top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

「給料の電子マネー支給」にリスク多数…不正利用で全額消えても補償ゼロ?

SmartFLASH

「日本のキャッシュレス化率は20%台と、海外に比べ著しく遅れています。また、外国人労働者のなかには、日本で銀行口座を開設するハードルが高いため、給与を現金でしか受け取れない人もいる、という問題があります」(菊地氏)

 

 この「電子マネー給与」が実現したら、我々の生活には、どのようなメリットがあるのか。菊地氏に聞いた。

 

「まず、銀行でお金を下ろす際の、余計な手数料を払うことが減ると考えられます。電子マネーの利用者は現在、現金やクレジットカードでチャージして、買い物に使うのが主流ですが、電子マネーの口座に給与が直接、振り込まれるようになれば、『チャージ』という行為をする必要がなくなります」

広告の後にも続きます

 

 また、送金の手数料も無料だ。今回、利用が議論されている電子マネーは、「資金移動業者」と呼ばれる業者が提供しているサービス。スマホでQRコードを読み取り、あるいは読み取らせる「ペイペイ」や「楽天ペイ」などが、その代表だ。その名のとおり、お金を別の口座に移動させることは認められているが、利息をつけることなどは禁じられている。

 

「家族の口座や、他人の口座へ送金する場合、銀行を使ったら手数料が発生しますが、これらの電子マネーサービスなら手数料無料で送金できます。なお、こういった送金サービスのない、Suicaやnanacoなどの電子マネーは、今回の議論では対象外です」(菊地氏)

 

 電子マネーは、使うたびにポイントがつくものも多い。給与が電子マネー振込みになったら、効率よくポイントを貯められる可能性がある。

 

「たとえば、『この電子マネーを給与の振込み先に指定したら、ポイントがつく』といったサービスが出てくる可能性はありますね。『給与振込み口座に指定したら優遇します』という、同様のサービスをおこなっている銀行もありますから。

 

 また、実際に給与の電子マネー振込みが動き始めるとなったら、最初は各業者が顧客獲得を競って、かなり大きなポイント関連のキャンペーンを仕掛けてくると思います」(菊地氏)

 

 もちろん、給与が電子マネーになることには、不安な部分もある。なにより、現金ほどの “汎用性” がない点だ。

 

「たとえばペイペイなら、買い物にはペイペイの加盟店など、限られた場所でしか使えません。送金についても、同じ電子マネー同士なら送金手数料は無料ですが、ペイペイと楽天ペイの間では送金ができないなど、使い勝手が悪い部分もあります」(菊地氏)

 

 また、銀行などを経由して、電子マネーを現金として出金することもできるが、その場合の手数料は現在、非常に高く設定されていることが多い。まったく現金を扱わずに生活するのは、実際には難しいので、結局どこかで手数料を払うことになりそうだ。

 

 そして、さらなる不安について、サイバー犯罪に詳しいジャーナリストの山田敏弘氏が指摘する。

 

「銀行口座に給料が振り込まれて、それを下ろして現金として使えば、どこで何に使ったかは第三者にはわかりません。でも電子マネー決済なら、いつ、どこで何にお金を使ったか、すべて記録に残ります。いわば、個人の行動が丸裸にされるわけです。

 

 中国では、すでに多くの人の収入が電子マネーの口座に入り、そこから住宅ローンなどをネット決済で支払うようになっています。個人の収支データが、当局によって蓄積されているわけです。日本も、中国のようになるかもしれません。私は、できるだけ使いたくありませんね」

 

●ペイペイ、7payの不正利用事件で「補償」の責任が問われるも…

 

 もうひとつ、山田氏が懸念するのは、セキュリティ上の問題だ。

 

「給与振込みに付随して、いろいろなサービスが一元的につながることになると思いますが、多くのネットワークがつながればつながるほど “情報の隙” が生まれます。

 

 はたして本当に、我々の資産に対する安全性が守られるのか。そこをしっかり議論していかないと、この制度は進めるべきではないと思います」

 

 実際に、電子マネーの不正利用にまつわる大きな事件はいくつか発生している。2018年12月、「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施していたペイペイに、「身に覚えのないクレジットカードの請求が来た」という、利用者からの問い合わせが相次いだ。

 

 2019年7月には、セブン&アイ・ホールディングスが運営する「7pay」でも、同様の不正利用が判明。サービス開始からわずか3日でサービスに制限がかけられ、9月30日にはサービスそのものが廃止される事件に発展した。そして2020年9月には、NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」で、不正に口座からお金が引き出される、という報告が相次いだ。

 

「いずれの事件も、なんらかの手段でクレジットカードの情報を知った第三者が不正利用したものとみられますが、企業側の、本人を確認するための認証作業が非常に緩かったということも明らかになっています。

 

 メールアドレスだけで簡単に登録できたり、パスワードが二重、三重の認証になっていなかったり。セキュリティがあまりにも脆弱だったのです」(山田氏)

 

 電子マネーが給与振込みまで扱うようになれば、こうした犯罪が頻発する可能性があるという。そして恐ろしいのは、その補償について業者によってばらばらで、あいまいな部分も多いということだ。

 

 銀行なら仮に破綻しても、預金保険制度で1000万円とその利息までは保護される。だが、電子マネーを扱う業界には、そうした制度が、つい最近まで整備されていなかった。

 

「ペイペイの不正利用事件の際、補償について規約に明記されていないことが問題となりました。7payのときも補償について明記されていませんでしたが、あれだけのニュースになったことで、業者は補償せざるを得なくなりました。

 

 こうした過去の反省を踏まえて、現在、大手電子マネーの多くは『〇日以内に業者と警察に報告すること』で、補償に応じています」(菊地氏)

 

 先述したように、電子マネーサービスを提供しているのは「資金移動業者」。2020年12月31日現在、金融庁に登録されている資金移動業者は、80社ある。その一覧はウェブサイトで確認できるが、誰もが知っている大企業から、聞いたこともないような業者まで並んでいる。

 

「基本的に資金移動業は免許制ですので、国の審査をクリアして登録されています。ですから、無名だから危険だということではありません。しかし、不正利用が起きた場合の補償が明記されていなかったり、補償の上限が決まっていたりする業者もあります。

 

 また、業者が破綻したときに補償をどうするかなどについても課題が残ります。実際に電子マネーでの給与受け取りが始まる前には、条件が定められると考えられますが、現状では不正利用があっても、『規約に書いていないから補償はできません』と言われたら、どうしようもありません。開始時には、補償制度をきちんと確認しましょう」(菊地氏)

 

 給料が全額消えても、補償はゼローー。そんな電子マネーは、いくら便利でも怖くて使えない!

 

(週刊FLASH 2021年2月23日号)

  • 1
  • 2

TOPICS

ランキング

ジャンル