TVシリーズ『うる星やつら』Blu-ray SET1(ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)

【画像】高橋留美子が描く美少女キャラたち(6枚)

人気ゆえクレームが絶えなかったTVアニメ

 10月14日は1981年にTVアニメ『うる星やつら』が放送開始した日。つまり2021年で40周年になります。

『うる星やつら』は当時「週刊少年サンデー」で連載されていた人気マンガで、高橋留美子先生の連載デビュー作でした。初期はまだ高橋先生が大学生だったため短期集中連載で、大学卒業後に本格的な連載を開始します。初期の頃から人気が高く、いつも初版が数日で売り切れていました。

 それほどの人気マンガだったことから、アニメ化は必然ともいうべき流れだったと思います。もちろん注目していたのはアニメ業界だけでなく、よみうりテレビと円谷プロで実写ドラマとしての企画も動いていました。もしも、この企画が成立していたらアニメ化はおそらくなく、その後の歴史は大きく変わっていたことでしょう。

 本作の放送はフジテレビ系列水曜19時30分からで、これは前番組が『スター千一夜』を中心にした帯番組だったことから、初めてのアニメ枠になりました。水曜19時からの放送は半年ほど前から放送開始したアニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』で、その流れで視聴する家庭も多く、人気の枠となります。ちなみに『Dr.スランプ アラレちゃん』は1986年2月19日、本作は1986年3月19日と、ほぼ同じ時期に放送終了しました。

 注目の作品というものは、その人気に比例してクレームの多いもの。本作も1話からラムの胸があらわになるシーンがあるのですが、事前に局側から警告されたにも関わらずチーフディレクターの押井守さんは「大丈夫」と言って強硬、放送終了後にPTAなどからクレームがあったそうです。ちなみにこの事実を押井さん本人は否定しています。

 この場面は原作マンガにもある重要な場面ですから、カットするわけにもいかなかったのでしょう。当時はビデオデッキを持っている家庭も少なく、シーンとしても一瞬だったので騒ぐほどのことはないと筆者も思っています。ところが、このシーンをピックアップ、コマ送りのような構成で誌面に掲載したアニメ雑誌が当時ありました。

 視聴率は20%前後で好調でしたが、いつも半裸の少女が登場している、登場人物が下品なセリフを言うのを子供がマネをする……などのクレームが寄せられて本作はフジテレビのワースト番組上位の常連でした。そのためか、いつ打ち切りになっても対応できるよう、クールの終わりくらいには最終回を思わせるエピソードが用意されたそうです。

 この他にも、諸星あたる役の古川登志夫さんの声がキャラに合わないという投書も多かったと、後に古川さん自身が語っていました。声優変更を考えたアニメスタッフが高橋先生に相談に行ったところ、「あたるの声は完璧」と言われて続投が決まったそうです。

 このようなトラブルがあったようですが、本作は次第によく知られた人気作から、ブームを生むほどのヒット作へと変わっていきました。

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ヒロインとして不動の人気を誇ったラム

 初期は15分2話形式でしたが、放送が長く続くことが予想されるようになった半年ほど経った第3クールから30分1話形式になりました。この前後くらいから作品に変化がおとずれます。

 もともと本作を製作していた「スタジオぴえろ」は、当時『太陽の子エステバン』と『まいっちんぐマチコ先生』に主力スタッフが割かれており、残ったスタッフが本作を担当していました。徐々に新しいスタッフが集まり、本格的に動き出したのが第3クールからだったそうです。振り返ってみると、確かに初期に比べて、この時期から作画が安定していきました。

 物語の面でも、15分枠では収まりきれなかった押井さんのセンスが目立ち始めたのもこの頃からです。その最たる例が、原作ではモブキャラだったメガネの異例の抜てきでした。強烈な個性でメインキャラを食う雰囲気だったメガネは、声を担当した千葉繁さんの個性的な演技とアドリブから、押井さんが活躍の場を与えたキャラで、難解な長ゼリフを饒舌(じょうぜつ)にしゃべるマシンガントークをたびたび披露しました。

 また、初代オープニング主題歌「ラムのラブソング」は、その後に何度もカバーされるなど、世代を超える名曲です。当時からアニメファンには人気が高く、「アニメージュ」主催の「第4回アニメ・グランプリ」音楽部門で、2位の「愛の金字塔」(『六神合体ゴッドマーズ』エンディング)を1票差で抑えて1位を獲得しました。

 本作は当時のTVアニメとしては珍しく、オープニングとエンディングが変わっていくことでも有名です。当時のアニメでは1年以上放送するような番組でもオープニングとエンディングが変わることはほとんどなく、昨今の1クールごとに曲が変わるTVアニメの先駆けだったのかもしれません。そのため、初代エンディング曲「宇宙は大ヘンだ!」をはじめ、ファンには名曲と呼ばれる歌を数多く生み出しました。

 人気と言えば、ラムの人気も高かったです。前述の「第4回アニメ・グランプリ」キャラクター部門では2位。当時は男女一緒だったことから、1位は『六神合体ゴッドマーズ』の明神タケル/マーズに譲りましたが女性キャラクターでは1位になります。その人気は長い間にわたり、TV放送が終了する前年の第8回まで連続して女性キャラでは3位以内をキープしました。

 ラムの声を担当した平野文さんは本作が声優デビュー作で、それまではラジオのDJをメインに活動していたそうです。それがある時、ファンから「声優に向いている」とハガキがあったことがきっかけで声優になりました。平野さんのそれまでになかった新鮮な声はラムの人気急上昇に一役買い、同時に自身の人気加速という相乗効果を生みます。

 ラムは男性人気だけと思う人もいるかもしれませんが、女性人気もけっして低くありません。当時は同人誌即売会でコスプレが流行し始めた時期で、どの会場でも何人ものラムのコスプレを見かけたものです。なかにはそれがきっかけでブレイクした人もいました。そして、男性の女装コスプレを見かけたのもラムが最初だったかもしれません。とにかく、それほどの人気でした。

 ラブコメというジャンルを、アニメのなかで急速に押し上げたのは本作の人気が要因だと思います。そして、本作の大ヒットが後に数多くの名作を生み出すきっかけとなりました。