バスが道路ですれ違った際に行う運転士同士の挨拶は、禁止されている行為といいます。なぜなのでしょうか。
バス運転手の「すれ違いの挨拶」禁止の理由は
道路でバスがすれ違う際、運転手が互いに片手を挙げて挨拶する姿を見かけたことがあるかもしれません。しかしこれは、禁止されている行為といいます。なぜなのでしょうか。
バス運転手同士の挨拶について、SNSでは「あれダメだったのかー」「知らなかった」など、禁止されていることを知らなかったユーザーの声も多く見られました。
そもそもなぜ禁止とされているのでしょうか。日本バス協会の担当者は次のように話します。
「我々はバス運行にあたって事故防止に努めており、国土交通省が作成する指導マニュアルのもと、教育を行っています。バスがすれ違う際の挨拶についてはマニュアルにも記されており、都道府県のバス協会を通じて周知活用をお願いしています」
国土交通省が作成した「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル」は、バスを運転する際の心構えや乗客の安全を確保するために遵守すべきことなどが細かく記されています。
そのなかの「走行中の運転への集中」の項目には、次のように記されています。
「(略)すれ違う同社の運転者にあいさつ(挙手挨拶)されるなど、運転に集中できない状況も生じます。乗客の安全を確保するためには、走行中は運転に集中させましょう」
さらに具体的な解説では「すれ違う同社の運転者へのあいさつ(挙手挨拶)などは脇見運転となり、乗客の安全を損ないかねないのでやめさせましょう」とも記されています。
実際に2003年2月には、東京都内でバス運転手が挨拶を交わした際に前方不注意で歩行者をはね、死亡させる事故が発生しています。
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そもそも挨拶にどんな意味がある?
そもそも、バス運転手同士が行う挨拶は、いつ頃生まれ、またどのような意味があるのでしょうか。
これについて日本バス協会は「いつ頃からか、明確な意味については把握していない」と話しており、詳しい回答を得ることはできませんでした。
とはいえ、2012年に作られ上記の国土交通省マニュアルに記載されていることから、少なくともそれ以前からバス業界にある慣習といえるでしょう。
SNSでは「お疲れさまの意味かな」「お互いの体調を確認するためでしょう」など、挨拶の意味について様々な予想が並んでいました。
また、この挨拶禁止について「コミュニケーションのひとつなのに…」「これでよそ見運転になるのかな」と疑問視する声も。
すれ違いの挨拶は禁止されている行為ですが、バス運転手同士のコミュニケーションは不必要なものなのでしょうか。これについて前出の担当者は次のように話します。
「運転するときの状況にもよるかと思います。ただ、ハンドル操作に必要ないことは控えて運転に集中していただき、安全運転に努めてほしいと思います」
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こうしたバス運転手同士の挨拶について、専門家が全国9都道府県に対し覆面調査を行ったところ、未だに約半数の運転手が行っていたことが分かっています。
今後の対策について、担当者は「適宜、根気よく周知活用してもらうよう広めていき、各事業者の方にご協力いただけるように努めていきます」と話しています。