大ヒット作品『鬼滅の刃』に登場するキャラクターの魅力に迫る連載コラム。今回は、人気キャラクター我妻善逸をピックアップ。二面性だけでは終わらない彼の真の魅力とは?
今作に登場する様々なキャラクターの魅力を解説する本連載コラム、煉獄杏寿郎、宇髄天元、鬼舞辻無惨に続き今回ピックアップするのは作中屈指の人気キャラ・我妻善逸です。
原作の人気投票でも1位を獲得したこともある大人気キャラの善逸。インパクト抜群の汚い高音が印象的な一方で、いわゆる「やる時はやる」ヘタレキャラなイメージが強い方も多いはず。
異業の鬼に立ち向かう鬼殺隊であるにも拘わらず、鬼への恐怖で任務から背を向けたり、怖い、嫌だ、と泣き喚いたり。
ある意味では一番私達読者や視聴者が親近感の湧く存在である点も、彼の大きな人気の秘密でもあることでしょう。
しかし今回は敢えてそこにはふれず、我妻善逸という少年がずっと心の奥底で抱いていた、「かけがえのない、唯一無二の存在意義のある自分になりたい」という思いについて。彼の闇とも呼べる深層意識を考察したいと思います。
※本記事は性質上、アニメ1期以降の原作の内容を含みます
賑やかな善逸の闇…真っ黒な無意識領域は絶望だった
3人の中で唯一、彼は自身の親について一切何も知らない形で生まれ育っているのです。
「本物の捨て子ならおくるみに名前も入れねえよ 俺みたいにな」
(『鬼滅の刃』19巻より引用)
数多の女性に言い寄るもひどい扱いをされ、ピンチになっていたところを育手の桑島慈悟郎こと「じいちゃん」に拾われたのはご存知の方も多いことでしょう。
彼がこれまでに、どんなにひどい扱いをされようとも。これほどまでの熱量で女性に好かれたい、と思うことの裏側には、もしかしたら「誰かの特別になりたい」という思いがあったのではないでしょうか。
誰も俺が何かを掴んだり 何かを成し遂げる未来を夢見てはくれない」
(『鬼滅の刃』4巻より引用)
誰かにとって特別なかけがえのない存在になりたい。誰かに、必要とされる存在でありたい。
誰かに期待され、愛されることで、自分がこの世界に生きていてもいい、唯一無二の存在であることを実感したい。
その善逸の強い真相意識の由来となったのが、きっと彼自身のみなしごという出生なのです。
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「必要とされたい」という願い
俺は強くて 誰よりも強くて 弱い人や困っている人を助けてあげられる いつでも」
(『鬼滅の刃』4巻より引用)
人生で初めて自分を必要としてくれたじいちゃんの期待に応えるため、という思いもきっとあったことでしょう。
ですがそれと同じくらい、こんなにもビビりな善逸がそれでも鬼殺隊士としての道を歩み始めたのは。たくさんの人を助け、「大勢に必要とされる自分」を夢見ていたからなのではないでしょうか。
無限列車編でも描かれた、彼の真っ黒な無意識領域。
多くのファンから「闇が深い」とも言われていたあの無意識領域が表していたのは、「自分が誰からも必要とされていない存在」であることへの絶望だったのかもしれません。