ズルくない? 交差点の「コンビニショートカット」行為! 数分待てないの? コンビニ店員困惑の現状とは

赤信号で停まることを避けるため、交差点に面した施設の駐車場に進入し、通過することを「コンビニショートカット」と言います。過去には死亡事故も起きていますが、この危険な行為をする人が後を絶たないようです。なぜなのでしょうか。

危険な「コンビニショートカット」とは?

 前方が赤信号のとき、交差点に隣接するコンビニエンスストアなどの駐車場を通り抜け、交差点をショートカットして右左折を行うクルマを見かけます。
 
 通称「コンビニショートカット」あるいは「コンビニワープ」などと言われ、危険な運転行為として問題視されています。

 コンビニショートカットはコンビニエンスストアに限らず、交差点の角に接しておりクルマが進入できればどこでも行われる可能性があり、大きな駐車場を持つ公園やガソリンスタンド、スーパーなどでも度々みられます。

 2020年3月には大分県宇佐市の焼肉店駐車場で、コンビニショートカットを行った軽トラックに3歳の女の子がはねられ、死亡するという事故も発生していますが、現在も後を絶たないようです。

 実際に、大手コンビニチェーン本部の中国支店に勤めるA氏は以下のように話します。

「地域差もあるかもしれませんが、私が担当するコンビニでは1日に数件ほど、ショートカットする人がいます。一度、敷地内で事故が発生したこともあり、対応に苦慮しています」

 A氏の話によれば、急いでいるあまり敷地内でもスピードを緩めず、猛スピードで通過していくことも多いと言います。

「事故が起きた場合、駐車場内の事故について店側は責任を負わないため、直接的に不利益を被ることはありません。

 しかし、防犯カメラ映像を確認したり、警察対応が必要になることで、結果的に手間と時間がかかってしまう上に、警察車両がコンビニに停まっているとお客様が入りづらいということも考えられ、結果としてはやはり迷惑ですね」(A氏)

 コンビニ側にとっては敷地内を不正に通過されるだけでなく、事故に巻き込まれるリスクもあり問題となっているようです。しかし、現状では対策は難しいと話します。

「多発する店舗では、敷地内には『通り抜け厳禁』などの看板を設置するなどの対策をしているのですが、警告のみでは効果を発揮せず、また見かけても店から直接注意することは難しく、完全な抑止にはつながっていません」

 コンビニショートカットは一連の行為がほんの数秒であり、監視カメラを注視していたとしても、店舗スタッフが店から出て注意するのは間に合いません。

 間に合ったとしても、店から離れなくてはならないため、結果として直接注意することは現実的ではありません。

 そのほかの対策としては、駐車場にゲートや発券機を設けるなどの対策もありますが、通常の利用客が入りづらくなり、高額な設備費用が発生することも考えられます。

 こうしたことから十分な対策を施すことができず、コンビニショートカットが後を絶たないようです。

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複数の違反に該当も取り締まりは難しい?

 コンビニをはじめ、交差点の角に面したさまざまな店舗や駐車場で多発するコンビニショートカットですが、実は一連の行為内で道路交通法に抵触するものが3つ挙げられます。

 急いでいるあまり猛スピードで道路とコンビニの駐車場を出入りした場合、安全運転義務違反に該当する可能性が考えられます。

 これは前方不注意や安全不確認、安全速度違反などに該当する可能性があるためです。

 道路交通法第70条には「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定められています。

 安全運転義務違反となった場合、違反点数2点、反則金は普通車の場合9000円が科されます。

 また、歩道等を横断する際に、歩道等の手前で一時停止せず歩行者の通行の妨げとなった場合も道路交通法違反で検挙される可能性があるのです。

 道路交通法第17条第2項では、「車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない」と定められています。

 これに違反した場合は、2万円以下の罰金または科料の罰則が設けられています。

 さらに、コンビニやスーパーなどの駐車場は、お店を利用するための場所です。したがって、近道として通り抜けることが正規に利用する目的には該当しないと言えます。

 刑法第130条(住居侵入等)では、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者」と定められており、これに該当する可能性もあります。

 違反した場合、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科された罰則が設けられています。

 このように、さまざまな違反のリスクも含んでいる危険なコンビニショートカットですが、この行為自体を限定して取り締まる法律や条項は現在のところ存在しません。

 道路交通法は公道上での運転について定められた法律のため、駐車場などの私有地や私道は道路交通法の適用範囲外です。

 そのうえ、上記の3つの違反についても警察官がその場におり、違反行為を確認できなければ検挙される可能性は低いと考えられます。

 先出のコンビニ本部のA氏はこれについて以下のように話します。

「さまざまな法律などに違反したとしても、やはりその場に警察官がいなければ取り締まることはできません。

 私たちだけでも解決のしようがないので、大分県の例のような痛ましい事故を防ぐためにも、条例を設けたり、法改正するなどが必要でしょう」

 根本的な解決が難しい現状にあるコンビニショートカットですが、今後どのように対策が講じられるか、注目されます。