著:和久井健『東京卍リベンジャーズ』第9巻(講談社)

【画像】きれいすぎる…グラスアート『東リベ』デザイントート

マイキー、ドラケンに匹敵する人気の千冬

 大人気コミック『東京卍リベンジャーズ』。マイキーこと佐野万次郎、ドラケンこと龍宮寺堅など、キャラクターも高い人気を誇ります。そのなかでも、今注目されているのが松野千冬(まつの・ちふゆ)です。千冬は「東京卍會」壱番隊副隊長で、主人公・タケミチの良き相棒でもある彼の魅力を4つのエピソードから読み解きます。

※この記事では、まだアニメ化されていないシーンの記載があります。原作マンガを未読の方はご注意ください。

信じたら一途 場地への強い思い

 千冬は東京卍會壱番隊隊長・場地圭介(ばじ・けいすけ)に忠誠を誓っています。千冬が場地を尊敬することになったきっかけは、中学1年生の時の出会いでした。中学で留年したとウワサの先輩を見に行った千冬は、一見ガリ勉風の姿で勉強する場地を目撃します。これ以上留年できないと必死に勉強する場地に、千冬は「羽宮一虎」の「虎」の字を教えあげ、親しくなります。おそらく、場地は少年院に入っていた一虎へ手紙を書いていたのでしょう。

 下校した千冬は、20人の暴走族に絡まれます。ケンカが強い千冬もさすがに負けそうになったところに場地が駆けつけました。場地はあっという間に20人を叩きのめし、言い放ちました。

「覚えとけコイツはオレの仲間だ」

 その後、場地は千冬に「ペヤング好き?」と尋ねます。また、同じ団地に住んでいることも分かりました。そんな場地に、不良の千冬が初めて敬語を使い、尊敬するようになります。

 生まれた信頼の気持ちは強く、場地が「芭流覇羅(ばるはら)」に入るために踏み絵として殴られる目に遭っても、理由があるのだと信じていたほどです。

 そして、場地を取り戻すために東京卍會と芭流覇羅はのちに「血のハロウィン」と呼ばれる抗争を起こします。トップのマイキーが一虎と戦い、座り込んだ隙に芭流覇羅の幹部が襲撃。しかし、稀咲がマイキーを守ります。稀咲は東京卍會と芭流覇羅のどちらが勝っても、自分がのし上がれるように仕組んでいたのです。

 陰謀を悟った場地は稀咲を潰しにかかります。稀咲を潰すのは今ではないと千冬は止めに入りますが、場地は鉄パイプで殴りかかります。

「いい気になんなよ千冬ぅぅ!」

 さらに「テメーの考えなんてどうでもいいんだよ」と言い放つ場地。それでも千冬は叫びます。

「オレは壱番隊副隊長!!! 場地さんを守る為にここにいる!! どーしてもこの先に行くならオレも容赦しねーぞ!!」

 場地は「やってみろ」「殺さねーとオレは止まんねーぞ、オレは」と返します。場地を抑え込み、一緒に止めようと言うタケミチでしたが、千冬は涙を流します。

「オレは…場地さんを殴れねー」

 自分は殴られても、信頼した相手を裏切れない。千冬の誠実さに泣かされる名シーンです。

タケミチの「相棒」に

「血のハロウィン」の後、千冬はタケミチを壱番隊隊長にします。千冬は場地の「オマエに託す」、と言う言葉と、体を張って場地を止めようとしたタケミチを信じたのでしょう。千冬のタケミチへの信頼感の強さは、その後現代に戻ってから分かります。

 マイキーが一虎を殺さず、許した未来でタケミチは東京卍會の幹部になっていました。さらに、稀咲の手のひらで東京卍會の腐敗に加担していたのです。現代に戻ってきたタケミチは自分の行動を知らず、千冬とともに稀咲の罠にかかって捕まってしまいます。

 千冬は「裏切り者(ユダ)はオレだ タケミっちは関係ねぇ!!」 と擁護しますが、タケミチは稀咲から銃で足を撃たれてしまいます。覚悟を決めた千冬は、タケミチに言い遺します。

「場地さんの想いを…東卍(トーマン)を頼むぞ相棒」

 次の瞬間、千冬は頭を撃たれ、場地の仇と、タケミチへの信頼を抱えたまま死亡します。しかも、千冬はタケミチに都合の悪い証拠は隠してくれていました。腐ってしまったタケミチでしたが、千冬は信じ続けていたのです。「相棒」という言葉が胸に刺さります。

タイムリープを信じてくれる

 千冬が死んだ現代から12年前に戻ってきたタケミチは、ふとしたきっかけで千冬に「自分は未来から来た」と話してしまいます。さすがに嘘だとごまかそうとしたタケミチですが、千冬は「なんとなく気付いてた」と言うのです。

 千冬がタケミチの秘密に気が付いたのは、芭流覇羅との決戦前に場地と話し、「死なないで」と伝えていたことです。未来を知っていながら、場地を救えなかったことを後悔するタケミチですが、千冬はすごい、と褒めます。

「一人で戦ってたんだろ? 誰も褒めてくんねぇのに 胸張れよタケミっち 大事なのは結果じゃねえ!」

 相棒だろ、と千冬は言います。自分だけでは場地を助けられないとタケミチを頼った千冬だからこそ、言える言葉なのでしょう。「これからもよろしくな!」という千冬の笑顔が印象的なシーンです。

ちょっと天然な面も…?

 東京卍會の柴八戒(しば・はっかい)は、兄のせいで東京卍會をやめる羽目に。そこを止めたのがタケミチでした。前日に千冬と考えた案で、マイキーが八戒の申し出を受理するのを止めようとします。

 まず第1案は、どら焼き! マイキーの大好きなどら焼きで話をごまかそうとしたタケミチですが、当然失敗。そして第2案です。メモ帳を見ると、ひと言。

「気合い」

 もちろん役に立つはずもなく、ドラケンからも「ふざけてんのか?」とにらまれてしまいます。いつも真面目な千冬の、天然な面が見られるエピソードです。

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 場地を信じ、仇・稀咲を倒すために頑張った千冬。ひとりでは無理だとタケミチと協力する柔軟性もあります。何より、一度信用したら決して裏切らないその誠実さが人気の秘密なのかもしれません。