
手塚治虫の装画が目を引く。佐々木閑(ささき しずか)さんの本書『ブッダ――繊細な人の不安がおだやかに消える100の言葉』(宝島社)は、不安、怒り、人間関係の悩みを消す珠玉の名言集。
本書の説法の数々は、「すべての悩みから解き放たれて自由に生きるための処方箋」であり「自分を変えて生きづらさをなくす永遠の教え」である。
「いくら時代が進んでも、人の心の構造は変わらない。(中略)ブッダの言葉はときを超えて、私たちに平安への道を説き示してくれるのである」
我が身を救う道は一つ
本書は「ブッダという人は、世にも変わった宗教家である」という一文ではじまる。これはどういうことか。
たいていの宗教が、祈祷や呪文で魔除けを行ったり、神に永遠の幸せを願ったりと、「超自然的なパワー」で人生を乗り切ろうとするのに対し、ブッダはそうした超常現象的活動を「愚かなまやかし」として嫌ったという。
そのブッダが創設した仏教の基本は、「自分を変えることによって苦しみを消す」という教え。ブッダの考えは「助けて欲しいと願っても、救済者はどこにもいない」「この世は実につらく悲しい苦悩の海である」というものだったそうだ。
「我が身を救う道は一つしかない。外から押し寄せる苦しみを苦しみと感じないような独自の『あり方』を、自助努力によって作り上げていくのである」
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今から2500年前、ブッダは何年も修行を続け、35歳で答えを見つけた。同じように生きる苦しみで悶えている人に説き広めようと、布教の旅に出る。80歳で亡くなるまで教えを説いた。それがのちに「お経」としてまとめられたとされ、今に伝えられている。
人生の駆動力に
佐々木さんは2015年に『ブッダ 100の言葉――仕事で家庭で、毎日をおだやかに過ごす心得』を出版している。当時はネット革命や政治経済の不安定化で世の中が混沌としており、「おだやかに生きるためのブッダの言葉を紹介したい」という思いで書いたそうだ。
そして、このコロナ禍。「『今ある暮らしを守っていけるのか』、そんな不安が日本中を覆っている」と感じ、今度は「閉鎖的な状況の中で人知れず苦しんでいる繊細な人たちを力づけるために」書くことにしたという。
前著で紹介しきれなかった言葉を集め、「より一層パワフルな人生の駆動力にしてもらいたい」という願いを本書に込めている。
「激変する世界にも翻弄されることなく、『犀(さい)の角の如く』確固とした足取りで人生を歩んでいくための一助となれば幸甚です」
2500年前も今も変わらない
本書は「第1章 世間のルールになじめない」「第2章 人間関係に気疲れする」「第3章 自分が何のためにいるのかわからない」「第4章 これから先がどうなるか不安」「第5章 やりたいことが見つからない」「第6章 心が晴れるためには」の構成。
1つの言葉につき、2ページ。右ページにブッダの言葉、左ページに写真と訳がある。写真を眺めていると、インド、タイ、ラオス、スリランカ、日本の仏跡巡りをしている気分になる。