭編」で音柱・宇髄天元と炭治郎らが戦う上弦の陸・妓夫太郎(ぎゅうたろう)と 堕姫(だき)の兄妹は吉原の最下層に生まれ、母親からも疎まれて育ちました。

 容貌や声の醜さのせいで、人々から忌み嫌われた妓夫太郎でしたが、その容貌とケンカの強さは取り立ての仕事にはうってつけで、やっと自分の居場所を見つけます。一方、妹の梅(=堕姫)は幼い頃から周囲の大人を圧倒するほど美しく、妓夫太郎にとっては自慢の妹でした。

 ところが、梅が13歳になったある日、客の侍に妓夫太郎を侮辱されて腹を立てた彼女は、持っていたかんざしで侍の目玉を突き、失明させたのです。怒った侍は彼女を縛り上げ、生きたまま焼くというひどい仕打ちをしたばかりか、ひん死の梅を抱いて慟哭する妓夫太郎にも斬りつけました。女将が、梅のついでに、乱暴で問題を起こす妓夫太郎を厄介払いしようとしたのです。自分たちを利用するくせに、手を差し伸べることもなく虐げ、命すら軽んじた周りの人間たち……。

 人間に絶望した妓夫太郎と梅の兄妹に救いの手を差し伸べたのは、鬼でした……。

心と体を痛めつけられて逃げ出した伊之助の母

 荒れ山でイノシシに育てられた伊之助は、上弦の弐・童磨(どうま)に実の母・琴葉(ことは)について聞かされるまで母親の記憶はないと思っていました。

 童磨が語ったのは、母が伊之助によく似ていたことや歌がうまかったこと、いつも、ゆびきりげんまんの歌を歌っていたこと、そして、彼女の悲惨な結婚生活についてでした。

 当時17歳か18歳くらいの彼女が童磨の元に来た時、夫によるひどい暴力のせいで、彼女の顔は殴られすぎて原形が分からないほど腫れ、片目は失明してしまったと言います。さらに姑からの執拗なイジメもありました。

「大正コソコソ話」によると、夫は泣いている伊之助のことをうるさいと怒って、乱暴に揺さぶったそうです。妻だけでなく、我が子にまで手をあげるなんて最低です……。自分のことは我慢できても、我が子にまで危害が及ぶのは見過ごせなかったのでしょう。雪の降る中、赤ん坊を抱えて裸足で逃げるほど追い詰められた彼女の心情を思うと心が痛みます……。

心のスイッチが切れた栗花落カナヲ

 元花柱・胡蝶カナエと蟲柱・胡蝶しのぶによって人買いから救われるまで、カナヲには名前もありませんでした。両親が名前を付けていなかったのです。彼らは子供らに食事を与えなかったり、殴ったり蹴ったりの虐待を繰り返し、なかには命を落とす子供もいたようです。

 カナヲは生まれつきの眼の良さで、両親の暴力によって命にかかわるケガを負うのは避けられていましたが、心のほうは、「ある日ぷつんと音がして」、お腹が空いたとか悲しい、苦しいなど、何も感じなくなってしまいました。カナエとしのぶと暮らすようになってからも、カナヲは感情表現や意志表示が苦手で、指示しなければ自分では食事もできない子だったのです。

「親ガチャ」(=どのような親のもとに生まれてくるかで人生が決まってしまうこと)では、完璧なまでに外れを引き、人間の怖さを身に沁みて知ってしまったカナヲ……。それでも姉妹ガチャ、仲間ガチャでは当たりを引いて、優しく強い女性になりました。

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『鬼滅の刃』は鬼と鬼殺隊の戦いだけでなく、それぞれの登場人物の背景がしっかり描かれているため、原作マンガを読むたびに、アニメを見るたびに新しい発見がありますし、深く色々なことを考えさせられますね。

※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記