
「承知」には「承る」という謙譲語が含まれるように感じるためか、そこにさらに「いたす」という謙譲語を加えることで、二重敬語になるのではないか、と疑問に思う方もいるかもしれません。
しかし、「承知」という言葉は、これ自体が1つの言葉なので、「承る」という謙譲語は含まれていません。
前段でも紹介した通り、「承知」という言葉そのものは、「知る」「聞き入れる」「許す」という意味で、そこに「敬意を表す要素」はないため、敬語表現ではありません。
「承知」+「いたす」で初めて謙譲語としての敬語表現となるため、謙譲語の重複という二重敬語には当てはまらない、といえます。
■「承知いたしました」の使い方。目上の人にも使えるのか?

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ここでは、「承知いたしました」の対面やメールにおいての使い方、目上の人にも使える表現なのか紹介します。
◇対面やメールでの使い方(例文付き)
「承知いたしました」は、メールや文書、口頭でのやりとりにおいてもよく使われます。
シチュエーションとしては、「相手の要求を受け入れる」「相手の事情を理解する」という「相手の言い分に同意する」という時に使います。
例えば、下記のような使い方ができます。
☆例文
Aさん「Bさん、ちょっといいかな。明日の14時から1時間ほど打ち合わせできますか?」 Bさん「明日の14時から1時間ですね。承知いたしました」
また、以下のようなメールが届いた際にも、「事情は分かりました」という意味で使うことができます。
☆例文
Aさん「電車遅延のため帰社時間が少々遅れそうなので、打ち合わせを14時半からに変更でお願いできますか?」 Bさん「14時半に変更ですね。承知いたしました」
◇「承知いたしました」は目上の人にも使える表現
謙譲語である「承知いたしました」は、目上の人に対して問題なく使うことができます。
ただ、少々堅苦しく、仰々しい印象を持つ人もいるかもしれませんので、親しい上司などには丁寧表現である「承知しました」でも問題ないでしょう。
■「承知いたしました」と「了解しました」「かしこまりました」の違い

「承知いたしました」と似ている表現として、「了解しました」「かしこまりました」がありますが、それぞれどんな意味なのか、また「承知いたしました」との違いはどこにあるのでしょうか?
◇「了解」は「理解して認めること」
「了解」には「理解して認めること」という意味があります。
意味合いとしては「承知いたしました」と似ていますが、一般的に「了解」という言葉は目上の人に対して使うには適していない、とされています。
理由としては諸説ありますが、「“了解”には敬意が含まれていない」と感じる人も多いため、目上の人や取引先に対して使うと軽い印象を与えてしまう可能性もあり、使用は避けた方が無難でしょう。
ただし、同等もしくは部下や後輩などに対して「了解」「了解です」「了解しました」などと使う分には問題ありません。
◇「かしこまりました」は「つつしんで目上の人の言葉を承ること」
「かしこまる」は「つつしんで目上の人の言葉を承る」という意味を持ち、「つつしむ」という相手への高い敬意を示す表現です。
「承知いたしました」と同様に、目上の人に対して使える謙譲語です。どちらかと言えば、「かしこまりました」の方がより高い敬意を含んでいるといえます。
■返答する際には「キーワード」となる言葉を添えるとなお良い

いかがでしたか?
「承知いたしました」は「相手の申し出や頼みを聞き入れる、引き受ける」という意味を持つ謙譲語で、目上の人に対して使っても何ら問題はない敬語表現、ということを紹介してきました。
似た表現として「了解しました」「かしこまりました」などもあるので、相手や状況に応じて上手に使い分けてみましょう。
最後に、これは「承知いたしました」以外の表現にも通じることではありますが、相手の言っている内容に対して単に「承知いたしました」と返すだけでは、丁寧さは伝わりますが、何に対して承知したのかが不透明で、双方の認識に齟齬が発生してしまう可能性もあります。
「何をどう承知したのか」をより確実に伝えるためにも、例えば「アポイントメントの時間を15時に変更ですね。承知いたしました」というように、キーワードとなる言葉を添えた上で返答をするとなお良いでしょう。
そうすることで、コミュニケーション上で発生しがちな「言った、言わない」「聞いた、聞いていない」という行き違いや誤解も、かなりの割合で減らせるはずです。
ぜひこれを機会に、言葉の使い方だけではなく、伝え方にも意識を向けてみてください。
(櫻井弘)
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