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夫婦ではなくパートナー? セクシュアリティが異なる2人の偽装結婚生活とは

ダ・ヴィンチNEWS

『わたしは壁になりたい』(白野ほなみ/KADOKAWA)

 従来の「結婚」といえば、異性の夫婦が同じ苗字となり、同じ家に住むことが当たり前とされてきた。しかし昨今では、夫婦別姓を望む人が少なくない。また、あえて事実婚を選択する男女や、パートナーシップ制度が定められた地区に引っ越し、新しい環境で生活を始める同性カップルも珍しくなくなった。このように「結婚」の形は、少しずつ変化してきている。

いま、編集部注目の作家

『わたしは壁になりたい』(白野ほなみ/KADOKAWA)でも、従来考えられてきた結婚の形とは、異なる形「偽装結婚」を選択した夫婦の生活が描かれている。

■描かれるのは、セクシュアリティが異なる2人の夫婦生活

 本作の主人公は、ゆり子と岳郎太。2人はお見合いを経て結婚することになったが、お互いに恋愛感情がない。なぜなら、ゆり子は人に恋愛感情を持たない「Aセクシャル(アセクシャル・無性愛)」で、岳郎太は幼馴染の男性を想う「ゲイ」だからだ。

 ではなぜ彼らは結婚したのか。それはお互いの需要と供給が合致したためである。「人の恋愛を壁になって見守りたい」と考えるゆり子は、岳郎太と結婚すれば幼馴染との恋模様をそばで見ていられる。一方、家庭の事情で結婚しなければならない岳郎太は、ゆり子と結婚することでその問題を解決できるのだ。物語はこの設定をベースに描かれていく。

■2人の優しさで築かれていくパートナーとしての関係

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 従来の結婚観であれば、「需要と供給の合致」のみで結婚に至るなど考えにくい。いくら結婚に対する考え方が変わりつつあっても、「好きだから結婚する」という前提だけは変わっていないからだ。ただ本書を読了し感じたのは、ゆり子と岳郎太のような恋愛感情の有無など関係ない、良きパートナーという形の結婚もありなのかもしれないということである。

 特にゆりこと岳郎太がお互いのことを知るシーンで、それは感じられる。第1巻ではゆり子と岳郎太の過去と、抱えてきた苦しみがそれぞれ描かれるのだが、2人はお互いにその苦しみと向き合い寄り添おうとするのだ。現にゆり子は、岳郎太の過去と決意を聞いて自分のことのように涙し、岳郎太も、ゆり子のことをもっと知ろうと彼なりに努力を重ねていく。結婚しているとはいえ、恋愛感情がなく関係も浅い人に対して、ここまで優しくなれる人はそう多くないはずだ。物語が進むごとに2人の結婚の形が「あり」と思えるのも、2人の歩み寄ろうとする姿、寄り添おうとする気持ちがあってこそ。

■セクシュアルマイノリティを知るきっかけになる作品

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