■漫画『キングダム』は史実とどこまで同じ?

主人公・李信は秦で活躍した武将の一人

「週刊ヤングジャンプ」で連載中の原泰久作の大人気漫画「キングダム」。人気の秘密は、春秋戦国時代の史実に基づいて描かれているからかもしれない。

「週刊ヤングジャンプ」公式サイトより

春秋戦国時代、中国には秦・斉・燕・楚・魏・趙・韓の戦国七雄と呼ばれる七つの大国があった。「キングダム」は、この中華七国の統一を目指す嬴政(えいせい)とともに、戦争孤児で下僕出身の主人公・信(しん)が天下の大将軍を目指す話である。

主人公の李信も実在した人物だ。史実によると、李信は嬴政の暗殺を指示した「燕」の太子・丹(たん)の首を討ちとったことや、かつて趙の太子だった嘉(か)が興した「代」を滅ぼしたことが分かっている。また、漫画内でも登場する王賁(おうほん)、蒙恬(もうてん)とともに最後に残った「斉」を滅ぼし、中華統一に貢献しているのだ。

つまり、李信が大将軍となって活躍したのは紛れもない事実。しかし、中国の歴史書である史記には、斎を滅ぼしたことを最後に李信に関する記述はない。そのため、李信がその後どのような活躍をし、いつ亡くなったのかは分からないままだ。

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史実とは違う性格の嬴政と史実どおりの李牧

『キングダム』は主人公の李信だけでなく、数々の魅力的な人物が登場する。物語に欠かせないのが嬴政だろう。

最終的に中華は統一され、嬴政は始皇帝と称するように。漫画の中では勇敢で人格の優れた人物として描かれている嬴政だが、実際には暴君だったと言われている。敵対していた呂不韋の葬儀で泣いた人々を死刑にしたり、自分に従わない儒者を大量に虐殺したりするなど非情な行いをしていたようだ。

他にも「キングダム」に登場する人物で忘れてはいけないのが、趙の李牧(りぼく)だろう。李牧も実在した人物で、戦国四大名将の一人と言われている。北方の国境防衛の長官として匈奴を大敗させ、趙を攻める秦軍を何度も退けた功績を持つ。このことからも、漫画内の李牧のように知略に優れた武将だったことが分かる。