ドラマ『リコカツ』(TBS系)の主題歌である新曲「Pale Blue」も評判の米津玄師さん。実は我々、オタク層にとってはクリエイター・ハチとしても有名。ニコニコ動画時代から知るライターが米津さんの魅力を分析します。

カルチャーライターの曽我美なつめと申します。
アニメやマンガを愛するガチオタクである一方で、これまで約10年ミュージシャンとしても活動し続けるかたわら、現在は音楽ライターとしても活動している私。そんな私が音楽オタク&アニメオタクの両側面からご紹介していきたいと思います!

今回は少し趣向を変えて、1つの楽曲ではなくアーティストそのものについて語りましょう。
本日取り上げるのは、今や国民的アーティストともなった米津玄師さんです。

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古参にも新参にも愛される稀有な存在

多くのドラマやCM曲に抜擢され、幅広い世代に熱い支持を受ける彼。ですが元々はオタクにも馴染み深い、「ニコニコ動画」出身のクリエイター・ハチとしても有名です。

そのため、ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎』(日本テレビ系)内で発言された「オタクなのになんで米津玄師歌うの?」というセリフは各方面で話題となりました。
これには「いや、オタクだからこそ米津玄師歌うでしょ」というツッコミも大勢のネットユーザーから入り、一時期SNS上をザワつかせる事態となったのです。

この件に関しては様々な意見も飛び交いましたが、一つだけ確実に言えるのは「古今東西やっぱりオタクは米津玄師好きが多い」ということ。形や熱意の差はあれど彼が好きな方が多いからこそ、あのような論争があちこちに勃発したのでしょう。

オタクの中には一定層「有名になったから興味がなくなった」「売れ始めてからイマイチになった」と、いわゆる逆張りをする方が多いのもまた事実。
ですがその中でも米津玄師さんはいわゆる歴10年を超える古参オタクにも、最近オタク文化に触れ始めた人にも、共通して愛され続けている、非常に稀有な存在です。

CD『STRAY SHEEP』米津玄師 画像

via CD『STRAY SHEEP』米津玄師

ハチ時代に比べると、当然曲の作風もずいぶん変化しています。
しかしそれでも、米津玄師さんはなぜこうも長年オタクという存在に愛され続けているのか。
それはずばり彼が昔から変わることなく、解釈の余地があるテーマ性や伏線を持った曲作りを続けているからでしょう。

そしてそれらはアニメやマンガなどの二次元に関わらず、音楽や映画、読書など、ジャンル不問の、主にカルチャーに纏わる創作作品を愛する「広義の意味でのオタク」が共通して持つ、思考活動の欲や知的好奇心を酷く刺激されるものでもあるからです。

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ハチ人気の鍵は考察の捗る曲作りにあった?

彼のハチ時代曲を振り返ると、哲学的・宗教的なモチーフ、アナグラムや暗喩といった言葉遊び、伏線などの要素がとても顕著に現れています。
昔に比べ前面的ではないものの、これらの題材は実は今の彼の曲にも確かに受け継がれている様子。
強い思考活動欲を持つオタクと呼ばれる人々の中には、これらが言わば大好物の方も多いのではないでしょうか。

ニコニコ動画に現存するハチ楽曲のうち、2作目となる『Persona Alice』や5作目の『Qualia』、14作目の『リンネ』。
これらの曲には、哲学で人格を意味する言葉である「ペルソナ」、意識や経験による感覚を示す言葉の「クオリア」。
そして仏教に由来する言葉である「輪廻」などのワードがタイトルにも冠されていますね。

ハチ MV「リンネ」HACHI / Rinne

via www.youtube.com

また9作目の『恋人のランジェ』。曲タイトルのランジェは、一説に寄ればドッペルゲンガーという単語の「ドッペル」の部分のアナグラムだそう。
さらにやはりハチ時代の曲を語る上で欠かせないのは、彼の名を一躍有名にした『結ンデ開イテ羅刹ト骸』でしょう。
表面的には花札のモチーフを用いながらも、歌詞には様々な裏読みが捗る日本語を多数織り込んでいます。
さらにハチ時代の彼は、複数の楽曲に共通の物語性を持たせていたことでも有名です。
アルバム『OFFICIAL ORANGE』(ハチ名義)収録の『病棟305号室』の前身となった楽曲、『雨降る街にて風船は悪魔と踊る』。
本作は『お姫様は電子音で眠る』の前日譚としても知られています。

このような、楽曲の中にオリジナリティのある世界観の物語を込める手法。これもまた想像や考察が捗る、オタク受けの良い1つの方法でもあるでしょう。