
「朝起きた瞬間から体の中が重くてだるい」「年取ったなぁと一番思うのは、すぐに胃が疲れること」「頭が働かない」……。それは「内臓疲労」かもしれない。医療機関では使われていない言葉だが、誰もが実感として持っているのではないだろうか。
疲労回復ジムボディデザイナー・松尾伊津香さんは、「私たちは少なからず共通の『内臓の疲れ』なるものを自覚しているのでは」と考える。
松尾さんの著書『内臓疲労回復』(クロスメディア・パブリッシング)は、現代人が特に不調を感じやすい「脳」「胃腸」「肝臓」の3エリアを取り上げ、疲労の原因と対策を専門医に聞いた一冊。総合内科医・中田航太郎さんが監修を務める。
「ただの疲れとあなどるなかれ」
はじめに、「内臓疲労」は「誰が定義することもなくして自然と流通している言葉」であり、「”内臓に負荷がかかりすぎているので、休めてください”というサイン」としている。
その上で、「脳」「胃腸」「肝臓」は「どのような行為が負荷をかけるのか」「どのような状態になると負荷がかかりすぎているのか」「どうすれば休めることができるのか」。各分野の専門医への取材をもとに、松尾さんが探求していく。
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本書は以下の構成。「多忙すぎるプレイングマネジャー・脳」「消化管レンジャー・胃腸」「沈黙のマルチタスカー・肝臓」の「疲労」と「疲労対策」について、専門医の話をまじえて松尾さんが解説するスタイルをとっている。
■目次
序章 内臓と疲労
第1章 脳と疲労――「疲れ」をつかさどる内臓
第2章 脳疲労対策
第3章 胃腸と疲労――ストレスがモロに出る内臓
第4章 胃腸疲労対策
第5章 肝臓と疲労――沈黙ゆえに怖い内臓
第6章 肝臓疲労対策
第7章 疲労の正体――体という組織のあり方を見直す
第8章 疲労対策の共通ルール
ここで一つ、気をつけたいことがある。
本書はあくまで「病気ではないもののいまいち調子が良くない」と感じている人に、内臓からコンディションを整えていく方法を提案するもの。「心身に異常を感じている場合は、まずは医師の診察を受け、その判断に従ってほしい」としている。
「ただの疲れとあなどるなかれ。体のアラームである疲労には、重大な疾患が隠れていることがある」
ちなみに、医療機関に相談する際は俗語の「内臓疲労」を使わず、「いつから/どこが/どのように/どんなときに/他に気になる症状/自身や親族のこれまでの治療歴」を伝えるのがいいそうだ。
人間の脳はマルチタスクに向いていない
そもそも「脳って内臓?」と思ったが、現在は神経系に分類されているものの、以前まで内臓として扱われていたそうだ。また、その他の内臓と密接にやり取りをしていることから、脳に注目したという。
ここでは第1章から、現代人の脳や心の悩みと向き合っている禅僧の精神科医・川野泰周さんに松尾さんが聞いた話を紹介しよう。