EVの充電、放電をより身近なものへ~ニチコンの「V2Hシステム」とは~

「V2Hシステム」とは、EVのバッテリーから家庭に放電できるシステムのこと。


世界初のこのシステムを開発したニチコンから、「V2Hシステム」及び今春に発売される第3世代モデル「EVパワー・ステーション® VSG3シリーズ」について話を伺った。(『Motor Magazine』2024年5月号より)

「V2Hシステム」および「EVパワー・ステーション®」について

── 「V2Hシステム」とはどういうものなのでしょうか。

ニチコン 「V2H(Vehicle to Home)は「クルマから家へ」という意味です。「V2Hシステム」は、BEVやPHEVに充電し、さらにその電力を取り出して家庭の電源として活用できるシステムです。BEVやPHEVをクルマとしてだけではなく、家の大型蓄電池として活用できるわけです。

さらに、太陽光発電と連携させることにより、発電した電力を家産家消する仕組みを生み出せます。もちろん太陽光発電なしでも、BEVやPHEVがあれば設置運用することができます。

当社では2010年より蓄電システムや、EV用急速充電器、V2Hシステムなどへの取り組みを開始し、2012年に世界に先駆けた独自のV2H システム「EVパワー・ステーション®」を発売。以降、業界のパイオニアとして、現在に至るまで順調にシェアを拡大してきています。

── その「EVパワー・ステーション®」の第3世代となる「VSG3シリーズ」が今春に発売されるとのことですが、その特徴についてお聞かせください。

ニチコン 大きな進化のメリットは3点あります。ユーザーへのメリットとして、


①小型・軽量化、及び本体とプラグホルダのセパレート化により、設置がしやすくなったこと


➁停電時も、自動的にクルマから家庭への放電開始が可能となったこと


③新回路方式の採用で、高効率化を実現したこと


が挙げられます。

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「EVパワー・ステーション® VSG3シリーズ」の特徴

── 特徴①の「小型・軽量化、セパレート化」について、詳しく教えてください。

ニチコン 現行の第2世代モデルは、パワーユニットとプラグホルダは一体型となっており、重量は91kgありました。イメージで言うとエアコンの室外機くらいのサイズがあり、利用希望者からは「もっとコンパクトなら、うちにも設置できるのに」という声をよく頂きました。そこで大幅な小型・軽量化に挑み、今回の第3世代で実現しました。

さらにパワーユニット(本体)とプラグホルダ(操作部)をセパレート化したことで、駐車場スペースにはプラグホルダだけを設置する、といった柔軟な配置が可能となり、また両方とも壁掛けができるようになって、設置時の自由度と使いやすさが大幅に向上しました。このことにより、物理的に設置できる住まいが格段に増えたかと思います。

── 特徴➁の「停電時も自動で家庭に放電可能になった点」について、詳しく教えてください。

ニチコン これまでは法律により、家庭にある一般家庭用分電盤とV2H専用の分電盤は、別々に設置することが必要でした。大きな設置スペースが必要なことに加え、停電などの際にクルマからの放電に切り替えるには、ユーザーによる分電器の切り替え操作が必要でした。しかし、夜間の非常時にそのような操作を行うのは、大変な手間がかかりますし、危険を伴うこともありました。

私たちも経済産業省などに働きかけ、2023年に分電盤の設置の規定について法改正が行われ、2種の分電器を1機に集約することが法的に可能になりました。そこで、新型の小型自動切換開閉器を開発、専用分電盤を小型化して1つの分電盤の中に収められるようにしました。これにより停電が発生しても、”自動的に”EVからの放電に切り替わるようになり、大変便利になりました。

また第2世代と同様、200V・6kVA出力なので、家をまるごとバックアップできます。


条件によりますが、一日に家庭で使用する電力量は10~15kWhと言われていますが、例えば「日産リーフe+」だと60kWhを放電できるので、停電になった場合も単純計算で、約3日過ごせることになり、かなり安心感があると思います。