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北島博士のおもしろ映画講座 第73回 伊参映画祭「シナリオ大賞」から生まれたラブストーリー『かくも長き道のり』

cinefil

『かくも長き道のり』

 スターの卵が帰郷したところから始まるサスペンス風味の人間ドラマ。
よくある原作を脚色した作品ではないせいか、ありきたりのストーリー展開となってないところが良い。監督は30年以上テレビで仕事をし、報道番組のプロデューサーをつとめ、本作が初の劇場劇映画となる屋良朝建。

 2017年伊参(いさま)スタジオ映画祭シナリオ大賞審査員奨励賞を受賞した脚本を基に映画化された。ちなみに、伊参スタジオ映画祭とは群馬県吾妻郡中之条町で1998年にスタートした映画祭が、2003年からシナリオを募集し、大賞受賞作品を中之条町周辺で撮影し、翌年の映画祭で初公開するというもの。もともとは小栗康平監督の「眠る男」の撮影地として旧町立第4中学校が使用されたことに端を発しており、ホームページによると、“若手映像作家に作品製作を働きかけ、その作品を発表してもらうために、中之条町周辺にて映像化を前提とした中編・短編シナリオ公募を2003年より行っており、大賞受賞作品(中編・短編、各1本)は応募者自らが映像化、翌年の映画祭にて初公開される”とのこと。

 スターの卵、彼女を尾行している怪しい男、彼女との関係がいまいち不明な謎の男、彼女の幼なじみで移動図書館で働いている若者。四人の主要人物が織りなしていく田舎町の一夏のちょっと変わった経験を、テンポよく綴ってあり、好感が持てる。
 駆け出しの女優椎名遼子が四ヶ月ぶりに帰郷したのには訳があった。ようやくドラマのレギュラーが決まったというのに、彼女を尾行するストーカーがいること、もう一つは自分を育ててくれた恋人の村木順次に会うためだ。順次は25歳も年上で、元はプロの賭博師。所属事務所からは彼と別れるように言われている。そんな彼女をそっと陰からカメラに収める怪しい男がいた。旧知の正太が軽トラックで通りかかり、彼女を墓場に連れていく。ここで彼女はかつて演劇のまねごとをしたことがあり、いわば原点のような場所だったという。順次の家はログハウス風で、いかにもアットホームな雰囲気だが、彼女を見た順次はさほど喜ばない。
 別れを告げるはずなのに、その踏ん切りがつかない遼子ときっぱりと別れるつもりの順次。二人の掛け違った思いが、ストーリー展開にひねりを加えて見る者の興味をひっぱっていく。遼子は養護施設出身で正太とは幼馴染という間柄で正太は彼女にずっと恋していたが、遼子には順次がいた。カメラを持った怪しい男は事務所が派遣したマネージャーの田代で、遼子に順次との決別を迫る。マネージャーをめぐる描写はコミカルな要素を含み、正太のおぜん立てした昔の仲間との会合で移ろいやすい人の心があらわになっていく。クライマックスのサスペンス描写はなかなかのもので、遼子を包む順次の大人の愛をしめすラストは見る者の心に余韻を残す。

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 遼子役は「黒崎くんの言いなりになんてならない」(16)に出ていた北村優衣で、本作が初主演。順次を「図書館戦争」(15)のデビット伊東、正太を宗綱弟が演じている。

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