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光の力でだけで物体が浮かぶ、現代版魔法の絨毯の開発に成功(米研究)

カラパイア

光の力だけで物体が浮かぶ技術
credit:@TonyHoWasHere

 これは現代版の魔法の絨毯と言ってもいいかもしれない。米ペンシルべニア大学の研究グループが、光の力だけで物質を浮遊させることに成功したそうだ。

 『Science Advances』(2月12日付)で紹介されているのは、ポリエステルで作られた小さなプラスチックの板だ。これを真空チャンバーに入れて、底の部分にLEDの光を照射してやる。

 するとあら不思議、まるでダンスでもするかのようにクルクルと回り出したのである。なぜならば、そのプレートは光の力で浮遊しているからだ。

光で物体が動く現象「光泳動」


 光によって物が動く現象を「光泳動」という。物が動くといっても、普通それで浮かび上がるのはほとんどが目に見えないエアロゾルや粒子だ。

 だから、光泳動でポリエステルのプレートを安定的に浮遊させることに成功したのは、科学者がハッと息を飲むほどに画期的な成果なのである。



光のエネルギーが気体分子の反射を加速


 このプレートは、軽く、非常に薄く作ることができるポリエステルでできている。だが光で浮遊する秘訣は、底側をコーティングしているカーボンナノチューブにある。

 空気の中の気体分子が温かい物体に衝突すると、ほんの少しだけエネルギーを吸収して、ぶつかったときよりも速く跳ね返る。

 だが表面の状態によって、気体分子に移るエネルギーの量が違う。ポリエステルのような滑らかな表面では、それほどエネルギーが移転せず、動きもあまり加速されない。ところが、幅が原子数個分しかない生毛のようなカーボンナノチューブが密集している表面は、気体分子と熱をとらえ、反射速度を一気に加速させる。

 LEDの光を照射してカーボンナノチューブを温めると、そのエネルギーが気体分子の反射を加速し、ごく小さなものではあるがまさしく突風が生じる。これがプレートを浮かび上がらせるのだ。

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credit:f Mohsen Azadi

成層圏と熱圏の間に位置す中間圏の調査に


 魔法の絨毯といっても、今のところ人間が乗るためのものではない。研究グループがこの技術を応用しようと考えているのは、やたらと研究が難しいことで悪名高い「中間圏」の調査だ。

 中間圏は地球の大気の高度50~80キロにある層で、成層圏と熱圏の間に挟まれている。

 研究が難しいのは、単純にそこに行く手段がないからだ。高度が上がれば上がるほど空気が薄くなるために、普通の飛行機や気球ではそこまで上昇できない。

 一方、人工衛星で調査できるほどには空気が薄くない。そこに人工衛星を飛ばそうとすれば、空気の摩擦で燃え上がってしまうのだ。

 しかし、そのような環境だからこそ、たとえば青と赤の雷といった不可思議な現象が発生する。またオゾン層のダメージを観察するためにも、中間圏の化学組成を調べるのは大切なことだ。

中間圏
iStock

火星探査にも応用できる可能性。NASAも興味を示す光浮遊システム


 そこで小さなセンサーを搭載した光浮遊システムを中間圏に送り込み、調査を進めるのだ。シミュレーションの結果によれば、6センチのプレートなら日光だけで、10ミリグラムの重量を運びながら中間圏を浮遊できるという。

 10ミリグラムとは雨粒の5分の1程度でしかない。しかし技術の進歩のおかげで、シリコンチップをほとんど塵のようなセンサーに搭載することが可能になっている。

 この光浮遊システムには、現在火星への有人飛行を計画しているNASAも興味を示しているようだ。

 というのも、火星の気圧は、地球の中間圏のそれと似ているのである。そのうちNASAが火星をふわふわと飛び回る奇妙な物体の映像を届けてくれることもあるかもしれない。

References:Controlled levitation of nanostructured thin films for sun-powered near-space flight | Science Advances/ written by hiroching / edited by parumo

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