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今後、天守が復元される城が出てきそうだ

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城郭考古学の冒険(幻冬舎)<amazonで購入>

 NHK大河ドラマ「真田丸」の城郭考証を務めるなど、テレビで城を取り上げると、しばしば登場する奈良大学教授の千田嘉博さんの新刊が本書『城郭考古学の冒険』(幻冬舎新書)である。「城郭考古学」とは聞きなれない言葉だが、城跡の発掘調査、絵図・地図、文字史料など分野横断的に「城」を資料として歴史を研究するものだ。城を考古学的に研究することで、文字史料ではわからなかったことが次々に明らかになってきたという。

 千田さんが大学の卒論を書こうとした頃は、城の発掘はまだ珍しく、「考古学で城の研究ができるはずがない。無理だからやめなさい」と何度も忠告を受けたそうだ。考古学は文字のない時代を研究するというイメージが強く、中世や近世といった時代は豊富な文字史料から研究するものだと考えられていたからだ。

 現在では城を考古学的に調査し研究することの意義は広く理解されている。2016年の熊本地震で傷ついた熊本城でも、修復工事に先立って厳密な発掘調査が行われ、石垣や建造物の構造を把握することが求められた。

 千田さんは「城郭考古学」をこう意味づけている。

 「従来は、考古学、歴史地理学、建築史、史跡整備などの文理にまたがる多様な学問分野を、城を中心において総合して学融合分野として研究していく新しい研究視角が、城郭考古学である」

 本書の構成は以下の通り。
 第1章 城へのいざない
 第2章 城の探検から歴史を読む
 第3章 城から考える天下統一の時代
 第4章 比較城郭考古学でひもとく日本と世界の城
 第5章 考古学の現場から見る城の復元

「未熟な城」などない

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 日本の城は戦国時代から織豊期にかけて大きく変化した。石垣や天守・瓦を備えた「織豊系城郭」が各地につくられた。「大名を頂点とした武士と商職人の階層的な編成を実現した城郭構造(城下町構造)を備えたことが、近世城郭への必要条件だったのである」。

 石垣や天守・瓦という要素を備えない城を「未熟な城」とする意見もあるが、それを「中央史観」と批判している。寒冷のため瓦を葺かない近世城郭が多かった東北地方は、ついに「正統な」近世社会が成立しなかったことになる。「地方史観」に立って、地域の歴史に光を当てようという姿勢に共感を覚えた。

 とは言え、「第3章 城から考える天下統一の時代」の叙述が最も手厚い。織田信長、明智光秀、松永久秀、豊臣秀吉、徳川家康について、それぞれ「城から見た」観点で詳しく書いている。

聚楽第の堀の後は秀次の謀反の証拠?

 「城郭考古学」の成果が如実に表れていると思ったのは、京都大学防災研究所による振動波を用いたレーダー探査によって、明らかになった京都の聚楽第の堀の跡である。

 聚楽第は豊臣秀吉が築いた、立派な「城」である。1591年(天正19)に甥の秀次の居所となるが、それから4年後の関白秀次事件に伴い、破却された。

 レーダー探査によって、周囲の大名屋敷が並んでいた場所まで堀が設けられ、最終的に埋められたことがわかった。

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