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『パンッ!』と光って『グイッ』と曲がった松坂のスライダー

週刊ベースボールONLINE

6月13日のヤクルト戦(メットライフ)で2016年夏の甲子園優勝投手でもある西武の今井達也が先発デビューを果たした。力強い速球を主体に燕打線に立ち向かい、6回5安打1失点と上々の内容。西武では1999年の松坂大輔(現中日)以来となるデビュー戦先発勝利を飾った。ここでは松坂のデビュー戦をあらためて振り返ってみよう。

堂々としたピッチング



プロデビュー戦の松坂

 横浜高時代の3年春夏にエースとして甲子園連覇を達成した松坂大輔。超高校級の投手として“平成の怪物”と呼ばれた。ドラフトでは3球団が競合し、西武に入団。ルーキーにしてエースの代名詞でもある背番号18が与えられた。

 注目のプロ初登板は4月7日の日本ハム戦(東京ドーム)。この日、球場にはスーパールーキーをひと目見ようと4万4000人の大観衆が詰めかけ、球場は松坂への期待感に包まれる異様な雰囲気。それを察知してか、東尾修監督は「後ろ(二塁方向)からマウンドに立て」と言って送り出した。なぜなら、マウンドに上がったときに捕手との距離が視覚的に近く見えるからだ。しかし、そんな些細なアドバイスは必要なかったのかもしれない。松坂は高揚感を体の奥にしまい込んで、堂々としていた。

 初回から見せ場が満載だった。プロでの初球はもちろんストレート。客席からしきりにカメラのフラッシュが焚かれる。井出竜也はハーフスイングでワンストライク。オーロラビジョンに表示された球速にどよめきが起こる。いきなり149キロ。松坂はプロで何年もメシを食っている井出を完全に見下ろして投げていた。苦も無く空振り三振に仕留めた。

 さらに、二死で三番・片岡篤史が打席へ。2球目には150キロが出た。「ビッグバン打線」の中心打者に真っ向勝負。その後、カウント2-2からの5球目、その後、VTRで何度となく再現されるシーンが現出する。インハイへの快速球で空振り三振に斬って取った。フルスイングした片岡は大きくよろめき、電光掲示板に155キロの文字が白く光ると、東京ドームは割れんばかりの大歓声に包まれた。

 片岡はのちに、このシーンに関して次のように語っている。

「最初の対戦では来ると分かっていながら真っすぐで三振に取られましたが、それよりもスライダー。『パンッ!』と光って、『グイッ』と曲がる。松坂のスライダーはこう表現したい。三振する前の2ボール1ストライクからのスライダーがそうでした。それまで最高だと思っていた赤堀(元之、元近鉄)のスライダーに匹敵する球を、高校を出たばかりの投手が投げた。こいつはどこまでいくんだろう、と思わされました」

 5回裏には厳しい内角球にフランクリンが怒った。バットを振り上げてマウンドに向かおうとしたが、松坂は平然としていた。普通の18歳なら、多少引いてもおかしくない場面。しかし、このルーキーは並みの18歳ではなかった。

「ああ、そういう作戦で来るのかと思って、ムッとしましたね」

 ここまで日本ハム打線はノーヒット。フランクリンの“ブラフ”に動じることなく、逆にアゴを突き出して見下ろしていた。6回表一死後、小笠原道大の詰まった当たりがセンター前に落ちた。プロ入り初の被安打でノーヒットノーランが消え、東京ドームにはため息が充満した。8回裏一死二塁で小笠原がバックスクリーンへ2ラン。完封も消え、この回限りで松坂はマウンドを降りた。

 8回5安打2失点の9奪三振で初白星をマーク。「高校時代からずっと、自分は本番に強いと思ってきました。自分を信じて投げました」と松坂。東尾監督は「ここまでいいとは」と驚嘆したが、これは平成の怪物の序章に過ぎなかった――。

写真=BBM

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